第15話 ゴブリンと銀髪の少女
「ノア様、大変可愛らしゅうございます」
「……そう」
カーテンが、銀髪の少女の姿をもったいつけるように隠してしまう。
美と可憐さの極みを、この星が祝福しているかのように、さぁっと風が吹き込みレースのカーテンをなびかせた。
そしてルノの視線に晒されたのは、言うまでも無く彼女自作のドレスとウィッグを身につけさせられたノアである。
付け加えると、この風もルノの演出だ。決して星の祝福などではない。
「やばい鼻血でそう」
「私はお着替えをさせて頂いているときに出ました」
「それは正しい反応です」
鷹揚にルノが言うと、チコも畏まった感じで、
「恐れ入ります」
とお辞儀をする。
チコがルノの側まで来て、改めて二人はノアを見る。
「ほら、顔上げよ?」
ルノが言うと、ノアはスカートを下へ押し付けるようにして、ぎゅっと握りしめる。
「イヤ……」
言いながらノアは、内股気味に脚を擦り合わせ、身をよじるようにして二つの獣視から逃れたがる様が、余計に二匹を興奮させた。
「なんだか、ぞくぞくしますね……」
「うん……、これはやばい……。ノアは気付いてないけど、この反抗的な態度がもう見た目と相まってやばすぎる」
二人は小声で感想を言い合う。
「なに……、はっきり言って」
ちらっと、上目遣いで二人のことを窺うノア。
今のノアの目は、ルノのオリジナル光魔法により紫色の光彩を放っている。
この蠱惑的な目の色に加え、加虐心を煽る上目遣いという凶悪な仕草が、二匹の獣に火を点けた。
「襲いたい」
「お供させていただきます」
「やめろ!?」
演技も忘れ、素で拒絶の叫びをノアがあげる。
⇔
僕は、結局、ルノの作ったドレスを着るはめになった。
というのも、天井に張り付けられていたチコの
どれだけ悔いても、時間は巻き戻せない。
※
僕の腕に抱かれたまま、羞恥に身体を震えさせていたチコのことは、今でも鮮明に思い出せてしまう。それほど僕にとってもショッキングな事件だった。
汚れた絨毯や衣服を魔法で洗って乾かしても、チコはせめて衣類だけは気になるからと言って、入浴ついでに洗濯しにいった。
ルノも後を追いかけたので、いろいろとフォローをしていたのだろう。
まぁ、フォローだけに留まらなかったことは、すぐに理解したけども。
「ノア様……私はもう……お嫁に行けない身体にされてしまいました」
戻ってきた彼女の第一声がこれである。
「使用人の分際で、とお叱りを受けることは覚悟の上、申し上げます」
僕はその言葉の先を予想しながら、覚悟を決める。
それ相応のことは聞くつもりだ。
僕はそれだけのことをチコにしてしまったのだから。
「責任、取って下さいますか? 私をお嫁に貰っていただきたいのです」
え、と硬直した僕を見たチコは、口の端をわずかだけ持ち上げた。
「というのは半分だけ冗談です」
「は、半分……」
「ふふ。これ以上はルノ様に申し訳が無いので自重します。さて、お嫁の代案がございます」
「はい……。まぁ想像はできてるけどね……」
それは助かります、とチコは微笑む。
「私とルノ様が望んだときに、ノア様にはこちらが指定した服を着て頂きたく存じます。その際、服を着るお手伝いを私にさせて頂ければと」
「ちょっ! 一回だけじゃないの!? それになんでルノまで!?」
「ルノ様のことは私の独断で決めさせて頂きましたので、ご了承下さい。それに、たかだか一回程度で、一生消えることの無い心の傷が癒されるとでも?」
伏し目がちに視線を逸らして言うのはずるい。
そんなふうに言われてはぐうの音もでないじゃないか。
ルノの演技指導臭がプンプンとするけども……。
だから僕には、俯きながら、首肯するしか道は無かった。
顔を上げた僕の目に飛び込んできたのは、ルノの勝ち誇った笑みだった。
