2:白金の竜

「――以上の聴取内容から、第七番隔離房に収容されている竜はゼセンタデナと、保護された被害者男性の実子であることが推測されます。男性が拉致されたのがおよそ一年半前、メレゼ卿の見立てによれば、件の竜は生後一年足らず。計算は合うものと思われます」

 広大な会議室に、しかつめらしい口上が響く。室内は静まり返っていたが、屋外では咎竜の扱いに手を焼く部隊の怒号を始めとして、様々な騒音が会議の開始以前から度々上がっていた。

 ゼセンタデナ一派の制圧作戦から、早くも数日が経ったものの、未だリィリャ竜謡騎士団は喧騒の最中にある。何しろ、元の作戦が超突貫の緊急立案だった。王都の騎士団総本部に向けた報告、捕縛した咎竜や保護した被害者からの事情聴取、竜王の膝元への咎竜移送の打ち合わせ……後始末に関わる煩雑な仕事は、枚挙にいとまがない。

 誰もが多忙を極め、その合間を縫って開かれた会議もまた、暗澹たる気分になる議題ばかりときているのだから頭が痛い。俺にとって、その最たるものが、今まさに報告されている案件だった。

 攫われた数多くの人間が檻に捕えられ、奴隷同然の扱いを受けていたゼセンタデナの巣にあって、ただ一頭人間を守る為だけに吼えた幼い竜。父と慕った人間と引き離され、置いて行ってくれるなと悲痛に叫んだこども。

 さすがに竜王の元へ連行する咎竜に数えるにはあたらないが、幼子を眠らせたまま置き去りにすることも躊躇われた。件の竜は、現場の指揮官であったファースの判断によってリィリャへと連れ帰られた後、現在は騎士団本部裏手の屋外隔離房に独り収容されている。峡谷で捕縛した咎竜共は順次強制的に人の姿を取らせる拘束具を施した後、全員を地下牢に捕らえてある。あのこどもの心身が害される心配も、今のところはないはずだ。

「稀代の大咎竜の直系か。良くも悪くも耳目を集めることになろうな。――竜王の元へ送るべきか?」

 ため息を吐いて、ファースが隣に座るメレゼに目を向ける。メレゼは物憂げな表情を浮かべたまま、頭を振った。

「母が咎竜であるからといって、その子にまで累が及ぶことはありません。素性を理由に王の元へ送れば、かえって不興を買うことになりましょう」

 表情の暗さに反し、きっぱりとした物言いに、会議室のあちこちから嘆息が漏れた。

 会議室に据えられた大円卓には、リィリャ騎士団長を初めとして各部隊長とその副官――我が第四大隊について言えば、ファースとメレゼがそれにあたる――のお歴々が、ずらりと顔を並べている。俺は副官に次ぐ三位の席次を拝してはいるが、本来であれば臨席する立場にない。

 むしろ臨席したいとも思わないが、何故この場に引き出されているかといえば、単に件の幼竜に最も深く関わった人員であるからだ。あの竜の精神に触れ、謡をもって眠らせた。あの竜に関して、何か気づくことなどがあれば、と意見を求められる形で参加を命じられたのだった。

「あの子竜に関して、他に分かっていることはありますか?」

 メレゼの問いを受け、報告を行っていた第二大隊の副官が「多くはありませんが」と前置きして発言を再開する。その隣では、眉間に深々とした皺を刻んだ第二大隊長が、腕を組んで黙然としていた。

 第二大隊は〈高位種〉の竜であるキドゥーエ卿が隊長を、人間のシリル・ラムジー卿が副官を務める。今は四十がらみの厳しい顔つきの女の姿を取ってはいるが、キドゥーエ卿の本質は青鈍く輝く黒い鱗を持つ竜だ。この場に居合わせる誰よりも険しい顔をしているのは、その身の上によるところも、少なからずあるのだろう。

