第08話 帰宅

「えーっとね、まずはここ!」

服屋か。地球の頃でも滅多に行かなかったな。この世界の服屋はどんなものなんだろう。

「ここで、お兄ちゃんの服を買います!」

「えっ、いやいいよ、そんなわざわざ」

「ニーナが買いたいからいいの!」

ま、そんなあって困るものでもないし、いいか。



「まずはこれ」

スーツっぽいな。触った感じ、素材とかは違うけど、見た目はなんとなくスーツに似てるような気がする。


「こんなのは」

作業着だろ、これ。工場とかの見学にいくと従業員の人が着ているあの作業着だ。


「これおもしろーい」

これは・・・某配管工のおじさんが姫を救うあのゲームの主人公の服にすごい似てる。


「これとかは?」

おっ、これはジャージっぽいな。これいいな。


「ニーナ、これでいいか?」

「うん」

結局、ジャージっぽい服を購入。

「じゃあ、次、行こっ!」

「待って」

「どうしたの?」

「次は俺が選んでやるよ、ニーナの服」

「えぇぇぇぇぇ!ホント!?」

え、待って、そんな喜ばれることか?


「わー!動きやすい!」

とりあえずTシャツを選んでみた。俺が選んでやるよって言ったのはいいけど、服の知識とか皆無に近いからな・・・

「これください!」

「かしこまりました」

えっ、

「あ、あのー、ニーナ?それでいいの?選んだ俺が言うのも何だけど、随分ざっくり選んだやつだよ、それ」

「いいの!」

「そか、ならいいけど」


「んー、次はどこに行く?」

ぐぅぅぅーーー

「はぅっ」

「よし、飯にするか」


飯にするかと言ったのはいいが、どうするか、あ、ニャーさんとこ行けばいいか。てか、かれんも麻央まおもそこに居るし。秘書さんが帰ることによって王城には無事だってことが伝わるだろうけど、かれんたちは今、王城にはいないし。てかすっかり忘れてた。やべ。


━━━━━━━━


「ただいまー」

「おっ、あんちゃん、帰ってきたか」

「それで、国のトップさんは?」

俺の後ろに居たニーナが出てきた。

「お兄ちゃん、この人たちは誰?知り合い?」

「あぁそうだ、そこのおじさんが、この店の店主で、そこの子がニャーさんで、こっちが涼太だ。俺の命の恩人でもある人達だ」

「ニャーさん言うな。え、この子が国のトップさん?」

「あぁ、そうだ」

「シュビリア・ルファ・ニーナと言います。私が国を治めているということはどうか内密にお願いします」

「あ、は、はい。でもどうして?」

「いや、こんな幼い子が政治回してるなんて知れ渡ってしまったらダメだからだろ」

大体こんな感じの理由だったような気がする。てか、見た目も俺と接してるときも大体8歳なのに、やっぱり政治とか回してるだけあって、ちゃんとこういう対処もできるんだな。


