ハムスターと死神

西田 正歩

第1話

僕のご主人様が亡くなったのは、中学生一年の時、勉強机の上であった。

そこに死神が現れた。死神は、ご主人様の魂を持って、あの世に行こうとしている。


「待ってください」


「なんだ、ハムスターがわしに用かな?」


「はい、もしよければなんですが、私はかねがね人間になりとう思っていました。ですから、もし、可能ならそのご主人の体を私に頂けないかと?」


「何?主人の体に入って自分が後の人生を生きていこうと言うのかね?」


「そうでございます。彼の短すぎた命を私が代わりに受け継いで行きたいのです。ご主人の親も悲しませることもありません。」


死神は、ご主人様の方を見つめると、死神に頭を下げるのであった。それから私も頭を下げた。


「よかろう。お前の願い叶えてやる。」


─────────パチィーン────────


死神が指を鳴らすと、いつの間にか人間の姿に変わっていた。

死神にいわれたのは、彼の今までの生きた記憶は脳に蓄積されているので、何かに分からないようなことはなかった。

普通に、手を動かし・二足歩行ができ・ペン・箸など様々な事ができる。

親にも普通に会話ができて本当に楽しかった。

その後は、学校では修学旅行や運動会や文化祭様々なことをした。

夏祭りに行ったり、バレンタインデーにチョコ貰って恋したり、中学・高校に行き、就職して、最愛の人を見つけて結婚をした。

子供ができた娘だ。もし、ハムスターの顔で産まれたらどうしようと思ったが、普通に人間の顔であった。

学校にやるために仕事をがんばり、大学の進学では喧嘩したりもした。

付き合ってる人を行きなり紹介されたのも、もめた。

仕事を娘も始めた。旦那の給料では遣り繰り出来ないからだ。

その後、孫ができて、私はお爺ちゃんになってしまった。

娘が離婚をしたと言ったのは、孫が高校の頃であった。

私たちと住み始めた私は、ある日倒れた。

医者の見解では、もう長く無いとの事だ。

私が、ベッドに座っていたときに死神が来た。


「お迎えに参りました。」


「おやおや、いつぞやのハムスター君ではないか。」


「ハハハ、時々自分がハムスターであったことすら忘れてきました。」


「あなたは、後三十分ほどで、天に召されます。もし、何かしらの願いがあるのであれば、どんな願いも叶えることが出来ます。君は何か願いがあるかな???」


「死神さん、何でも願いが叶うのかい」


「寿命を操ったり、人を殺したり以外なら・・・・」


「なら、ハムスターに戻してくれないか?」


「はい?ハムスターにですか?」


「そうです、私はとてもいい人生でした。しかしながら、私は彼らに見送られる彼ではありません

偽者なんです。ですから(本物)である私に戻り、死にたいんです。ダメですか?」


「いいえ、それが望みならあなたをハムスターに変えましょう。」


─────────パチィーン─────────


私は彼の布団の上にいた。今まで自分の姿であった顔が、目の前にあるのが不気味ではあった。

ご主人様は、目を薄く開いて僕の方を見つめていた。

私は、ニッコリ笑ったご主人様のを見つめて、布団に被さった足と手の間に行き、ゆっくり眠るのであった。

今だ暖かい、ご主人様の手の温もりを感じながら・・・・・・・・



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ハムスターと死神 西田 正歩 @hotarunohaka

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