第2話「ホワイトアルバム2」大いに語る

ホワイトアルバム2について自分の思うところを語りたいと思います。


~ホワイトアルバム2における「幸せ」の問題~

全年齢版のサブタイトルが「幸せの向こう側」であることを知って、本作における幸せという問題について考えていました。私は本作は「雪菜とかずさのどちらを幸せにするか?」という単純な二択問題ではないと感じるんですよね。というか、かずさの幸せを優先するならむしろ雪菜ルートのほうがいい。

雪菜ルートは全員がそれぞれ幸福になる話だけれど、かずさルートは全員がそれぞれ不幸になる話だなと思いました。かずさルートのかずさって春希とピアノ以外全部失うわけです。雪菜ルートではかつての友人とも家族とも良い関係を築けるし、何より彼女自身が人として成長できた感じがします。

だからこのゲームは「雪菜を幸せにするか/かずさを幸せにするか」という二択ではなく「全員を幸せにするか/全員を不幸にするか」という二択なんですよね。なぜそんな二択が成立するかといえば、私たちの人生には幸せになることより大事なこともあるからです。そしてかずさルートではそれが手に入る。

なので、雪菜とかずさのどちらを選択するのかという問題は、そのまま「みんなが幸せになることよりも大事なものはありますか」という人生上の重大質問に回答することを意味していると思います。


~北原春希について~

本作で最も暗い闇を抱えているのは春希だと思いました。物語開始時点で母親との関係が壊れきってしまっている彼は、まるで代償行為のように「正義の味方」を演じ続ける一方で、心の深いところでは誰よりも女の子からの愛情に飢えている。必要とされたい。捨てられたくない。

その意味でこのゲームは春希が救われるまでの物語だと私は思いました。ただし雪菜ルートとかずさルートでは救われかたが全く違います。雪菜ルートでは雪菜のおかげで彼は実母と向き合えるわけですが、かずさルートでは、かずさが彼の「母親」になっちゃうわけです。言うなれば、北原春希という「穴の空いたコップ」のどうしようもない渇きに対して、穴を見つけてそれを直してやることができるのは小木曾雪菜、無限の水を注ぐことができるのは冬馬かずさという構図なんですよね。


~雪菜とかずさについて~

この2人はどこまでも春希にとって対照的だと思いました。いっけん男性的に見えるかずさのほうが遥かに弱い子であり、逆に雪菜のほうがずっと強い人間であるというのがポイント。その弱さで春希を間違わせることができるのが冬馬かずさで、強く正せるのが小木曾雪菜で。

まあ、私自身は「雪菜ルートは理想、かずさルートは現実」だと思っていて。私たちは欲するものの全てを手に入れることなんてできないわけで、どこかで大切な何かを切り捨てて悪役にならなければならないのが、人生だと思います。だから雪菜ルートは「美しい夢」なんですよね。

その「美しい夢」を達成してしまう強さが小木曽雪菜にはあり、あれもこれも正しく救済することができてしまう一方で、冬馬かずさにはそうした強さが徹底的に欠けているから、結局は春希に対してあれかこれかと決断を迫るしかない。現実を突きつける、みたいなのがかずさルートで。

……実際いちばん丸く収まるのは雪菜とかずさが春希そっちのけで百合になることだと思いますねw(それこそありえない夢なんですけどw)


~高校編は誰がいちばん悪いのか~

私はこの3人で言えば冬馬かずさにいちばん感情移入できるので、冬馬かずさに対してだけ様々なタラレバ話を考えてしまいます。雪菜は何の落ち度もないし春希のことは責めたくないというか。そういう意味では冬馬かずさがいちばん悪いな~と考えていますw


~大学編:和泉千晶について~

和泉千晶は小木曽雪菜以上に尊敬できるキャラでした。欲するものをあれもこれも全て手に入れられる強さがある、という点で言えば小木曽雪菜に似ているかもしれませんが、雪菜の「偽善を信じる強さ」に対して千晶は言わば「偽悪を演じる強さ」なんだと思いました。


~大学編:杉浦小春について~

実質UBWですよね小春ルート。


~大学編:風岡麻理について~

冬馬かずさの次に感情移入できるキャラでした。というか私は麻理ルートの割とダメな春希が好きなんですよね。やっぱり春希はかずさに似ている人の前では弱さを見せてくれるんだな~みたいな感じで、勝手に嬉しくなってしまったところがありますね。どこ目線だ。

あと……雨宮佐和子がすごく良いですよね。結局かずさには麻理にとって佐和子に当たる味方がいませんでした(依緒も朋も武也もあくまで雪菜の味方として存在しているわけで)。佐和子は麻理の側にいて、麻理のために春希の背中を押してくれる。すごく良かった。

麻理ルートの割とダメな春希が好き、って、問題発言かもしれない。


~なぜ雪菜を通過しないと社会人編に行けないのか~

それは本作が「春希が救われる物語」だからだと思います。大学編の3人それぞれに救われた春希はもうかずさに救われなくていい。雪菜が春希を救うのはあくまで社会人編まで持ち越されるので、そこで改めて冬馬かずさとの二択になるのだと考えていますね。

あと、冬馬は「雪菜以外と結ばれている春希」が相手なら再び好きになったりせずに済むのかもしれませんね。雪菜が冬馬ありきで春希を好きになったのと同じくらいには、冬馬も雪菜ありきで春希を嫌いになれないんだなと思うんですよね。

冬馬かずさは五年間も北原春希のことを引きずり続けていたけれど、それはあくまで脳内の「高校時代の春希」という虚像であって、もし雪菜以外の誰かと結ばれている北原春希と偶然再会しても、実像と虚像が重ならずに済むのではないかと思いますね。


~依緒と武也、あと朋について~

外野うっぜby和泉千晶

……まあ、依緒と武也は、自分たちにできない「こじらせた2人が結ばれる」という夢を雪菜と春希に投影しているのだろうと思いますね。だから雪菜と春希が完全に結ばれれば自分たちも結ばれるし、逆に雪菜と春希が引き裂かれれば武也も新しい恋を見つける。

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