第154話:ランドン討伐のお祝い④
「私がどうかしましたか?」
「あっ! リリーナさん!」
料理を乗せたお皿を持って現れたのはリリーナとボッヘルだった。
「ゼウスブレイドとかいう不届きものが、リリーナさんが固定してくれた看板を破壊するかもしれないんですよ!」
「あら、そうなのですか?」
「なんだとう! リリーナがわざわざダンジョンに潜って固定した看板を……メグルちゃん、どうにかならんのか!」
何故か無関係なボッヘルが怒り心頭となり、その隣ではリリーナが苦笑している。
「別に壊されても、また固定しにいけばいいだけの話ですよ」
「だ、だがなぁ……」
気にするなと声を掛けたリリーナだったが、それでもボッヘルはとても残念そうにしている。
だが、アルバスとジギルの意見はそんな二人とは異なっていた。
「看板なら大丈夫だろう」
「そうね。ゼウスブレイドの奴らが、双剣のリリーナの固定魔法を破壊できるとは思えないもんね」
「「「……えっ?」」」
廻もジレラ夫妻も、二人の意見に驚きの声を漏らしている。
「リリーナちゃんはずっとソロで活動してたでしょう?」
「は、はい」
「それで冒険者ランキング27位までいったなら、ゼウスブレイドなんかよりも強いに決まっているわ」
「それに、リリーナの場合は大工が天職だからな。その力も上乗せされれば……絶対に壊されないだろうよ」
「えっ! リリーナちゃん、天職持ちだったんだ! それなら、私でもスキルを使わないと壊せないかもなぁ」
「そ、そんなことないと思いますよ?」
突然の絶賛にリリーナはどう反応したらいいのか分からず、ただただ照れている。
こんな姿を見るのが珍しかったのか廻がリリーナを見つめていると、その隣でボッヘルが何故だか歓喜していた。
「さ、さすが俺のリリーナだ! そうだよな、リリーナが固定した看板なんだ、そう簡単に壊されてたまるかってんだ!」
「と、突然強気になりましたね」
「ごめんなさいね。この人、調子に乗りやすいんですよ」
呆れ声の廻に対してリリーナが苦笑しながら謝っている。
だが、アルバスとジギルからの太鼓判なら看板については安心だと胸を撫で下ろす。
ランドンに関しても倒されることはないだろうということなので、とりあえずの目標はライとストナのレベル上げとなった。
「今日の戦闘でどれくらいになったんだ?」
「ライがレベル5、ストナがレベル6ですね」
「まだまだ心許ないな。この後にでももう一回潜ってみるか。ジギルはどうだ?」
「アルバスが潜るなら私も潜るわよ」
「あの、本当にいいんですか?」
まさかお祝いの席で再び潜ることが決まるとは思わなかった廻は二人が無理をしていないかが心配だった。
だが、二人とも問題はないと快く引き受けてくれたのだ。
「おっ! だったら俺も行っていいか? ランドンを倒した二人について行けば棚ぼたでレアアイテムが手に入りそうだしよ!」
「「足手まといは必要ない」」
「ひ、酷えじゃねえかよお!?」
「ヤダンを連れて行くくらいなら、リリーナを連れて行く方が断然勝率が上がる」
「そうだ! ヤダンが換金所に立てばいいんじゃないの?」
「できるわけないでしょうよ!」
「そこは私がお断りします」
「メ、メグルちゃんまでえっ!?」
ヤダンの焦りように机に集まっていた全員から笑いが巻き起こり、そして話はダンジョンに誰が同行するのかに移行していく。
その中でロンドの同行はすぐに決まった。
「あの、本当に僕でいいんでしょうか?」
「一応、俺は小僧の師匠って立場になっているからな。たまには師匠らしいところを見せておくのもいいかと思ってな」
「ロンド君には私を超える存在になってもらわないといけないからね」
「ジ、ジギル様を超えるっと、それはさすがに無理があるかと」
「おいおい、挑戦する前から諦めていいのか? そんな柔なやつを弟子にした覚えはないんだがなぁ」
「アルバス様まで」
恐縮しきりなロンドに対して、やる気を出してもらうために廻も鼓舞するために口を開いた。
「今のロンド君にはアークスさんが作ってくれた剣もあるし、ジーンさんから貰った装備だってあるじゃないの。今できることをやるって、大事だと思うけどな」
「今できることをやる、ですか……」
廻の言葉はロンドの心に何かを訴えかけたようで、顔を上げるとすぐに頷いて同行することになった。
残る新人冒険者三人も同行を希望したのだが、こちらは却下されてしまう。なんでも、ライとストナのレベル上げが一番重要なので速度を大事にしたいのだとアルバスは口にする。
「小僧なら何度も俺とダンジョンに潜ってついて来れることが分かっているからな。その点、お前達に関してはついてくれる保証がない」
「ごめんねー。ゼウスブレイドがいなくなったら私が付き合ってあげるからさ」
「「「ほ、本当ですか!」」」
ジギルの言葉に今回の同行は全員が諦めてくれた。
「ジギルさん、いいんですか?」
「いいのよ。それに、後輩に現実を見せつけるのも先輩の役目だもんね。というわけで、その時はアルバスも付き合ってよね」
「お前だけで行くんじゃないのかよ。俺には換金所の仕事が――」
「でしたら、その時は私が窓口に立つのでご安心ください」
「ありがとうリリーナちゃん!」
「……はぁ。分かったよ、行けばいいんだろ、行けばよ!」
こうして、この後にダンジョンへと潜る人選はアルバス、ジギル、ロンドの三人――と思いきや、駄々をこねたヤダンの同行も決まり四人になったのだった。
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