第9話 砂と教師と良心と

俺たちは苦戦を強いられていた。なにせ、砂を集めるという性質上、足元が安定しない。刀の訓練をしていたときは常に足元はしっかりとした地面だったから今の状況には慣れていない。その上、集まる砂の量が尋常じゃないくらい多い。先生はその砂で、まるで巨人のような形を作っていた。

「父さん、これじゃらちがあかない!どうにかして突破口を、、、!」

俺は焦っていた。すると砂場先生はくぐもった声で言い放った。

「あなた達では私を倒せない。諦めて降参しなさい!命だけは取らないから、、、」

俺はその言葉で確信した。先生は俺たちを本気で殺す気はないのだと。あの優しかった砂場先生ならどんな事情があろうと、シャドウとはいえ教え子を殺めるようなことはできないだろう。

「父さん、俺に考えがある!」

俺は父さんに近づき、そっと耳打ちした。そして作戦を実行した。

「うおお!」

父さんは崩れかかった足元を強引に左手の拳でこじ開けると、砂の中に突っ込んでいった。

「うおおお!!」

父さん、頑張れ!と俺は心の中で応援していた。父さんなら出来るだろうと信じていた。そしてその時は訪れる。

「だああ!」

俺は父さんが開けた道をたどり、先生が入った球体を何度も切りつけて、破壊した。

「そんな、そんな無茶な、、、」

そう、作戦とは、先生が俺たちを殺せないことを前提として父さんが突っ込み道を開け、俺が奇襲して刀でトドメを刺すといった強引なものだった。先生は機械の鎧を背中に収納して立ち尽くしていた。

「先生なら、、、」

俺は先生に語りかける。

「先生ならまだやり直せます。さっきの攻撃を見るに、まだ人を殺したことはないんでしょう?」

「私は、、、」先生は答える。

「私はただ、あの毒親たちに復讐できればいいと思っていた。それがまさかこんな大ごとになるとは、、、」

父さんも口を開く。

「モンスターペアレントってやつですね。私も中堅のサラリーマンだから社会の不条理もある程度理解できます」父さんは続けて言う。

「だから、良かったら人生の先輩としてあなたの悩みに付き合わせてください。一緒に頑張っていきましょう!」

「ああ、ありがとう、ありがとうございます!」

とりあえずこっちの戦いは終わった。秀人の加勢に行こう!

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