赤の山にて 青の拒絶と白の無関心
少しして
「彼らが私の護衛をしている
「姫様が謝る事はありません!!」
「姫様?」
「そうだ!! この方は
「ヌイジュ、止めないか!! ヤート君からではなく私が頼み込んだんだ。私の頼みを受けてくれた彼は言わば私の恩人だぞ!! その恩人を侮辱するな!!」
「しかし、姫様……、このものは」
「それとも何かい? 私の交友関係は君達に管理されなければならないのかな?」
「け、決してそのような事は……」
「じゃあ、なぜ?」
「それは……」
勝手に盛り上がってる。そう言えば、あの決闘の時も勝手に盛り上がってた。黒以外の竜人は盛り上がりやすい性質なのかな? っていう変な考えが浮かぶけど本音を言えばさっさと離れたい。でも、流れ的に何も言わないで離れても面倒くさい事になるし、何か言ったら言ったで面倒くさい事になるんだよね。はぁ、とにかく面倒くさい。…………どっちがマシかで考えたら、まだ何か言っておいた方がマシな気がする。
「イリュキン、散歩を続けたいんだけど?」
「本当に、すまない。君の時間を邪魔してしまった。この埋め合わせは後日させてもらえないだろうか?」
どんな風に答えても面倒くさい事になる予感しかしない。現に周りの奴ら――
「遠慮する。今後、僕に関わってくるのは自由だけど、できれば周りをちゃんと制御できるようになってからにしてほしい」
「貴様!! 「黙っててくれ」…………申し訳ございません」
「本当に、今日はすまない。後日、正式な謝罪をさせてほしい」
「うん、じゃあね。行こうか」
「ブオ」
「待て!!」
はぁ、このままお互い黙ってたら別れられるのに、なんで声を掛けてくるかな。無視したい。面倒くさいから、すごく無視したい。散歩したいだけなのに、なんでこんな感じになるんだろ? ……現実逃避しててもしょうがないか。
「何?」
「俺達、いや少なくとも俺は貴様を認めない。絶対にだ!!!!」
「ヌイジュ!! やめないか!! 今すぐヤート君に「不思議な事を言うね」ヤート君?」
「別にお前らに認められなくても何一つ不自由ないのに、なんでお前らに認められないといけないの?」
「なんだと!!」
「わざわざ呼び止めて言いたかった事は、そんなどうでも良い事? それとも、まだ他にある?」
「おのれ!!」
「ないっぽいね。それじゃあ、散歩を続けさせてもらう」
「待て!!」
一回振り向いたから、もう無視する。仮に
あれから新たな面倒事が起きる事もなく、その辺にある果物を食べながら散歩をしている。……平和だね~って、思わず声に出したくなるぐらい、
「さっきは、ごめん」
「ブ?」
「僕の魔法に巻き込んだり、面倒くさい奴らに関わらせたりね」
「ブオ」
「気にするなって言われても……」
「ブォォ」
「そうだよ。ゆっくり散歩したいだけなのに、なんで面倒がついてくるのかな?」
「ブオ、ブオ」
「まあね。どんな時も、お前の言うようにいつも通りやるだけ。とは言っても、わざわざ面倒に会いたくない」
「…………ブオ」
「それはしょうがないって、なんで?」
「ブブォ」
「あー、そうだね。面倒の方から寄って来たら、避けようがないか……」
「ブオ」
「はぁ、お前に会えたのは嬉しいけど、それ以外じゃ交流会に来て面倒ばっかりだよ」
「……ブオ」
「わかってる。現実逃避は良くないよね。…………それで、なんか用?
僕が呼び掛けると苦々しい顔をしたヌイジュが少し離れた茂みから出てきて、さらに別々の方からも一人ずつ僕と
「
「なんか用のって聞いてるんだけど?
「貴様っ!!」
「はぁ、行こうか」
「ブ」
赤と青の
「
「ヌイジュ!! 他色に向かって何をしている!!」
「黙れ!! 俺はこいつを認めない!!」
「だからと言って、魔法はやり過ぎだろう!! 俺達はお前が忠告に行くというから共に来たんだ!!」
「チッ!!」
「……忠告ね。何の?」
「今すぐ交流会から去れ!! 姫様に関わるな!!」
「無理だね。当たり前だけど交流会に関する決定権は僕にはないから。例え僕が心底帰りたいと思っても、僕を帰らせるかどうかを決めるのは黒の顔役であるラカムタさんだ。交流会では顔役が決定権を持つ。それはどこも同じはずだけど?」
「ぐっ」
「その反応だと、自分が的外れな事を言ってる自覚はあるわけだ。だったら正式に青の顔役からラカムタさんに僕の事を伝えれば良い。そしたらラカムタさんも考えると思うよ」
「……その目、その口調だ」
「何?」
「貴様の目、貴様の口調、姫様へのあの態度全てが気に入らん。
「はぁ……、面倒くさいな。勝手に一人で盛り上がってるところで悪いけど、そもそも別に僕はお前らを見下してない。なぜなら僕はお前らに一切興味がないから」
「なっ!!」
「聞こえなかった? 僕はお前らに、ほんの少しも興味がないから見下しようがないよ」
「…………そうか」
僕がはっきりと自分の気持ちを伝えると、前方にいるヌイジュがうつむいてヒドく冷めた声でつぶやいた。すると、その声を聞いた他の
「これ以上は不味い。ヌイジュ、落ち着け!!」
「…………」
「クソッ、仕方がないか。おい、合わせろ。ヌイジュを縛るぞ」
「「「「
様子が変わったヌイジュを他の
「ヌイジュ、悪く思うなよ。これ以上は見過ごせん」
「…………お……の…………な」
「ヌイジュ?」
「……俺…………るな!」
「ヌイジュ!!」
「俺の邪魔するな!!!!!!」
拘束具と化して完全に止まっていた水の膜が、ヌイジュがつぶやく度に波打ち、ヌイジュが叫ぶと同時に弾けて
「貴様は、貴様だけはこの場で殺す!!!!!!」
今日だけで何回思ったんだろう。本当に面倒くさい……。でも、まず何よりも先にする事がある。
「ごめん」
「ブ?」
「また、完全に巻き込んだ」
「ブオ」
気にするな……か。本当に
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◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想・評価・レビューなどもお待ちしています。
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