※
「もう着替えてもいいだろ……」
「何言ってんの、まだだめだよ。今から自分じゃない何かになる練習をするんだから」
「もう十分自分じゃないって」
「ううん、だめだめ。ガワが替わっただけで中身は何も変わってない。これじゃ女優の先輩として世に送り出せない」
「送り出すな。そもそも僕の不安を解消するためにやってくれたことなんだろう? これじゃむしろ辱めをうけて新たなトラウマが生まれるだけだって」
ふっ、と冷めた笑みを張り付けたルノが、
「できないんだ?」
と煽ってくる。
「出来ないっていうか、やりたくない」
僕は言い返す。
「たかだか口調を変えてみようって提案だったんだけどなぁ」
うん? と疑問に思った僕は、「口調?」と尋ねる。
「そう。口調。それだけで別人みたいになれた気がするよ。あんなに吐くほどのことがあったんだもん。お洋服変えて、口調も変えてさ、心機一転で別の自分になって気晴らししてみようよ」
「ノア様。いやいやドレスを着ているだけでは、楽しくもございませんでしょう。どうせなら、別人を演じてみるのも一興かと」
詭弁だと言いたくても、負い目がある手前強く出られず、僕は結局二人の提案に首を縦に振らざるを得なかった。
「他の人に話かけられたりとか、これからもあるかもだし、でも、会話から身バレはしたくないだろうから、簡単な方法があります」
「ちょっとまて。他の人ってまさか、この格好のまま外へ出させるつもりなのか?」
何を言ってんのあたりまえじゃん。という風にルノは小首を傾げて僕を見る。
「だから、〝片言〟しか喋らないキャラでいこうと思います。試しにノア、私に何か話題ふってみて」
「今日はもう終わりでいいだろ……」
ダメ元で言うと、ルノはすっと表情を消して、
「だめ」
と一言だけ呟く。
「それが、片言キャラなのか?」
「そう」
なるほど。これなら簡単そうだ。
表情は無表情固定で、何を言われても短く返せば良いだけか。
無視しても良いだろうし。
「これなら僕にもできるかも」
「よかった」
※
僕は羞恥に耐えながら、二人の指示通り様々なポーズを取ったり、台詞を言わされたりしていた。
けれどもう、限界だった。
僕は、もう終ろう? と言う意思を込めて、ちらりと見上げた。
その時、二人の目が据わった。
「襲いたい」
「お供させていただきます」
「やめろ!?」
小鹿を前にした虎がご馳走に襲いかかるかのごとく、ルノとチコが僕へ迫ってきたので、思わず素で拒絶してしまった。
「キャラが崩れてるよ。ほら、言い直して」
「んな余裕あるかぁ!」
背後を取ろうとするルノを躱しながら僕は扉へ向かう。
けれど、行動を読んでいたのだろう。チコが先回りして立ちふさがった。
「くそう……、反転すれば二人相手でも逃げられるだろうけど、脱ぎたくない……」
ルノと考えた魔力総量増加メニューのおかげで、今は反転魔法による性別転換は九分ほど維持ができる。
時間は十分あるのだ。けれど、変身するためには裸にならなければならないという最大の欠点があり、この場でそんなことをするのは貞操の危機以外のなんでもない。
「脱ぐなんてもったいない。ドレス着たままがいいんじゃないかっ!」
「その通りでございます。ですが、もしお脱ぎになるのならお手伝い致しますし、またお召しになられる際にもお手伝いさせて頂きますので」
脱ぐのは貞操の危機。
そんな風に思っていた事が僕にもありました。
こいつらやばい。
僕はこの部屋からの脱出に、全身全霊をかけることを、二人の反応を見て誓った。
「ああああっ!」
拳を引き、チコへ突っ込みながら、後方のルノへ魔力糸で牽制する。
チコは、僕の攻撃を見切ろうと目を見開く。
背後のルノもおそらく同じだろう。
瞬時に魔力を練り、放出。
光魔法、《
「わっ」
「くっ」
よし!
