生まれてから 現状と楽しみ
この世界に転生したわけだけど乳児期は恥ずかしかったな。僕っていう意識ははっきりしてても身体は乳児のままだから父さんや母さんにおんぶに抱っこの状態で、前世の闘病生活の中頃から看護師の人達にお風呂を入れてもらったりトイレの世話もしてもらってたのに、父さんと母さんに世話してもらうのはなんか恥ずかしかった。
……うん、思い出して身悶えてもしょうがないから現状確認をしよう。
これまでにいろんな事がわかった。まずは僕の名前は「ヤーウェルト」で、みんなからはヤートって呼ばれてる。あと僕らは
もう少し
次に僕の体質についてだ。両親や周りの人達の鱗は黒色だけど僕は白色。これは「
要するに僕は同年代と比べると、だいたい一回りくらい身体が小さくて体力もない。あと母乳を飲んでた時によく吐いてたから内臓も強くなくて、一度肉食を試してみたけど胃が受け付けなかった。この感じだと
最後に魔力について。この世界には魔力があって、ある時に両親を見てたら何かつぶやいて指先から光を出した。それに驚いて声をあげると、僕の目の前で光の球を出して身体の周りでグルグル動かしたりしてくれたんだ。さすが異世界、魔法があるんだ!! って感動したよ。それで僕の魔力はといえば同年代の三割くらいで、あるにはあるけど強い魔法を使うのは難しいみたい。
まとめると僕「ヤーウェルト」は、「
どうやら両親や周りから見たら僕の現状はかなり悲惨な感じらしいけど、前世で重病人だった僕からすれば今の僕は間違いなく幸せだ。問題なく呼吸できて会話できて歩ける。……最高だね!!!!!!
そんな僕が今何をしているかと言うと本を読んでいる。前世では病状が軽度の時は読めていたけど、病状がひどくなると体力がなくなりページをめくったり文字を目で追う事もできなくなって諦めた。そんな前世で諦めた事の一つである読書ができると気づいてからは、書庫があるヘカテ爺さんの家で毎日のように読んでいる。
この世界の文字は地球でいうローマ字の筆記体やアラビア文字のようなミミズがはったような感じで初めの内は本当にミミズがはったようにしか見えなかったけど、一文字一文字教えてもらったら割と簡単に文章が読めるようになった。やっぱり子供の頃の方が頭が柔らかいからすぐに覚えられるっていうのは本当かもしれないね。
勉強が嫌いっていう人は多いと思うけど、前世でまともに学校にも行けなかった僕からすると、何かを勉強して新しい事を知れるのは本当に楽しいよ。こっちに生まれて前世で出来なかった色んな事ができて楽しいけど、一番嬉しくて楽しい事が別にある。それは…………。
「おーい、ヤートいるか? って、やっぱりここにいたな」
「兄さん、どうしたの?」
「もうすぐ日が暮れるから迎えに来た」
「そうなんだ。でも、いくら身体が弱くても一人でも帰れるよ」
「ヤートは、本を読んでると時間を忘れるでしょ」
「姉さんまでひどい……」
「そうやってすねてないで帰るわよ」
「……うん」
僕は読んでいた本を片付けヘカテ爺さんにあいさつをしてから兄さんと姉さんといっしょに家路についた。
「ただいま!!」
「ガル、お帰りなさい。今日も楽しかった?」
「楽しかったぜ!!」
「そう、夕食の時に聞かせてね。マイネもお帰りなさい」
「母さん、ただいま」
「あなたも、今日あった事を聞かせてね」
「わかったわ」
「ヤート、お帰りなさい」
「ただいま」
「今日も、本を読んでたのかしら?」
「そうだよ」
「じゃあ、読んだ本の内容を教えてね」
「うん」
「ただいま」を言って家に入る。そして夕食の時に家族みんなで今日あった事を話す。すごく簡単で当たり前の事だけど、これが一番嬉しくて楽しい。
はっきり言って、今の僕は肉体的にも魔力的にも恵まれてないけど、普通に呼吸ができて普通に動けて前世で諦めていた事もできる。そして何より家族団らんができる。こっちに生まれてからは本当に毎日楽しい事だらけだよ。
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◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想・評価・レビューなどもお待ちしています。
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