「男性によれば、子竜はゼセンタデナに見捨てられた立場にあったようです。『弱弱しい』と評され、歯牙にもかけられなかったとか。ゼセンタデナには徹底して黙殺されたそうですが、その側近であった竜に命じられ、生まれたばかりの頃は男性が死なぬよう世話を行っていたと。ただし、子竜はすぐに自分の足で歩き始め、空を飛び狩りを行うようになったので、ほんの短い期間のことであったようです。ただし、話し相手が他にいないに等しかったことと、男性にその余裕もなかったことから、言葉については拙いままであり、どうやら人の姿の取り方も知らぬようであると」

「無理からぬことでしょうね……。〈高位種〉の竜の子であれば、独りでもある程度生きていけるだけの完成を見て生まれるものですが、さりとて長上の手助けは必要不可欠というものです」

「加えて、自分が狩りに出ている間に、他の竜によって男性が傷つけられたことがあってから、小竜はほとんど巣の外に出なくなっていたそうです。常に男性の傍らにあり、有象無象の好奇悪意から守ろうとした。男性は、子竜には感謝することこそあれ憎むことはないと証言していますが、できれば心の整理がつくまで会いたくはない、とも」

「心の整理がつくまで、ね。物は言いようだな。要するに、二度と会いたくないということなんじゃないのか」

「ガザート、口を慎め」

 思わず口を挟んでしまえば、ファースからの厳しい一声。儀礼的に「申し訳ございません」と答えて肩をすくめてみせ

「――何事だ!?」

 ……た瞬間、辺りに壮絶な咆哮が轟いた。

 どこから、などと考えるまでもない。裏の隔離房をおいて他にあるものか。二日三日の空白で聞き違えるほど、俺の耳も鈍ってはいない。

 考えてみれば、そろそろ〈微睡謡〉の効き目も切れる頃だった。隔離房には監視の部隊が配備されているものだが、担当の部隊が対処し損ねたか、何らかの問題でも発生したか。

 厄介な、とため息を吐いて席を立つ。ガザート、とまたファースが咎めるような声を上げた。

「どこへ行く気だ」

「俺が呼ばれたのは、あれの関係者としてだろう。このまま放置しておけば、寝起きの悪いちびの癇癪で、会議に妨げが出る。――俺が出向き、直接対処するのが適切かと考えますが?」

 言い返す言葉の末尾、問い掛けの態をなしたそれは、ファースではなく円卓の最奥へ向けて。一際立派な椅子に座したきり、黙して報告を聞き続けていた騎士団長へ投げたものだ。

 五十路を迎え、痩せた面差しには皺が目立ち始めたザカライア・ヘンリット卿。暗い金の目が、じっと俺を見返すと、重々しく頷いて見せる。

「ローレンツ卿、退室を許可する。迅速に事態を沈静化せよ」

「拝命します」

 団長の許可を得たとあらば、誰に咎められるにもあたらない。円卓から離れ、部屋を出るべく扉へと向かう。すると、こちらが手を掛けるよりも早く、外から凄まじい勢いで叩かれた。

「申し訳ございません、至急ローレンツ卿のお力をお借りしたく! 七番隔離房の竜が目覚め、錯乱しているのか、暴れて手がつけられません! 我ら第三大隊第十二歩兵小隊で警備にあたっておりましたが、かの竜は我らでは止められませぬ!」

 その声が扉越しに響くや、またしても室内のあちこちから嘆息が落ちた。

 俺もそれに倣いたいのは山々だったが、努めて呑み込んでおく。全くもって、嘆かわしいことだ。こちらから出向くまでもなく、向こうから迎えが来る有様だとは。


 リィリャ竜謡騎士団の本部は、石造りの重厚な要塞の態をしている。堅牢を絵に描いたような佇まいの背後には練兵場や、主に捕縛した咎竜を留め置く屋外隔離房などの設備が置かれていた。