チコが腕で目を庇った。ルノも同様だろう。
僕はすぐさま身体を翻し、開け放たれていた窓から庭へ飛び降りる。
ぶわっ、と。今までに感じたことの無い空気の抵抗。
「うああ、スカートだったあ! だからこんなの穿きたくないんだ!」
脚を閉じ、手で必死に捲れ上がろうとするスカートを抑え付けながらなんとか着地する。
僕は脇目も振らず、門をくぐって駆けた。
※
「見ない顔だな嬢ちゃん。親御さんとははぐれたのかい?」
「あらー、えらいべっぴんさんじゃないかい。領主様んところのルノルーシュ様やノアール様といい勝負だよ」
や、そのノアールなんですけどね……。
人混みに紛れれば逃げやすいかと、村へ来たのは失敗だった。
まず、そこまでの人混みなんてなかったことと、何より僕の格好が、質素な村人たちと正反対で浮きまくっている。
「ありがと」
〝片言〟で返し、僕は村を出ようと駆けしたその時。
「いでっ」
家の角から出て来た少年とぶつかってしまう。
って、アランだ。
アランは葬儀の時に、孤児院の下の子たちや僕らがミカ姉と呼ぶ赤髪の少女に抱かれていた赤ん坊だ。
僕らより数日遅れで生まれた、同い年の少年である。
アランはぶつかった相手、すなわち僕を気遣うように見てきた。
「大丈夫か?」
「平気」
咄嗟のことだというのに、片言演技ができたことが、自分でも少しおかしかった。その心情が顔に出てしまったのだろうか。アランが「んん?」と首を捻りながら僕を覗き込んでくる。
「な、なに?」
僕は尋ねる。
けれど、アランは何も答えないまま僕を一回りし、ひとしきり観察すると、
「お前、ノアか?」
と言った。
「違う」
「うっそだー」
どうしてバレた。
髪色も違えば、目の色だって違う。
なにより、普段の僕なら絶対着ないドレスなんてものを着させられているというのに。
「じゃあお前、名前なんてーの?」
な、名前。
名前なんて言うの?
考えてないよ!
というか、気分転換の変装に、そんな設定の必要性すら思いつかなかった。
かといって、ノアールと名乗るのは、この格好が恥ずかしすぎて嫌だ。
今考えよう。
僕の返事を待つアランが、「名前ねーの?」とか、じれてきている。
銀髪だし、母国語で〝銀〟とか。捻りがなさ過ぎるかな。
じゃあ、プラータ、ジルヴァラ……、長い。
あ、じゃあ。
「イン」
咄嗟に名乗ったのは、母国語の銀を別の国の言葉で発音したものだった。
「名前が?」
「そう」
僕は頷く。
「本当にノアじゃねぇの?」
僕は頷く。
まじでノアだと思われたくない。
僕がこんなドレスを着ているとか思われたくない……。
焦っていると、不意にアランの頭にゲンコツが落ちた。
「いってぇ!」
「こらアラン! ノア様を呼び捨てにしちゃだめだって何度言えば! ……て、あら? ノア様と違うじゃない」
遅れて歩いていたであろうミカ姉が、僕を見て不思議そうな顔をする。
「見かけない顔ね、あなた」
「だーかーらー、こいつはインだけどノアなんだって!」
アランの勘の良さは、その剣の腕前からも良く知ってはいたのだけど、ここまでとは。
アランに父さんが剣の稽古をつけることがたまにあるのだけど、父さんも、アランの才能には舌を巻き「この子は剣の天才だ」と評していた。
「〝様〟 つける!」
ごちん! ともう一発。
天才も姉には頭があがらないようだった。
「それに、ノア様なら、これまでのやり取りで必ず何かツッコミを入れるでしょ? ほら、とっとと買い物して帰るよ。晩ご飯抜きになってもいいわけ?」
「確かにノアなら何か言うよなぁ。って、飯抜きは死ぬぅ!」
走り出したアランが、ついと僕を振り返り「またな!」と手を上げた。
「うちの馬鹿がごめんね。あなた、この村の子じゃないわよね。村の人は皆親切で悪い人はいないけど、早くご両親のところへ戻りなさいね。宿屋の場所はわかる?」
まだまだ背の低い僕の目線に合わせるよう、かがんだミカ姉が、穏やかな笑顔で僕を見つめてくる。
それは、孤児院の子供たちや僕らに向ける、いつもの、人を安心させる顔だった。
