赤の村にて 初戦闘とかみ合わない二人 後編

「ラアアアーーー!!」


 爆散花エクスプロージョンフラワーは成長し花が咲くまでに魔力を少しずつ溜めていき種ができて枯れる時に、自身を溜めた魔力を使い小さく爆発させて種を周りに飛ばすっていう変わった植物だ。でも今回は僕が強く爆発してほしいとお願いしたから大爆発になったのを喰らったにも関わらず、血走った目で手足を振り回しながら飛びかかってくるクトーの攻撃を僕は避けた。


「てめえ、避けんじゃねぇ!!」

「普通、避けれる攻撃は避けるよ」

「避けるな!! 臆病者が!!」

「それはお前の考えだよ。自分のやりやすい戦い方をして何が悪いの?」

「ふざけんな!! 臆病者は臆病者だ!!」

「じゃあ、そう思ってれば良いよ。僕はやり方を変えるつもりはないから」

「ガアアアーーー!!」


 クトーが振り下ろしてくる右腕を僕は余裕を持って右に避ける。すぐさまクトーは避けた僕を追うように右腕を振り回してきたから後ろに飛び退いた。三ルーメ(前世いう三メートル)くらい離れてクトーを見ると、かなりイラついてる事がわかった。


「てめえ、やる気あんのか!? 逃げてんじゃねえ!!」

「やる気? そんなものあるわけがない」

「なんだと!?」

「僕は、お前が戦えっていうのを断ってる。その時点で僕にやる気なんてないって事がわからない?」

竜人族りゅうじんぞくにとって決闘は名誉だ!! やる気が出ねえはずがねえ!!」

「…………はあ、欠色けっしょくの僕を普通の竜人族りゅうじんぞくといっしょにしないでよ」

「じゃあ、なんで受けた!! やる気があるから受けたんだろうが!!」

「僕が決闘を受けたのは断っても絶対にお前が何度しつこく来るだろうなって、さっさと決着をつけて落ち着きたいなって考えたからだよ」

「そんな理由で……?」

「そうでもないと僕は戦いたいとも思わないよ。まあ、魔法の確認はできたから意味があったと言えばあったかな」

「こ……の……野郎!! 決闘をバカにすんじゃねえ!!」

「…………不思議な事を言うね。一番決闘をバカにしてるのおまえなのに」

「どういう意味だ!!」

「そのままの意味だけど?」

「ああ!?」


 僕の返答を聞いても、ただイラつくだけだった。


「……もしかして自覚ないの?」

「だから!! どういう……「お前はさっき「竜人族りゅうじんぞくにとって決闘は名誉な事だ」って言ったよね?」」

「それが、どうした!!」

「なんで?」

「自分の強さを見せれるからに決まってんだろうが!!!」

「決闘は強さを見せる場という事は挑戦する方も挑戦される方も、当然見せるだけの強さがあるって事だよね?」

「当たり前だ!!」

「じゃあ聞くけど、なんでお前は僕に決闘を挑んできたの?」

「は?」

「決闘は一定以上の強さを持つもの同士が、お互いの強さを見せる場なんだよね? 僕は欠色けっしょくで肉体的にも魔力的にも弱い。これは横槍入れてきた青のイリュキンも知ってたし、……というかこの場にいる全員知ってるはずだ。じゃあなんでお前は、一定以上の強さを持つもの同士がやるべき決闘を弱い僕にさせようとしたの?」


 僕が質問しながら一歩近づくとクトーが目を見開いた。


「…………あっ」

「肉体的にも魔力的にも弱い僕を決闘を受けさせる。僕はお前に何かした覚えは無いけど、…………そんなにお前は僕の事を殺したかったの?」


 僕が質問しながらもう一歩近づたらクトーはビクッと身体を震わせた。


「ちがっ、俺は……!!」

「違うの? じゃあ、さっきから聞いてるけど何で?」


 僕が質問しながら、また一歩近づくと今度はクトーが後ろに一歩下がった。


「そ、それは…………」

「それは何? もし、僕がお前の初めの一撃に対応できなかったら僕は良くて瀕死の重傷で悪かったら……当然死んでたはずだ。とても殺意がなかったとは思えないけど? 弱い僕に決闘を受けさせて殺そうとする。やっぱり僕はお前が一番決闘をバカにしてると思うけど?」


