Next.深い霧の奥で
「また、失敗だ」
小さな部屋に、響く声は何処までも絶望していた。
「火、水。風に土。複合魔力も試した。魔法陣も試した」
その声は冷たく、余りにも悲しく。
「あの子から取った光の魔力でさえ………無理なのか………?」
視界が滲む。
「………どれだけ試せばいい?一体どれだけ………っ!」
机の上にある物を全て薙ぎ払う。
少し埃のかぶったフラスコ。くすんだ色の本。インクの入った小瓶に羽ペン。
そして、山のように積まれた紙に書かれた手描きの魔法陣。
どれもが足りなかった。
どれもが求めていた物に及ばなかった。
─────どれもが、自分を救えなかった。
「っ…………あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
叫ぶ。
「何で私なんだ!!!!何で私をこんな体に産んだんだ!!!!何でっ!!!なんでっ!!!!」
声を荒げ、叫び、手当り次第に物を投げつける。
その姿は余りにも幼く、何処までも寂しさに溢れ、悲しい程に弱々しかった。
地面を力無く叩く。
「もういやだよ………だれか………」
涙が一つ、また一つと零れ落ちた。
「わたしを………たすけてよ………」
深い霧に包まれた森の奥にある、小さな家の中。
魔女は一人、泣いていた。
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