 不幸中の幸いというもので、第七隔離房は比較的本部に近い。会議室を訪れた騎士に先導され、小走りで現場へ向かう時間は決して長いものではなかったが、到着した瞬間には、いよいよ嘆息が堪えきれなかった。現場は、まさに「惨憺たる」と形容する他ない。長閑な昼下がりが一転、全くもって悲惨な有様だった。

 堅牢な鉄の檻の中では、あの白金の竜が脚に嵌められた枷を引きちぎろうと暴れ、また格子を破ろうとでもしているのか、太い鉄の格子に何度も頭をぶつけている。成体の竜の鱗は鋼にも比肩する頑丈さを誇るものだが、あれはまだ幼い。さすがに何度も試みていれば、負傷もしようし、既に枷の嵌められた脚の下には、ひしゃげて砕けた鱗の破片が無残にも飛び散っていた。

「ひどい有様だな」

「も、申し訳ございません」

 こぼれたのは純然たる独り言だったが、傍に控えていた騎士は、何やら勘違いをしたらしかった。冷や汗を流しながらに謝罪なんぞをしてくるので、「そういう意味じゃない」とだけ返し、檻に近付く。

 第七隔離房は巨大な造りので成体の竜ですら余裕を持って収容することができる。だというのに、錯乱したこどもは、その檻が丸ごと浮き上がりそうな勢いで暴れているのだ。これでは謡で落ち着かせようにも、聞かせるまでが一苦労だ。

 ゆっくりと檻までの距離を詰めながら、ピィ、と口笛を鳴らす。兎にも角にも、まずは対象の意識を引かなければならない。

 強く短く、何度か音を響かせると、竜はぴくりと反応を見せた。暴れるのを止めたかと思うと、格子にぶつけていた頭をゆっくり引き、何かを探すように辺りへ視線を巡らせる。遠巻きに檻を囲む警備の騎士達がざわめくのを聞きながら、もう一度強く高く、口笛を吹いた。

 今度こそ、変化は劇的だった。俺に背を向ける格好だった竜が、のそりと振り向いて顔を向ける。くるる、と喉を鳴らす音は、助けを乞うようにも甘えるようにも聞こえ、どこか居た堪れない。

 格子の合間から前脚を伸ばしても爪の届かない距離を保って、足を止める。青や金に煌く灰の眼を見返し、軽く息を吸い込んで歌うは〈癒復謡ザロモ・キェンヤ〉。

 まずは、自らで痛めつけた身体に治癒を施さねばならない。努めて静かに、穏やかに謡を紡ぐ。一節歌い終える頃には、幼竜はすっかり大人しくなっていた。行儀の良い犬を思い出させる仕草で脚を身体の下に畳み、じっと俺を見つめている。この様子ならば、思念対話を試みても、さほど危険なことはないだろう。

『こちらはリィリャ竜謡騎士団第四大隊所属、ローレンツ・ガザート。貴公の名を教えてもらいたい』

『り……ろー? なに?』

『……名前は言えるか』

『らど』

『ラド?』

『るべ そう よんだ』

『ルベ? ……とにかく、お前のことは、ラドと呼べばいいんだな』

『うん』

『状況は分かるか?』

『しら ない』

『お前の母が、あー……悪いことをしていたのは、分かるか』

『ちょと わか る。とう さん かあ さん せい いった。かえ り たい いった。いつ も』

 幼い竜の発する思念は、メレゼの言っていた「片言」から想像していたよりも、遥かに言葉として拙かった。ひどく読み取りづらくはあるが、意味が分からないほどではない。

 少なくとも、父親の口から母親が全ての元凶であることは知らされていた、と解釈して間違いはなさそうか。その行為の善し悪しについては、今は判断を控えておくとして。

『とう さん みん な いじ める。から まも る。にげ る しっぱ い。るべ かん だ』

 白金の竜は更に頭を下げ、後頭部から背へと続く首筋を示してみせる。そこには、いくつか鱗のひび割れて傷ついた痕があった。

 確か、この竜の父であると推測される男性の証言によれば、母に見捨てられた子を死なせぬよう命じた側近の竜がいたはずだ。「ルベ」は、その側近の名前であるのやもしれない。後で、他の証言と照合してみた方が良さそうだ。

