100%を超える、その恐るべき代償
「リスクを孕んでいる……」
「そう。見えないものを想像してもらうのは本当に難しい。なぜなら想像力というものはその人が生きてきた中で培われるものであって、十人十色だ。どれだけ作家が素晴らしい文章を紡いだとしても、読んだ人の中にその世界の材料がなければ、想像してもらえない。つまりイメージしてもらいたい世界を持っている読者ならより鮮やかに、そうでなければ陳腐なイメージで終わってしまうのだよ。これについてはいつもお世話になっている牧野 麻也様https://kakuyomu.jp/users/kayazouも近況ノートでも仰っており、思わず納得と頷いたものだ」
「ふーん、その点映像は楽なのかもしれないな」
「そう。だからキザワ的には小説の中に挿絵、というのがあるだろ? あれはその100%を越える領域を諦めてしまっているんだ、つまりここに書かれている人物はこんな顔していますよ、と固定してしまっているからな」
「あっ、今ラノベ系全体を敵に回した!」
「いやいや、そうではない。芸術というのは作り手とそれを受け取る側が少しでも楽しめるようにあるべきだ、そこにルールはない。だから挿絵を入れることで、主人公のイメージは固定されるという犠牲を払っている一方、イメージの固定はできる。読者がイメージする手間を省いてあげているんだ。それ以外で想像の世界の遊びはいくらだってある」
なるほどな、子供向けの本に活字ばかりのものは少なくて、絵本が好まれるのはそういうことなんかな?
「分かっただろ? たかが懐中電灯、されど懐中電灯。こんなコストパフォーマンスの高い芸術は他にはないよ」
うん、それは確かにそうだ。
小説はノートとペンさえあれば書けるからな。
「だがな、シンプルな芸術ほど、甘く見ると痛い目に遭う、君みたいにね」
またあのキザワの人の胸の奥をあざけるような笑いが浮かんだ。
もういい、だんだん慣れてきた。
「それでは次は懐中電灯の使い方に行こうか、名付けて『スポットワーク』」
「使い方? そんなの——スイッチ入れて照らすだけだろ?」
「あぁ、そういう事言っちゃう……君は大怪我するタイプだね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます