第5話 無善虚構と真実
私たちはしばらくして真っ暗闇に放り込まれるのが分かった。そして、何もない暗黒を歩き出した。それからは長かった、とても長かった。だが、私たちは迷わず歩き続けた。途方もない距離を進み、そして、ついに
「やあ、客人とは珍しいね。私はヤブ、ドクターヤブだ」
と話しかけてくる1人の老人と出会った。
「せっかくだ、うちに来ないか」
私たちは案内されるまま、その老人の家に入った。
「ここには時計すらないのか、、、」
フェザーはボソッと言った。
「人間は時間の奴隷だからね、このくらいが丁度いいのさ」
「私には聞きたいことが山ほどあるんだ」
私は老人に催促した。まずは何から聞こうか、、、
「お前は私の子だ」
「!」
「そうか、やはり藤々陸はそこまでは伝えていなかったか。ここ無善虚構は昔、シャドウやメビルを研究する施設だった。そこで、人工的に新たにシャドウを3人生み出すことに成功した。その中の1人がお前、カレンだ。そして、無善虚構で作り出されたシャドウは普通のシャドウにはない特殊能力を得る」
私は悟った。私のメビルを操る能力『Devil the Shadow』の力もその一つだということを。
「なんとなく察しているだろうが、無善虚構出身の人間は無善虚構外では歳を取らない。ここには表の世界や反転虚構とは時間の流れが別に存在するんだ」
「あんたに聞きたい、藤々陸とは何者なんだ?」
「彼もここで生み出されたシャドウだ。だが、持ち合わせた特殊能力が『Follow the Shadow』という、モノから記憶を読み取るものだった。だから無善虚構の研究者からは不必要とされ表の世界に廃棄処分とされた。彼らからはほぼ永久に生きるのは苦であると思われていたのだろう」
私は憤慨した。なんて自分勝手なのだろうと。自分たちに利のない者だと分かった途端、いらないものとして扱うなんて、、、
「だが、藤々陸には隠された能力があった。それが『Create the Shadow』という、記憶からモノを作り出す能力だ。私はその驚異的な能力が他の研究者の手に渡ることを恐れ、周囲には秘密にしていた。そして、反転虚構から表の世界に干渉する技術を応用して、私は一つの兵器として一本の短剣を表の世界にいる彼に渡した」
「そうか、あの時、、、」
私は彼がFollow the Shadowを唱えたとき、全てを悟ったような表情をしたのを思い出した。
「そして彼は使命を全うした。お前に全てを託すことでな」
「ああ、そこまでは分かった、だが、他の研究者たちが見えないんだが、一体どこにいるんだ?」
私は一つの疑問をヤブに投げかけた。すると
「彼らは私が殺した」
想像の斜め上をいく回答が返ってきた。
「お前たち、2人のシャドウを逃すためにな。因果応報だと思っているよ。当然の報いだと、、、」
彼は一つため息を吐くと、
「私にはもう年齢という概念が存在しない。無善虚構と一体化することによって、実質的な不老になっているんだ」
と続けた。
「そして、無善虚構で生み出されたシャドウの心臓を消費すると、未来へタイムスリップする、タイムジャンプが可能になる。それと最期に一つだけわがままを聞いてはくれないか?カレン、お前には私を覚えていて欲しいんだ、、、」
ヤブがそう言うと、フェザーが不機嫌なトーンで答えた。
「勝手だな」
「勝手なのは重々承知だ、その上で頼んでいる」
するとフェザーは言った。
「私のコアの一部を彼女に託せ。あの爆風でファンクのコアは壊れてしまったからな。少しは誠意を見せてもらおうか」
「ああ、いいとも」
彼らは、フェザーのコアの一部を摘出するために奥の部屋に入っていった。
それから長い沈黙が続き、、、
「お待たせ我が子よ」
「お前に父親を名乗る資格はない」
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