第161話:ゼウスブレイドのダンジョン攻略
ダンジョン攻略への準備を終えたゼウスブレイドは宿屋を後にすると道具屋に立ち寄ることなくダンジョンへと向かった。
ジーエフで手に入れることができる道具、特に影縫いは冒険者の間でも評判の良い道具なので購入するかと思っていたのだが見向きもしない。
このことで愕然とするのはポポイなのだが、今は誰も気づいていなかった。
レインズは上層の攻略をリッカへ任せることにした。
自分達の力を温存する意味合いも含まれているが、一番の理由は面倒臭いからだ。
実力的にもリッカなら問題はないのだが、それでも疲労は溜まってしまうのでそこをたった一人で攻略させるのはパーティとしてどうなのかと周囲からは言われている。
「おい、さっさと倒せ!」
「は、はい!」
それでもレインズが方針を変えることは一切なかった。
ジーエフだけではなく、ほとんどのダンジョンが上層に弱いモンスターを配置しており、下層へ向かうにつれて強くなっていく。
レア度2や3のモンスターに自分達が動く理由がないと思っている。
「はあっ!」
「グルアッ!」
三階層のボスモンスターであるハイライガーを大剣で両断すると白い灰となりドロップアイテムが地面に転がった。
一度大きく深呼吸をして息を整えたリッカがアイテムを拾おうとすると――
「そんな金にならないアイテムなんて置いていけ!」
「えっ! で、でも……」
「荷物になるだけだろうが! さっさと行くぞ!」
「は、はい!」
もったいなさそうにドロップアイテムを見つめていたリッカだったがレインズに逆らうことができずにそのまま四階層へと下りていく。
再び最前線に立ったリッカは大剣を振り抜き進んで行くのだった。
※※※※
ゼウスブレイドの戦い方を見ていた廻は怒り心頭になっていた。
「どうして女の子一人に戦わせているんですか、あの人達は!」
「まあ、レインズならそうするだろうな」
「見ていて気持ちが悪くなるのにゃー」
ニャルバンも廻と同じ想いであり、アルバスは納得顔を浮かべている。
「もしかして、アルバスさんもあの女の子と似たような扱いを受けていたんですか?」
「あいつのスキルは俺と似てて制限があるからな。それが原因だと俺は知っていたから気にならなかったが、あの冒険者はどうだろうな」
「まさか、パーティなんですから知らないなんてことがあるんですか?」
「レインズならあり得る。自分大事な秘密主義だからな」
「……そんな奴、誰がどう見ても最悪じゃないですか! なんでアルバスさんはパーティを組んでたんですか! それに、他の人もなんで組めるんですか!」
憤慨している廻に対してアルバスは苦笑しながら教えてくれた。
「レインズのスキルがそれだけ強力だってことだ」
「……強ければ何をしても良いってことですか?」
「俺はそう思わないが、あいつはそうなんだろう。冒険者の中には強い奴が正義みたいに考える奴も多いんだよ」
冒険者はダンジョンに潜りドロップアイテムを換金して生計を立てている。当然ながら危険が伴うものであり、強い者が生き残っていく。
ならば強い者が正義と考えるのも頷けるのだが、それでも廻はそれだけが全てだとは思いたくはなかった。
「アルバスさんだって、そうは思わないんでしょう?」
「まあな。だが、俺みたいな考えの奴は少数派だ。それこそジーエフに通ってくれている冒険者くらいじゃないか?」
「確かに、ヤダンさんを含めて皆さんいい人ですよね」
「あいつはいい奴か?」
「いい人ですよ! ……たぶん」
断言できないのは冗談だったのだが、アルバスが納得顔を浮かべてしまい否定もできずそのまま話を進めることにした。
「でも、そうなったらやっぱりランドンまで行っちゃうんじゃないですか? 女の子がそこまで一人で行けるとは思えないんですけど」
「レア度3の主力とぶつかる時にはライラ達も戦うだろうが、レインズはギリギリまで出ないだろうな」
「だったら――」
「だが、アークルとの戦いは熾烈を極めるだろう。そうなればレインズが出るしかない。そうなったらスキルを使うことになるだろう」
そう口にしているアルバスだったが、その表情はずっとモニターを見つめておりリッカから離れることはない。
「……何か心配事ですか?」
「心配事というか、疑問だな。レインズが実績のない冒険者をパーティに加えていることがちょっとなぁ」
「ジーンさんがエルーカさんを弟子にしたみたいに実力を認められたとか?」
「あいつがか? ……考えられねえなぁ」
アルバスの頭からはその疑問が消えることはない。
そんな中でゼウスブレイドは七階層まで進んでおり早くもボスモンスターとの戦いを迎えている。
そして、今回もリッカだけが前に立ちボスモンスター――ゴブゴブと対峙していた。
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