第2話 表と裏
「おや、こんなところで迷子かい?外は寒いだろう、良ければ寄って行かないか?」
1人の少年がしっかりとした口調で話しかけてきた。
「あ、ありがとう。腹も減ってたし助かるよ」
「おいおい、飯も食うつもりか、こいつは。贅沢なやつだな」
少年の影からひょいと姿を現したのは、1人の老人男性だった。私はこの時点で違和感を覚えた。表の世界とは異なった、一つの違和感である。
「なあ、フェザー、これって、、、」
少年たちに聞こえないように小声でフェザーに話しかけた。
「ああ、おそらく。ここでは人の成長までもが逆行しているのだろう、私も驚いたぞ」
彼らはおそらく老人の姿で生まれ、赤子になり、死んでいくのだろう。私たちは少年に促されるまま、集落の中でも一際大きな建物に入った。
「私はスミス、ここでは村長と呼ばれているよ」
「私はカレン、んでこっちのメビルはフェザーっていうんだ。よろしくな」
するとスミスは
「ほう、メビルを付き人にしているとは、、、!」
「私たちは表の世界への行き方を探しているんだ、良ければ協力してはくれないか」
「おい、フェザー、、、」
私はフェザーがいきなり本題に入り込むので少し焦った。
「表の世界、、、?何を言っているんだ、ここが表の世界だよ」
スミスはそう返事をするとさらに続けた。
「表の世界は常に夜しか存在しない。そして時間軸も反転虚構とは逆みたいだな」
どうやら、私たちにとっての表の世界を彼らは反転虚構と呼んでいるらしい。逆もまた然りだ。そして次のスミスの発言で事態は思っていたよりも断然簡単だということが分かった。
「君たちは反転虚構に行きたいのだろう。それなら何も心配することはない、反転虚構に行くという強い意志さえあればいつだって行けるのだからね」
私たちは顔を見合わせた。これなら簡単にことが進むと分かって安心した。私たちはスミスに礼を言い、家を出た。
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