生まれてから 趣味と不意の遭遇 後編
僕の目の前には傷だらけで衰弱している魔獣の
「……狩りにあったわけじゃなさそうだね。皮を傷めるやり方はしないはずだし角が途中で折れてる。縄張り争いに負けたのかな?」
傷だらけで弱っているとはいえ
「ガアァ!!」
「意識はあると……、でも、かなり弱ってる。……どうしようかな」
「ガ!!」
「まあ、良いか」
かつて
それなのに白いものは近づいてきたかとを思えば自分の身体を触り始め、どうやらケガの具合を確かめているようだった。普段なら自分に近づいてくるものは当然警戒する。まして身体に触れられたら排除するのだが、
「うーん、……骨折は無さそうで切り傷がほとんどか。特にひどいのは、右前脚の肩口と腰だね。ほんとこの大ケガで、よくここまで来れたね」
僕は
「手持ちの薬草じゃ足りないから、まずはできる範囲でケガを手当するのが先かな。無くなったら無くなったで、また採ってくれば良いか」
僕は大まかな方針を決めたら
「これから、この薬草をおまえの傷に付けるからね。しみると思うけど我慢してね」
自分より強い相手に背を向けている白いものを見て今日何度目になるかわからない混乱を受けたが、その直後に白いものの行動を気にしてもしょうがないという一種の諦めの境地に達する魔獣らしからぬ思考が働いて落ち着いた。それからは最低限の警戒をしつつもボンヤリと白いものの作業を眺めていた。
「準備ができたし始めますか……って、最近独り言が増えてきたな気を付けよう」
僕は自分の微妙な変化に気がついたけど頭を切り替えて近くにあった手頃な石を使って薬草をすり潰し
「ガッ……」
「ああ、しみるだろうけど我慢して」
まずは大きな傷口に取り掛かるため肩の傷口の血を生活魔法の
肩に塗り終わった後、今度は上着の裾を破ってそれを包帯替わりなるように細く破り肩の傷に巻いていった。次に腰の傷口にもたっぷりと塗ると上着の残りで巻こうとしたものの、明らかに長さも面積も足りない。そこで近くの樹から蔓を取ってきて傷口に当てた布がズレないように縛った。そうして大きな傷口への手当が終わると手元の薬草がなくなった。
「ちょっと薬草取ってくるから、これ食べてて」
「ガ?」
白いものは別の腰の袋から出した果物を自分の前に置いてからその場を離れた。その様子を見て、やっぱり変な奴だと思いながら目の前に置かれた果物を見て迷っていたが、まあ、あの白いものが出したものなら大丈夫だろうとまた野生らしくない考えを浮かべながら食べる。
全ての傷の手当が終わり休憩がてら
そんな事を思いながら、ふと
その後もたまに果物を採りに行ったけど、二刻(前世でいう二時間)くらいまったりしてたら
「すごいね。あれだけの大ケガだったのに、もうそこまで動けるようになるんだ。さすが野生だ」
「ガァ……」
「それじゃ、さよならだね」
「ガア」
「そっか、じゃあね。あと気をつけて」
「ガア!!」
ズンズンと王者の風格を漂わせながら
その後村に帰ると上着が無くなって身体の所々に血が着いているから、お前は何をしていたと大騒ぎになってしまった。はあ、しばらく村の外に散歩に行けないかもだけど、今は楽しみが他にも色々あるから良いか。
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◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想・評価・レビューなどもお待ちしています。
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