第05話 シャーペンを作ろう

━━━━━━━━王城の庭

「おいお前ら!今から伝えるミッションはニーナ様直々のミッションだ!全員死ぬ気でかかれ!」

「「「「「ハッ」」」」」

「半日でこのメモの内容の30万倍の量を集める。いいな」

「「「「「ハッ」」」」」

「捜索班と配送班に分かれ、直ちにかかれ!」

「「「「「ハッ」」」」」



━━━━━━━━大空そらたちの部屋

おいおいおい・・・なんかすごいの始まろうとしてんだけど・・・

「あの、ニーナ、あれって・・・」

「軍隊さんはね、何でか知らないけどニーナが頼んだことはすぐにやってくれるんだよ」

そりゃぁね、一国のボス直々に指令が下ったらそりゃ最優先でやるだろうけど・・・

「ねぇねぇ大空、日本の自衛隊もあんな感じなのかな?」

「分かんない。でも、アメリカとかの軍隊ならあれくらいありそうだけど」


「そういや、大空、30万本もシャーペン本当に作るの?正気の沙汰じゃないよ?」

「それに関しては、考えがある。あのメモには、シャーペンの材料とあともう一つ、3Dプリンターを作る材料を書いておいたんだ。それは1つ分でいいって頼んでるから、あとはこのスマホでデザインしてそれを出力するだけで完成ってことだ。まぁ、ニーナのは、量産型じゃなくて、俺が作ったほうがいいか?それとも、軍隊と同じ3Dプリンターでいいか?」

まぁ、ニーナはすっごい欲しがってたし、自分で作ったやつでも全然いいんだが。元々手先は器用なほうだと思うから作れるだろうし。

「お兄ちゃんの手作りがいい!」

やっぱそう来ると思ったよ。やっぱり思うんだが、懐きすぎだろ。どこの作品だよこれ。こんなの絶対おかしい。現実じゃない。現実の女子が可愛くないって言っているわけじゃないが、まず女子と関わることが皆無だったからな。知らないだけっていうことだろうけど、現実ってのはこう、可愛いくて完璧な子は全部画面の中とか、ニーナは、俺を兄のように慕ってる(懐いてる?)けど、そうなると、イメージ的には義理の妹ってことになるよな。やっぱそういうのは、文章の中だけとか、コマの中だけってっていうのが現実ってもんだ。なのに、なんでだ!?少なくとも俺が知ってる『現実』じゃぁないな。

って、異世界に来てる時点で、異世界物のストーリーになってるのかな?まぁいいや。

「・・・?お兄ちゃん?どうしたの?やっぱり数が多すぎるし無理だったよね···」

あっやべ。脳内議論しすぎだな。

「いやいや、問題ないよ」

「そうだ、この国には、物作りができる人たちはいない?」

いくら3Dプリンターと言っても、全部それだけで作るのは難しいし、部品ごとに作っていって、それを組み立てる作業をできたらなぁって思ってるけど、果たして技術者がいるかどうか・・・

「いるよー!呼んでくるね!」

タタタタと小走りで部屋を出ていった。


━━━━━━━━

「にしても、ホント、スマホが使えて便利だねー、もしかして、ゲームとかもできたり???」

「ん?あぁ、できるよ、でも、かれんとゲームの趣味が合うかは分かんないけど・・・」

「みーせて!」

こっちの世界に来てから1回も開いていないゲームフォルダを開いた。

「こんな感じだよ」

「うぉぉー!ガ○パあるじゃん!おっ、きら○ァンも!太鼓にマイ○ラ・・・他は知らないゲームだけど結構あるね!」

「でも、やらないけどね」

「えっ、なんでー!?」

「いや、何でも何も、充電どうするんだよ」

「あっ」

今、電池があるのは、電源を切った状態でそのまま放置してたからなんだけど、それも不思議で、放電で電池残量が0になっててもおかしくないと思ってたけど、なんか残ってるんだよなぁ。まぁいいか。


━━━━━━━━

ガチャッ

部屋のドアが開いた。

「つれてきたよー!」

えぇっと、10・・・20・・・30・・・って何人いるんだ??

「いっばいいるね・・・」

「ねぇ、ニーナ、何人いるのー?」

「50人くらい!」

10人居るかな?って思ってたくらいだから、予想よりは多いな。まあ、こんなもんだな。

「あなたたちは、この国の技術者なんですよね?」

「そうですが、あの、大空様、ご用件とは?」

あれ、ニーナ、話してなかったのか。まぁいいか。それについてはたのんでなかったし。

「あの、今から30万本のとある筆記用具を作らないといけない。だけど、俺一人じゃ重労働すぎる。んで、作り方とか教えるから、シャーペン作りを手伝ってほしいんだ。もちろん無料でとは言わない。あ、シャーペンってのはこれな」

シャーペンを見せると、技術者達は一斉に近寄ってシャーペンを見ていた。

「これの作り方を教えてくださるのですか?」

「ん?あぁ、作り方は教える。だから、手伝ってくれ。報酬は、

「「「「「「そんなもの、要りません」」」」」」

え???