というか、僕、迷子だと思われてる。
「わかる」
「そっか。じゃあ、お姉さんは行くね」
それだけ言うと、ミカ姉は僕に手を振り、すぐにアランの後を追いかけた。
※
結局僕は森へ逃げ込んだ。
母さんの墓のある丘の、西側の森だ。
この森は北側へなだらかな斜面となっている、山の一部だ。
嫌々着させられたとはいえ、ルノが僕を思って作ってくれたドレスで、森へ逃げれば傷つけてしまうと思い、最初は村へ行ったのだけど。
「背に腹は替えられないって、こういうことか……」
枝にドレスを引っかけないように注意しながら斜面を下って行く。
そういえば、ここまで奥へ来たことはなかった。
確か、父さんが白い鹿を見たとかって森とこの山は繋がってるんだっけ。
「あ、獣の歩いた跡かな」
地面を見ると、背の高い草が折れていたり、所々木の実が転がっていた。
ほとぼりが冷めるまで暇だし、おいかけてみるか。
なんとなく追跡に興が乗り、僕は気分良く山森を奥へ奥へと下って行く。
すると、ちょっとした広場に出た。
僕の年齢の子供でも頑張れば登ることの出来る程度の岩が、ぽつんと広場の真ん中らへんにある。
岩の側には、腹を矢で射貫かれた雉が落ちていた。
僕に付けられていると思った誰かが、雉をここに捨てて逃げたのだろうか
僕は岩の上に立ち、周囲を見る。
「あれ、痕跡はこの岩のとこで終ってる……?」
雉を仕留めたであろう第三者の痕跡は、岩を境にぱたりと消えてしまっていた。
何かを見逃しているかもしれない。
そう考えた僕は、魔力も使って周辺を探る。
すると、やはり違和感が。
「岩?」
違和感は、足元の岩からだった。
魔力で岩を包んでみて確信した。
この岩には、魔術がかけられている。
屋敷の裏山にある広場に、魔術のかけられた岩。
屋敷はこの地の領主のものなので、こんな裏山には誰も訪れないだろう。
にも関わらず、人為的なものがあることの違和感。
まずいな。
好奇心が抑えられない。
魔術に関してはチコに習ったり、ルノと本を読んで勉強したりして多少の知識は持っている。
最初に、魔術の種類を推測することから始めるのだ。
おそらくこれは、隠蔽系の魔術だろう。
隠蔽の魔術の種類を特定する方法も学んだ。
まず、この岩にどの属性の魔術がかけられているのかを調べればいい。
属性は、僕やルノの場合触れればだいたいが理解できる。
ルノはもっと感覚が鋭いようで、見ただけでわかるようだけど。
属性がわかれば、同じ属性の精霊に魔力を渡し、その魔術を乗っ取るのだ。ただし、乗っ取ることが出来るのは、術者が対象魔術を完璧に把握していなければならない。この把握の方法は人それぞれで、数学の問題を解く感覚に近いと僕は感じていた。
「とはいえ僕は精霊に魔力を渡せないから、自分で放出するしかないんだけど、でも……反転魔法なら一発で術式を裏返すことができないかな」
試したことがないから、試してみたくなる。
念のため、岩から降り、距離を取ってから手をかざしたそのとき。
『やめてくれェ。ワタシのお家の結界、壊れるの困ル!』
念話。
『誰?』
僕は訊ねる。
『ヴァスカルカ・ホーなのだ。怪しい者じゃあないのだヨ。領主ネルザールに請われてここに住んでいるのだヨ』
『え、父さん?』
少しの沈黙。
『お前、ルノルーシュかノアールか?』
『ノアール・カーライルが僕の名前だ』
『子供が嘘は良くないのだヨ。ノアールは黒髪』
何ものかが結界内に侵入したことが分るだけではなく、向こうから僕が見えているのか。
『ああ、これはちょっとした理由があって……銀髪の下に地毛があるんだ。取るよ』
僕は銀髪のウィッグを取る。
ウィッグを被るために、黒髪が纏められているので、それを解くのも面倒だし、かといってこのまま変な髪型でいるのも嫌だ。
『髪色確認できたなら、これ被っておきたいんだけど』
『おー、おー! カツラかそれはぁ。すごい良い出来でわからなかったヨ! 良いヨ被って被って。それよりも、会いたかったヨ、ノアール! すぐ結界をとくからネ。岩から離れてネ。向こうにある大きな一本杉あたりまで、離れてヨ!』