 ――が、その前に。

『父親を連れて逃げようとして、失敗したのか』

『うん。とう さん のせ て とべる なった とき。とん だ。るべ きて かん だ』

 あからさまにしょげた感情が伝わってくるので、危うくこちらまで引きずられそうになる。しかし、思念対話の行使中は、相手方に不必要な感情要素まで伝わることのないよう、努めて平静を保たねばならない。顔の一つでもしかめたいところではあったものの、堪えておく。

 それはそれとして、ここまでの対話を鑑みるに、やはり意外である感が拭えない。あれだけの咎竜の群れの中に生れ落ちておきながら、よくぞここまで真っ当な状態で育ったものだ。

『とう さん どこ? かえ り たい いった』

『お前の父親は、もうじき帰りたかった場所に帰ることができる。その為にこそ、俺たちはあの谷に出向いた。……ただ、お前の父の帰る場所、そこにお前は行けない』

『うん』

 あっさりとした了解の答えに、図らずも目が見開く。本当に分かっているのか?

 俺の疑念が伝わったのか、竜は小さく喉を鳴らした。悲しげに。

『とう さん おこ る。あっち いけ いった。たま に。とう さん りゅう きら い』

『……あっちに行け、と言ったのか。それは、お前にもか?』

『う ん』

 一層に沈んだ様子で応じ、竜は前足の間に顎を埋める。状況を考えれば無理もないのだろうが、むごいものだ。

 母に見捨てられた子は、父より他に縋るものがなく。子を押し付けられた父は、憎き相手の似姿に守られねば身が危うい。ひどく歪な関係性だが、だからこそ崩壊の片鱗は端々に覗いていたのだろう。子が少なからず、その嫌悪を察するくらいには。

『とう さん なく。たま に。なく あっち いけ いった。しょが ない。とう さん かあ さん きら い。かあ さん にて る』

 しょうがない、と落ち込みきったこどもは呟く。

 それが、苦々しく感じられてならなかった。人間とは異なった状態で生まれつくとは言え、これはまだ生まれて一年も経っていないこどもだ。

 そんな子供が、幼子が「仕方がない」などと言うのだ。母に見捨てられ、父にまで疎まれても――己が母と似ているせいなのだから、と。

 全くもって、ふざけている。くそ、と苛立ちを感情のままに吐き出しかけ、辛うじて踏み止まった。他所の部隊の人員のみならず、幼い竜の前だ。

『でも』

 ひそりと、窺うように向けられた思念で、我に返る。何だ、と問う代わりに意識を向け直せば、きょろりとまるい眼が、縋るような色で見つめていた。

『さい ご。あい たい。あえ る?』

 囁かれたのは――あまりにもささやかで、あまりにもむごい願いだった。

『……それは、できない』

 その場凌ぎの嘘で、希望を持たせるのは簡単だ。だが、それは誰にとっても幸いにはならず、不実に過ぎる。盟約の下に国と民を、そして同盟を結んだ異なる姿の友人達を守らんとする騎士たればこそ、決して口にしてはならないものだった。