「えっと、そんな物って報酬のこと?」

「当たり前です。我々は新たな技術を何の対価もなしに得ることができてしまうのです。むしろ、新たな技術をご教授していただくためにこちらが対価を支払わなければならないくらいです。我々にとって、新たな技術ほど高額報酬はありませんよ」

「え、つまり、報酬はいいの?本当に?」

「もちろんです」

というか、さすが国の技術者ってところか。この世界にないはずのシャーペンを見ただけで新たな技術と認識するとは。って、この世界にないものだから分かったのか。

「大空様、1つ我々からお願いが」

「なんだ?あ、君たちもシャーペンがほしいのか、まぁそうだよね」

「いや、それもそうなのですが、違います。我々は、大空様から一度、そのシャーペンというものの作り方を教わり、その後、1本だけ試作してみます。それで、その試作品の出来が合格なら、我々だけで30万本作らせてくれませんか」

( 'ω')ファッ!?

「いや、それはさすがに負担がありすぎるだろ、作業は1人でも多いほうがいい。しかも、頼んだ側が何も働かないのもなんかこう、気に食わないし」

「いえ、我々は、大空様にやるなとは言っておりません。そして、やるなと言う資格もございません。我々は1つ提案をしているのです。ニーナ様はそのシャーペンを凄く気に入られている。それが、シャーペンという新たなものに対して興味を持たれているのかあるいは・・・とまぁ、ニーナ様には量産型のものではなく、大空様が直々にすべてお作りになると聞いております。我々にはそれがどれほどの時間を要することになるかは分かりません。ですが、すぐに完成できてしまうものではないということは分かります。なので、こんな作業をするより、ニーナ様のものの質を上げるようにしてみては?」

「なるほど、でも、いいのか?1人いるかいないかだけでも、かなり作業効率が変わってくるだろうに」

「自分で言うのもなんですが、我々は、その手のプロです。この程度のこと、苦とも感じませんよ。しかも、新たな技術となれぱむしろ楽しさがあるかもしれないというほどです」

「わかった。じゃあ、お願いするよ。でも、しんどくなってきたら言ってくれよ。いつでも加勢するから」


━━━━━━━━

 それから約1ヶ月、俺は、時間は沢山あるし、やるならやるで、最高のシャーペンを作ろうと、ひたすらシャーペンを作った。

 まず、大雑把に、どんな形がいいか、いくつも型を作ってニーナに持ってもらった。どんな形ならニーナが一番持ちやすいか、書きやすいか、手への負担は少ないかなど、色々改良させていきながらだんだんと良いものに仕上げていった。


「よしっ、できた!」

今日ももう夜になってしまったな。って、普通の人からすれば、夜2時って、深夜になるのかな。ニーナへのお披露目は、明日にして今日はもう寝ようかな。

「おぉー!これかニーナちゃん専用のシャーペン?」

「そそ。一体いくつ試作品を作ったことか・・・」

「まぁまぁ、別に使えないってわけじゃないんだし、私達が持っていればいいじゃん」

「それもそうか」

確かにかれんの1つだけのシャーペンはちょっと心配だし不便でもあるだろうしなぁ。って、冒険中にシャーペンを使いたいと思ったことはないし、そこまて不便ってわけでもなさそうだけどね。

「にゃあ、パパァ~できたの〜?」

麻央まおが眠たそうな声で、目を擦りながらこっちに来た。

「あ、ごめん麻央、起こしちゃった?」

ちょっとうるさくしすぎたかな。

「うんん、ちょっとトイレに行こうと起きただけ」

「そっか」

「さて、俺もそろそろ寝ようかな」

「そだね、私ももう寝よっと」


━━━━━━━━

「用事ってなぁに?お兄ちゃん」

「まずはこれを」

シャーペンを渡す。

「これって!」

「そう、ニーナ用に作っていたシャーペンがついに完成したんだ」

「わぁぁ!ありがとう!!お兄ちゃん」

本当にぴょんぴょんと飛び跳ねて喜んでいる。

「一生大事にするね!」

いやっ、一生ってほどのものでもないような・・・まあいいか。

「まぁ、大切に使ってくれ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る