一本杉、あれか。
十メートルは向こうだけど、まぁ言うことをきいておこう。
『離れた』
『ほいなら岩の方を見てるといいヨ。面白いことが起こるヨ!』
ほんの僅か、空気が歪んだかとおもった直後には、岩の後ろに大きな平屋の木造の建物が出現していた。
この辺りの木を使って建てたのだろうか。
手入れの行き届いたログハウス風の家だ。
先程の岩は、玄関の脇にある。
なるほど。
岩の上から痕跡探しで回りを見た時、何も見つからなかったのは、認識阻害系の魔術結界の中に居たからだったのだろう。
きっとあのまま、今現在家がある場所へ行こうとしても、自分では気が付かないまま家を避けて歩かされるということか。
そんなことを考えていると、玄関が開いた。
「やぁやぁ、ようこそノアール。もう近づいても大丈夫だヨ」
言いながら手招きしていたのは、奇妙な格好をした背の低い人物だった。
どう奇妙かというと、その理由は、顔を覆う仮面に集約されている。
たしか、
「あっ、これはごめんネごめんネ。マスク気味悪いカ。今取るヨ」
「あ、別にそういう訳じゃ」
と言う僕を他所に、ヴァスカルカと名乗った人物は仮面を取り去った。
「え」
「おやや? ノアールはゴブリンを見たことが無いカ?」
「ゴブリン……」
呟きながら、僕は頷く。
「見たことない」
青白い肌に尖った耳。
長い髪は幾本もの三つ編みにして上で束ねてある。
額には小さなコブのような角のが二つ。
身長も僕より少し高いくらいで、人族の成人と比べるまでもなく低い。
けれど顔の造形はどことなく愛嬌があり、人懐っこい印象をうけた。
「そうかそうカ。人間の分類では《蛮人族》とかいう不愉快な分類にされちゃったゴブリン、ホー族の《錬金術師》、ヴァスカルカ・ホーとはワタシのことヨ」
ルノと話した前世のゲームとか漫画、小説などの創作ファンタジーの内容に、ゴブリンという単語は何度も出て来たので覚えている。
曰く、初心者が狩る敵。
曰く、人間の敵。
けれど、ヴァスカルカは会話も出来るし、敵意など一欠片も見せてこない。それどころか、父さんに請われてここに住んでいると言っていた。
ああもう、興味が尽きないな。
「ご丁寧にどうもありがとうございます。改めて、僕はノアール・カーライル。カーライル家の次女です。故合ってこのような格好に〝変装〟しております」
スカートを抓み、格好に相応しいお辞儀をとる。
父さんの客人ぽいから、なるべく非礼はしたくない。
「素晴らしいヨ、ノアールは可愛いし、将来どんな男もメロメロの美人さんになるヨ!」
「いえ、買いかぶりすぎです」
「むふふん。それよりもノアール。もっと砕けたしゃべり方にしようヨ。固っ苦しいのは苦手だヨ」
ヴァスカルカが気心の知れた相手にするみたいに、僕の背中をぱんぱんと叩く。
「あ、うん。わかった。じゃあ普段通りこんなかんじで」
「うん、いいヨいいヨ。それじゃ、お家入っておくれヨ。お茶くらい出すヨ」
ゴブリンの煎れてくれるお茶! それは興味がある。
「ありがとう、お邪魔します」
置いてあった雉を手に取ったヴァスカルカの後に続き、僕はゴブリンの住居に入った。
~to be continued~
********************
るの「銀髪紫眼は至高」
のあ「ぱっとみ白髪じゃん」
るの「ちょっとお黙りあそばせ!? 銀髪と
のあ「あはい」
るの「反応うっす。んでね、せっかくの銀髪じゃん? 目の色に悩みすぎてご飯も喉通らないくらい考えに考えたのね。激痩せするレベル」
のあ「胸だけ痩せ――」
るの「うおあああ!」
のあ「やかましいな……。この調子だとメインヒロインが僕になったりして」
るの「はっ! あ、でもさでもさ、私が男の子役やれば解決じゃない?」
のあ「ヘンタイの彼女役なんてごめんです」
るの「ひどい」
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