 ゆえに、どれほど苦々しかろうと、俺は真実を告げなければならない。

『お前の父は、お前に感謝しているそうだ。だが、会いたくないと言っている』

『あい たく ない』

 小さな竜は、こぼれんばかりに目を見開いて、愕然としていた。見る見るうちに、その目が潤んでいく。直視しているのが耐えがたいほど、それは胸に突き刺さる光景だった。

『……そうだ。心の整理ができるまで、と言っていたそうだが、傷は相当に深いことだろう。生涯かけても果たされるか分からん。二度と、会えないと思っていた方がいい』

『もう あえ ない』

『ああ』

『かあ さん にて る から?』

『おそらくは、そうだ』

 頷いて見せると、ついにこどもの目から涙が零れ落ちた。煌めく真珠のような粒が白金の鱗に滴り、弾けて爪先を濡らす。

『りゅう だか ら』

 軋るように絞り出された、その一言以外には、少しの嗚咽も、慟哭もなかった。

 生まれたばかりの幼い竜は、ただただ涙を零して悲しみに暮れている。やがて、その身体が縮み始めた。溶けるガラスのように、形を変えてゆく。

 ほんの瞬きの間の後、広い檻の中に蹲っていたのは、小柄な身の丈をも越す長い白金の髪に埋もれたこどもだった。竜でない、人の子。

 痩せこけて筋の浮いた、腕や踵の青白さが痛々しい。人の形にも姿を変えることのできる竜を戒める枷は、刻み込まれた魔術によって、対象に応じた大きさを取る。今にも折れそうな細枝じみたこどもの左足に残ったままの枷は、こちらの方が悪徳をなしているかのような罪悪感を抱かせた。

 大きく息を吐いて、すぐ傍に立ち尽くしていた騎士に顔を向ける。

「檻と枷の鍵を。後の責任は全て俺が取る」

 短く告げると、騎士は戸惑った顔をしないではなかったものの、大人しく指示に従った。何人かの手を経由して手渡された、二つの鍵を手に握り、制服の上着を脱ぎながら檻の錠前を開ける。

 上着を腕にかけ、いよいよ内部に踏み込もうとすれば、「ローレンツ卿」と背後に歩み寄る気配。

「お供致します」

「結構だ、厚意だけ受け取っておく。無駄に警戒させたくない」

 振り向かずに答え、更に足を進める。

「ラド」

 声に出して、名前を呼ぶ。波打つ薄汚れた白金の合間から、あの青に金にと輝く眼が見上げてきた。涙に濡れた、輝石とも貴石とも見紛う色彩。

 腕に掛けた上着を小さな背を覆うようにかぶせながら、骨と皮だけの足にかけられた枷を外す。すると、ずるりと這うように身体を起こし、こどもは手を伸ばしてきた。枯れ木のような細腕で抱き上げろとねだる仕草が、いやに感傷を刺激して参る。

 一つ息を吐いて、着せ掛けた上着ごと両腕で抱え上げた。細い腕が首に巻き付き、痩せた頬が押し付けられる。濡れた感触がした。

 父親の証言が確かならば、ラドはこれまで人型を取ったことがなかった。それは単純にその方法が分からないでいたからであろうし、また、衣服が与えられなかったからでもあるのだろう。……或いは、その逆か。衣服さえ与えられなかったことで、このこどもは人の姿を取るということ自体を思いつかなかったのかもしれない。

 竜にとっては、鱗が人間でいう衣服に近しい感覚であるらしい。だが、竜の姿から人間に変じたところで、鱗は衣服へと変化はしない。竜は人間へと姿を変えることができるが、正しくは「存在の切り替え」であるのだという。肉体そのものが変動するのではなく、コインの表裏を返すように、別のものが出現する。それゆえに、一度纏った衣装は竜の姿に戻ったとて失われることはない。だが、それもあくまでも衣服を得、身に着けていての話だ。

 最低限の権利さえも与えられず、決して己に好意的とは言えない父親を守って、このこどもは一年近くの時を生きてきた。それはどれほどまでに、過酷なことであったか。

 首筋に押し付けられる温度を感じながら、踵を返す。今が初夏を迎えたばかりの季節で良かった。これが夏の盛りや厳冬の時分であれば、さぞ悲惨なことになったに違いない。

「女性隊員で、手の空いているものはいるか」

 檻から出ながら言うも、周囲から返ってくるのは「何故です?」という疑問の声ばかり。……何だ、気付いていないのか? 竜の姿からでは読み取れなかったのか。

「このちびすけを洗って、服を着せてやってくれ。竜の子とて、人の姿を取れば童女だ。さすがに、男手でそれをするのは躊躇われる」

 そう告げると、居並ぶ騎士達が、ぎょっと目を見開かせた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る