第1章 村を出た青年は騎士を目指した。
ep.1 王都フォレンド
スライムとの戦闘を終えて数時間後、エクスは馬車の中で静かに待っていた。
(そろそろ門番の人と話終わったかな?)
マルドアから『門番に報告して来るからちっと待っててくれ』と言われてから30分程経過している。
エクスが馬車からちらりと顔を出して確認すると、ちょうど話が終わった所だったのか楽しそうな雰囲気を漂わせながら戻ってきた。
「おう、待たせたな!それじゃあ行くか!」
そう言いながらマルドアはエクスに札を渡す。
「これは?」
受け取った札を眺める。青銅で出来た薄い板には翼を広げた鳥の彫刻が施されていた。
「あん?あー。入国許可証って奴だな、ほれ」
マルドアは胸元から銀色の板を取り出して見せる。
「これが商人の許可証。つってもただの商人のじゃなくて、一流のな」
自慢げに笑いながら説明を続けた。
「んでもって、それが一般の許可証だ。一応魔法も掛かってるから無くすなよ?無くしたら罰金取られちまうからな」
「へぇ……魔法掛かってるのかぁ……」
(流石王都だなぁ、やっぱり魔法が使える人が居るんだ…!)
エクスが感動していると、馬車が進み出す。
「そしてここが………」
エクスの言葉を引き継ぐようにマルドアは言う。
「王都フォレンド、だぜ。あんちゃん」
馬車から顔を出してエクスは外を見る。
至る所から聞こえる談笑。馬車がタイルを叩いて進む音。何処からか聴こえてくる陽気な音楽、喧騒。
どれもエクス居た村では聞こえることのない音に圧倒される。
更に人混みを見れば、耳の長い【エルフ】、動物の尻尾、耳を持つ【獣人】、使い魔として共に歩く子竜や、先程戦ったものと色は違うがスライムなど、様々な者が歩いていた。
「沢山人が居る……!」
エクスが思わず零すと、マルドアが吹き出す。
「そりゃあ、居るだろ。今日は尚更な」
「なんで今笑ったんですか」
「まぁ、気にすんなや。それより、今日は王国建立祭なんだ。あんちゃんも色んな店行くんだろ?」
「……まぁ、宿も取りたいですからね」
するとマルドアは、だったらと紙を渡す。
「ここに書いてある場所に俺の店があるから来るといい。さっきのスライムの核、買い取ってやるからよ」
そう言うと馬車を止めた。
「んじゃ、俺は店に戻るからあんちゃんも宿を取るといい」
エクスは馬車を降り、感謝を伝える。
「ありがとうマルドアさん。宿取ったら、お店行くよ!」
「おー、来てくれたらサービスしてやるからよ!じゃあな!」
そう言って馬車を走らせ、マルドアは去っていった。
「ふう……まずは宿を探そうかな。自分の足でいろんな所見てみたいし」
そう言うとエクスも宿を探しに人混みへと消えていった。
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