第145話:アルバスとジギル
「あの──アルバスさんも潜りませんか?」
「……あん?」
「えっ! いいの? アルバス、いいの!」
廻の提案とは、アルバスと一緒に潜るというものだった。
当のアルバスは首を傾げているが、ジギルは身を乗り出して何度も確認をしている。
「潜るも何も、そんな時間がねえだろうが」
「ありますよ。さっきのジギルさんの提案、あれは本心でナイスアイデアだと思ってますから」
「小娘がリリーナと一緒に窓口に立つってあれか? ……まあ、経営者がいるってなれば俺が一緒に立つよりも効果は高いかもしれんが、本当にいいのか?」
隻腕で腕を組むようなしぐさをしながら考え込むアルバスに、廻は大きく頷いて見せる。
「お二人なら最下層まで時間も掛からないだろうし、大丈夫ですよ。むしろ、ジギルさんのことが心配なのでついていってもらえると嬉しいかなって思ってます」
「……メ、メグルちゃん、なんて優しい女の子なの~!」
「……むふ、むふふー、ぷるんぷる~ん」
ジギルの胸に顔を埋めながら廻は至福の時を過ごしている。
その様子を呆れたように見つめながら、アルバスは思考をダンジョンへと向けていた。
「……分かった。それならまずは進化をさせないといけないな」
「あっ! そうでした!」
「私はここで待っているから、いってらっしゃい」
「待ってるって、今から潜るつもりですか?」
「せっかくだもの、新しいモンスターを一番乗りで相手してあげるわよ」
「ありがとうございます、ジギルさん!」
廻とアルバスはそのまま
※※※※
経営者の部屋ではすぐにライとストナを進化させた。
ハイライガーはキングライガーへと進化し、ゴーストパラディンはスティンガーへと進化した。
ハイライガーよりも二回りほど大きくなり、さらに青と白の模様の中に黄色い模様が浮かび上がっている。
そしてスティンガーは銀色の鎧となり見た目の派手さはなくなったが、その分スマートな見た目となり、さらに剣が一本から二本になっている。
「ほほう、キングライガーは予想できたが、ストナはスティンガーになるんだな」
「スティンガーって強いんですか?」
「レア度4だからもちろん強い。それはキングライガーもそうだが、スティンガーは双剣を使って手数で攻め立て、さらに細くなったことで動きも速くなる。厄介さで言えば、キングライガーよりもスティンガーだろうな」
「へぇ……やっぱり、レア度4にもなると違うんですね」
レベル上げのためにライが五階層、ストナは七階層と比較的浅い階層のボスモンスターに配置する。これは多くの冒険者と戦えるようにするためだ。
「配置は終わったか?」
「ちょっと待ってください、ゴルを使ってノーマルガチャをします。少しでもレベルが上がればと思うので」
そして廻はゴルを使って10回のノーマルガチャを回す。
レア度1と2のみが出てきたのでそのまま合成素材として使用する。
ライがレベル3、ストナがレベル4となり準備は完了した。
「まあ、この程度のレベルなら問題にはならないだろうがな」
「そりゃそうでしょ。新旧の冒険者ランキング1位なんですから」
「レベル上げ、よろしくお願いなのにゃ!」
こうして経営者の部屋を後にしたアルバスはジギルと合流し、そのままダンジョンへと潜っていった。
「さて、それじゃあ私たちはここから二人の活躍を眺めておきましょう!」
「そうだにゃ!」
机の上にモニターを出すと、廻とニャルバンは早速ダンジョンの様子を見つめることにした。
※※※※
アルバスは何度も潜っているダンジョンだが、ジギルにとっては初めてのダンジョンだ。
壁を撫でたり地面を触ったり、そしてダンジョンの匂いを何度も嗅いでいた。
「お前、いまだにそれをやっているのか?」
「だって、ダンジョンはそれぞれで匂いが違うんだものー! うふふ、ジーエフのダンジョンは私好みの匂いだわ」
「……その感覚は俺には分からんが、とりあえずさっさと進むぞ」
「はーい!」
スキップをしながらダンジョンを進み始めたジギルの背中を見ながらアルバスもゆっくりと歩き出す。
しばらくはオートやランダムばかりで武器すら抜かずに戦っていた二人だが、一階層のボスモンスターにだけはジギルが剣を抜いた。
「へぇー、一階層のボスモンスターはレア度3のハイライガーなのね」
「元々はライを進化させるためにレベル上げをさせていたモンスターだな。レベルもそれなりには高いはずだが……」
「ふっ!」
『ガルアッ!』
「……まあ、ジギルの敵なわけないか」
たった一歩。
たった一振り。
そして、一秒にも満たない時間。
ハイライガーは一瞬にして白い灰になってしまった。
「ヒュー。さすがは現冒険者ランキング1位だな」
「これくらいならアルバスだってできるでしょー」
「本気で戦ったことなんて、ランドンの時くらいだからどうだろうな」
「それじゃあ、二階層のボスモンスターはアルバスが本気で戦ってみる?」
「……面倒臭い」
「あはは! そう言うと思ったわ!」
二人は笑い声をあげながらダンジョンを攻略していく。
アルバスだけで駆け抜けた時よりもさらに速く進んでいき、そして五階層へと到着した。
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