 僕が質問しながら一歩一歩近づいていくたびに、クトーの様子がどんどんおかしくなっていく。


「ねえ、質問には答えてくれない?」

「う……あ……」

「聞いてる?」

「うあああーーー!!」


 自分の言動を自覚してない。人の質問には答えない。勝手にうろたえる。挙げ句の果てに、また飛びかかってくる。何がしたいんだろ? わけがわからなくてこれ以上付き合いたくないから、そろそろ終わらせよう。飛びかかって来るクトーとの距離が残り一ルーメくらいまで待って魔法を発動させた


緑盛魔法グリーンカーペット超育成ハイグロウ痺れ根の檻パラライズドルートケージ

「しまっ!!」


 クトーの周りから樹の根が生えて伸びていき、クトーの頭上を頂点としたテント型の檻になった。


「勝手にうろたえて不用意に近づくからだよ。罠にかけるのが僕の手段ってわかってるのに、なんで向かってきたの?」

「この程度で俺が止めれるわけないだろうが!!」


 クトーは脱出しようと痺れ根の檻パラライズドルートケージを全力で殴った。……本当に意味がわからない。どうして何も考えずに行動するんだろ?


 痺れ根の檻パラライズドルートケージがクトーの打撃を受けて一部が砕け散ると同時にクトーの動きが止まった。


「か、な……にが…………?」

「僕が無駄な行動はしないって理解したんじゃなかったの?」

「お…………れ……に」

「お前に何をしたかって? そんなのお前が感じてる通りに身体を麻痺させただけ。どうせ次にどうやってって思うだろうから説明するよ」

「グッ」

「お前が砕いた植物の名前は痺れ根っていう奴で、その名の通り樹液に強力な麻痺成分がある。特に根の部分に多く含まれていて、しかも樹液は空気に触れると麻痺成分はそのままに気化する性質を持つって言えば分かるよね?」

「うぅ」

「そうそう、青のイリュキン」

「…………何かな?」


 僕が確認のためにイリュキンに話しかけたけど、突然だったせいかイリュキンが返事をするまでに少し間があった。


「一応、聞いておこうと思ってね。今から意識はあるけど動けないクトーを攻撃にするわけだけど、一度仕切り直したから何も問題ないよね?」

「……ああ、もう横槍は入れない」

「そう。じゃあ遠慮なく。緑盛魔法グリーンカーペット超育成ハイグロウ多重射種草ガトリングシードショット


 僕が魔法を発動させると、また射種草シードショットが生えてくる。でも今度はクトーを囲むように、広場のあっちこっちから無数に生えてきた。それを見たクトーや周りの竜人達は驚きの表情を浮かべる中でイリュキンが動揺しながら話しかけてくる。


「なぜ……? 君は……欠色けっしょくは魔力が少ないから、こんな大規模な事はできないはずなのに。その事は君には当てはまらないのか?」

「いや、当てはまってるよ。普通にやると、二本が限界。でも、いろいろ工夫すれば、これくらいはできるようになる」

「説明は……」

「僕が正直に手の内明かす奴だと思う?」

「…………すまない。続けてくれ」


 さて、イリュキンも黙った事だし、決着といきますか。僕は射種草シードショットの囲いの外に出て近くにある奴に触ると、全ての射種草シードショットがクトーの方に射出口を向いた。そしてポンッと軽く叩いたら一斉に種がクトーに発射された。


 ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドン……。




 数分経って全ての射種草シードショットが種を射ち終わりポスンって音を立てて枯れた。そしてクトーがいた辺りの煙が晴れると、そこには服がボロボロになり身体中を赤黒い痣に覆われたクトーがボコボコになった地面に倒れてて微妙に動いていた。まだ足りなかったのかって驚いたけど、よく見たらクトーがピクピク痙攣しているだけで気絶してるのがわかった。


「やっと決める事ができたけど……時間がかかったな」




 その後、周りがクトーの治療や広場の後片付けに追われている中で僕は自分の席に戻り空を見上げていた。そして、この時に頭の中に浮かんでいた考えが無意識に口から出た。


「二度と竜人族りゅうじんぞくとは決闘しない。頑丈で厄介だから割に合わない」




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◎後書き

最後まで読んでいただきありがとうございます。


注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。


感想・評価・レビューなどもお待ちしています。

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