第12話 ファンクの懐古

俺は目覚めた。胸の奥がじんじん痛む。だがそこに穴はなく、それは鉄のような手触りだった。

「起きたか、待ちくたびれたぞ」

鉄のベッドで横になっている俺の隣で、一体のメビルがそう呟いた。

「え、、、なんでファンクが、、、」

困惑した。混乱した。俺にはファンクが既に敵意を失っているのが分かった。

「ああ、お前の連れは私が殺した。だが、幹の頼みでお前は生かした。私のコアの一部をお前に移植したのだ」

「親父、、、?」

まさか、親父とファンクが裏で繋がっていたのか?

「待て、早とちりをするんじゃあない。幹とは昔、一度だけ顔を合わせたくらいの仲だ。ほとんど面識はない」

ほっとする自分がいた。それからファンクは続けて言う。

「私にはつくられたときから意思があった、自我があった。誰につくられたかまでは覚えてはいないがな。そして時は経ち、自分のメビルとしての存在意義について考えるようになった。周りにいるのはプログラムされたとおりに動くただの鉄クズばかりで、それに紛れて任務を遂行するだけの自分もそれらと同じなのかも知れないと思い始めていた、そんな時、彼と、藤々幹と出会った」

ファンクは過去を懐かしむような口調で喋っていた。

「彼は私を見つけると、私はいずれ大きなことを成し遂げる器だと言い放った。それは私を喜ばせるのには充分だった。その時初めて喜びと言うものに出会ったのだ。私は彼に礼をしたいと言うと、彼は一枚の写真を取り出して渡してきた。そこには永遠に歳を取らない藤々陸という少年が写っていた」

「俺が、、、」

「幹はその少年を守ってほしいと私に言うとすぐにどこかへ消えていった。彼とはそれっきり、もう会っていない」

そう言うファンクはどこか寂しそうだった。そしてファンクは、シャドウに覚醒した城々留無の居場所とメビルウォーの発端となった人物、『カレン』の名を告げた。

「藤々陸、お前は特別な存在だ、これからもな。だからお前が世界を、、、」

そう言うや否や、鋭い刃がついた一本の鎖がファンクを切り裂いた。

「ファンク!」

だが俺が鎖の持ち主を視認できたのは一瞬だった。

「残り101人!よお、哀れな影持ちさん!お前と出会えて嬉しいなぁ!」

カレンと思わしき人物は、なんとシャドウであった。彼女は両腕の、刃のついた鎖を武器にしているようであった。

「おい、待て!」

だが、俺が止めるのも意に介さず、彼女は屋根に大きな穴を開けて去っていった。

結局無事に生還できたのは俺1人だった。俺はレジスタンスに一通り報告を済ませると、親父と正面から向き合っていた。

「親父!ファンクのことを知ってて俺たちを行かせたのか!?」

親父はそのあと長い沈黙を経て、

「お前の無事は確信していた。だからもう2人も生かしておくと思ったのだが、、、私の計算外だった。すまない、、、」

親父はそれっきりしばらく自分の部屋からしばらく出なくなった。

シャドウ2人の犠牲と新たな敵の登場は俺たちに重くのしかかった。

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