1.冬子の生い立ち

 冬子は幼稚園の時からバレエを習っていた。動機としては、たまたまテレビで見かけ、その姿に一目ぼれしたという単純な理由だった。


 通っていたバレエの教室はそれなりに厳しいところで、全国区でも戦えるレベルのレッスンが行われていた。世界大会出場の経験者であるコーチが在籍していて、毎週鬼のようなレッスン課題を出してきた。

 しかし冬子は文句の一つも言わず、着実に成長を重ねていった。


 小学生に上がる頃、六歳以下を対象にしたバレエの大会に出場することになった。前述したコーチ直々の使命で、冬子は相当な喜びと緊張を覚えていた。

 本番当日の演技は彼女自身も驚くほど上手く行き見事優勝を飾った。その時にコーチの知り合い…現役プロのバレリーナである夏美に出会った。



「な、夏美先生! よろしくお願いします!」

まだあどけない少女の挨拶に、夏美は頷いて言った。

「プロを目指すということは、今までしてきた練習の何倍も大変な思いをするかもしれない。でもあなたなら大丈夫って私は思ったよ。一緒に頑張ろう!」

 冬子は大会優勝の実績を見込まれ、夏美の開いている個人レッスンのバレエ教室へ移る事になったのだった。


 以前にも増した猛練習を重ねていき、ついに冬子は全国大会へ出場するレベルへと成長していった。

 小学生以下を対象にしたジュニア大会でも優勝を飾った冬子は、プロスカウトを受けることになった。また当時は十歳という異例の若さで、最年少という記録も同時に達成することになった。

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