第11話 ガチコンいわす作戦会議 2
人が何のために頑張るのかなんてそれぞれだから、自分の為ではない、というのがとても勇者らしいといえば勇者らしい。
なるほど、勇者の職を
「いや~……でも……うーん……。やっぱり理由があるからって他人を犠牲にするのはおかしいよなあ?」
「はい、まあそうなんですよね。けど、何を一番優先させるかっていうのも、人それぞれですし」
「でもそれだけなら、他の人間を犠牲にする必要性はなくないか? ……それに、なんかやり方が巧妙だし」
僕は、ナナノの両親が死んだときのことを考えていてそう思った。
「え?」
「一回目は、ナナノの両親のレベルがいくつだったかは知らないけど、レベル50のダンジョンに潜ったんだろ?」
「はい、そう……父と母は言ってました」
「同じダンジョンに潜るなら、そうそう死にはしないんだ。一回目で大体の敵の傾向は分かるわけで、ダンジョンで死ぬのは大体初めて潜る場所が多い。けど、それはどうやらトーヤの力もあって難なくクリアした」
「そのはず……です……」
「トーヤが無茶な方法でレベルを上げてると仮定したら、50のダンジョンに潜ったって、トーヤにはうまみがないはずじゃないか。二回目以降に潜ったダンジョンは、本当に同じダンジョンだったのか……?」
「ホンマやねえ。ええでええで! 名推理!!」
「僕らの知らないことが、まだあるんじゃないかと思うんだけど、どうだろう」
二人とも、黙ってしまった。何か僕がおかしいことを言っただろうか?
「確かに、そうかもしれません」
「彼を知り己を知れば、百戦
「それいい言葉だね。それを言ってたのはオーサカの人?」
「うーん……中国やったと思うなあ」
「チュウゴク?」
また知らない地名が出てきた。エミがどういう経緯でここにいるか全く知らないナナノも首を
今度、時間がある時にエミの国のことも教えてもらいたいと思う。エミが知っていて僕が知らないことを知りたい。
「あの、わたし……そういうの探ってくれる人を知っているので、その人に頼みませんか? お金はかかりますけど、私のことも気味悪がったりしない、信頼できるモータル族です。それに、次いつ彼らが潜るのとかも、調べてもらうのがいいと思うんです」
「君の街だし、ナナノの知ってる人に頼むのが一番いいかもね。でも、トーヤの修道院って、この街なの?」
「そうです。教会の場所から少し離れたところにあります」
「よくまあ、自分の生まれ育った街で、そんな悪い噂が出るようなことできるなあ?」
確かに。自分が育った修道院がある街を拠点にしていて、自分の悪い噂を知らないということもないだろう。その噂なんかどうでもいいほどの、なにか目的があるのか……?
「じゃあ、その人のところに行って頼もうか。そっちは急ぎだから先に行って、その後三人でパーティ申請に教会に行きたいんだけど………ん? あーっ!!」
「ひゃっ! なに!?」
「トーヤのパーティは、多分最低二週間は潜らない」
「「えっ!?」」
「確か、勇者間のパーティ移動の場合は脱退申請を出してから書類上の変更に最短でも一週間はかかるはずだ。本来の手順を踏むならね。他のパーティに入ってないエミとナナノを追加で申請するのはすぐだけど…。あと、脱退書類は僕が持ってる」
潜るのは四人パーティまでだが、控えのメンバーは特に制限はされていないので、パーティによっては、潜るダンジョンごとにメンバーを変えているという話も聞いたことがある。贅沢な話だ。
「まあでも、脱退書類を提出されていなくても、二週間を超えると新しく加入したパーティの方に正式に移行するんだけど」
「もっとはよ思い出してよ!」
エミが湯気を出しながら怒るのも、もっともだった。
「最初はどうやら、新しいパーティメンバーに気を緩めさせるためか、無理な場所には行かないみたいですし」
「あの三人はレベリングもやりたいし、スキルも欲しがるだろうからね。あと焦ってるのはトーヤだけで、三人は強くなってる自分たちを試したいっていうのが大きいと思う。二週間は最短で、恐らく一回目はセーフと考えるなら、二週間と四日ってところか」
「二週間ちょいかぁ……。ん? こっちの世界の一週間って何日?」
「七日だよ」
「あ、それはこっちも同じなんやねえ」
長いような、短いような…。
ナナノは、「こっちの世界?」と呟いた。
「今日頼む探偵が持ってくる情報によっては、もう少し伸びる可能性もあるだろうけどね」
「はーい! 先生!」
エミがなぜか元気よく手を挙げる。誰が先生だ。
「その間に、どこでもええからダンジョンって行って戻ってこれる?」
「それは、大丈夫だと思うよ。僕らも探偵の情報待ちをしないといけないし。とりあえずはレベル5位が適正だけど……。三人しかメンバーがいないしね」
「ユウ君とテン君がおって、そのレベル帯じゃないとあかん?」
「僕をパーティリーダーと認めてくれるならね。いくらテン君が強くても、二人はレベルが1だから、僕は絶対にパーティには無理をさせない。これは何を言われても譲らない」
エミはにっこりと嬉しそうに笑った。
「うん、せやね! じゃあレベル5のダンジョンでええわ! 頑張っていくと決めたからには、他の飴ちゃんのこともある程度知っておきたいやん?」
「ああ、そうか……そうだね」
今度はおずおずとナナノが手を挙げた。
「あの……チュウゴクとか、こっちの世界とか他の飴ちゃんとかって、どういうことですか?」
「あ、えと……」
僕とエミは、エミがどうやってここに来たのか、なぜノルカヒョウを連れているのか、なぜ飴ちゃんを出せるのかなどなどをナナノに説明して、情報のすり合わせを行った。
ナナノはこくこく頷きながら、終始驚いていた。
「ええっ!? 不思議な言葉を使うと思ってましたけど、エミさん異世界の人なんですか!?」
「うん、まあそうやね」
「び……びっくりしました」
「え、顔見えへんから分からんわ、ほんまにびっくりした? 顔見せて? どんな顔して驚いてるの? パンツ水玉?」
「あっ、や、……エ、エミさん……ちょっと、あのっ……! な、なんでパンツの話?!」
げへげへ言いながら無理やり彼女の前髪を上げようとするエミ。美少女がげへげへ笑うのもどうかと思うし、さりげなくセクハラするのはやめた方がいいと思う。僕がナナノのパンツを見た時は怒ったくせに。
可愛い女の子同士の絡みを微笑ましく見ていたいが、僕らに残された期間は二週間、動き出すならもうすぐにでも動き出さないと。
「とりあえず、その探偵のところに行こう。お金はまあまあ持ってるし、僕の手持ちでなんとかなればいいんだけど……」
「あっ、わたしのお金も使って下さい」
「いやいいよ。もし足りなかったらお願いするかもだけどね」
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