「それで、犯人は??ちゃんとボコった??」

「あぁ、その事についてなんだけど・・・」


とりあえず神界での出来事をさらっと話した。


「と言うことなんだけど、かれんたちはどうする?別に俺は無理矢理連れて行く気もないし、嫌なら嫌でこっちの世界に残っていてもいいけど」

「は?何言ってるの?」

まさかのガチトーンで返ってきた。あれ、何か気に触るようなこと言ってしまったかな。

「私が行かないとでも思った?行くに決まってるでしょ!麻央もそうだよねー?大空とお別れしたくないよねー?」

「パパについて行く!」

「ってことだよ。私も、麻央もほんの少しの間だったけど大空そらのこと仲間だと思っているし、信頼もしてるよ?大空は違う?」

あぁ、そういうことか。なんか悪いこと言っちゃったな。

「いや、悪かった。あぁ、俺もかれんや麻央を仲間だと思っているし信頼もしている。うん、そうだな行くか!」


「さて、ご注文はいかがいたしますか?王女様」

「ニーナって呼んで!お願い!話し方もお兄ちゃん達と同じでいい!」

「わかったよ、嬢ちゃん」

順応能力高いなーおじさん。

「それじゃ改めて、嬢ちゃん、注文は何にする?」

「何があるの?」

「おっと、すまない、メニュー渡し忘れていたな。ほら、これがメニューだ。なんでも好きなものを言ってくれ。すぐ作ってやるから」

王族相手にも遠慮ないなー、おじさん。さすがだな。

「えっとねー、じゃあ、おじさん、このカレーってやつがいい!どんなものか分からないけど、なんとなくおいしそう!」

「あ、おじさん、ニーナのカレー、甘口にしてやってくれよー」

「あぁ、言われなくても分かってるさ」

おじさんは、料理を始めた。



「で、ニーナちゃんは、本当にお姫様なの?」

「えっと、確かニャーさんでしたよね。はい。私はこの国の政治、裁判等においての最終決定権を保有し、国権の全てを保有しています」

既に知ってることでも、こう、改めて聞くとやっぱり凄いよなぁ。

「あ、れ、は、あのバカが勝手にそう呼んでるだけ!いい、私のことは、『音心』って呼んでね!私もあなたとは普通に接するから」

「あっ、えっと、あっ、う、わ、分かりました!音心さんですね」

「そうそういい子ね〜、どこかのバカとは大違い。あ、私と話す時もそんな外交的な態度じゃなくて、普通にでいいよ」

さーて、どこかのバカとは誰のことなんだろうねぇ。って、俺の事言ってるんだろうけど。

「分かった!」


━━━━━━━━


ふぅ、王城に戻ってきた。

「なんか、料理屋に行くだけですごいことになっちゃったねぇ」

「そうだな。まさか俺もニーナが誘拐されるとも思わなかったし、しかもその誘拐犯が神とかいうやつの使者ってなぁ」

「そういや、いつ頃出発って言っていたっけ?」

「えっと、1ヶ月後ぐらいだね。あれ、そういや、麻央は?」

「ニーナちゃんとお風呂に入っているよ」

「そうか。麻央が戻ってきたらもう寝ようか。今日は色々あって疲れたし」

「そうだねー」


「あれ、大空!なんか光ってる!」

え?何がだ?あっ、

「これってスキル習得時の・・・」

「え、今大空は、私と話していただけだよね?」

「あぁ、一体何のスキルが・・・」

すぐに【能力鑑定】を使い、何が追加されたか見てみた。


空間操作[New]


「「え?」」

かれんは、俺のステータスを、感覚同期を使って見たから、同じ反応になった。

「あれ、大空って空間操作持ってたよね?使ってもいたよね?」

「あぁ、なんでだ?Newって」


〈おーい、聞こえるかい?〉


「ねー大空、この声って」

「地球の神様だよね」

どうやら、かれんもこっちに来るときにこのひと(?)の声を聞いたことがあるらしい。

「聞こえます。どうかしましたか?」

〈ステータスの変化には気がついたかな?〉

「あ、はい、空間操作のことですよね」

〈そうそう、君の要望通り、その国にいつでも帰れるようにしたよ。君の持っている【空間操作】は、スキルレベルというより・・・君たちにわかりやすく言うとアップデートかな。派生項目などは表示されないから、気を付けて。そういや、帰り先は地球じゃなくてよかったのか?〉

「ありがとうございます!地球は、帰れるなら帰りたい気もしますけど、正直、地球に帰るくらいなら、この世界のほうが楽しいので」

〈そうか、大体こういう状況下の奴は地球に帰りたがるんだがな。まぁいい〉

この言い方からして、前例があるってことなのかな?

〈ただし、世界を超えて帰れるのはその国だけだから、気をつけてね。あと、世界を超えて帰るのは、精神的に落ち着いているとき限定で、その国に帰って、再び戻れるのは、その国に戻る直前の場所になるから、気をつけてね。なんかピンチになったからといってそんな状況じゃ帰れないから気をつけてね。最後に、ヒントを。好き勝手に世界を行き来できる神界魔術はあるから、どうにかして習得できたら、行ったことのあるところ限定だけど自由に行き来できるようになるよ〉

え、マジっすか。それはぜひとも習得したい。

〈それでは、1か月後にまた呼び出すから、それまでに色々と準備があるならしておくように。では〉



━━━━━━━━翌日


早朝。急にニーナが起こしに来て、話があるっていうから、何事かと思ったら・・・

「お兄ちゃん!私も一緒に行ってもいい?」

「どこに?」

「昨日言ってたこと!」

「あぁ、あれね。でも、ごめんな、いくらニーナの頼みでもこればっかりはできない」

「えっ・・・どうして?」

多分、俺が普通にOKすると思っていたのだろう。すごく驚いている。

「最近俺も忘れつつあるが、ニーナは、8歳の子供でもあるが、この国を治める立場の人間だ。しかも政治の最終決定権を保有しているんだ。それなのに国をほったらかしにしていっちゃ、この国が回らなくなるだろ?これは、この前の空間操作で離れた所でも声が聞こえてたら大丈夫とかそういう問題じゃないんだ。まず、命の安全すらないんだから」

「でも・・・でも・・・」

「今回のことは、一体どのくらい時間がかかるかわからない。2、3日くらいならまだ何とかなるかもしれないけど、そんな日数じゃあ、絶対に無理だ。まずはその行った先の世界について調べて、それから冒険して、本当にどのくらい時間がかかるかわからないけど、すぐに片づけられるような問題じゃないと思うんだ」

「うぅ・・・」

「ちゃんと帰ってくるからさ、しかも、この国だけならどこの世界にいても戻ってこれるようになったから、何年も会えなくなるわけじゃない」

「ほんと!?」

あ、ちょっと元気になった。

「じゃあ約束!絶対、ぜーーーーーーったい帰ってきてね」

「あぁ、約束するよ」

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