第48話 束の間の女子会
今頃、部長は上階で何をしているのか。
その考えは、私の意識には既に消え去っていた。恐らく江も真希も同じだろう。
今は目の前にいる敵のことに集中力を欠かさない。
私たちは1人で徘徊していたテロリストの仲間らしき人物を撃退するため、多少の戦闘を経て、どうにか拘束するに至った。
たまたま男が強力な紐とテープを持っていたので、私が銃を向けて抵抗できなくしている内に江と真希でグルグル巻きにしてもらった。
「ふぅ……思ったより抵抗しなくて安心しましたよ」
江が息を整えながら、犯人に挑発めいた言葉を投げ掛ける。
「あれ?江ちゃん、結構疲れてるね?あんなに格闘家みたいな動きしてたのに」
「ええ、まぁ……テクニックと身軽さだけで戦うので、特別筋力があるわけではありませんから」
事実、彼女は見た目ではか弱い女の子だ。隙を突いた襲撃とはいえ、とても武装した成人男性を制圧できるようには見えない。
江のギャップに心の中で感嘆しつつ、私は拳銃をスカートのポケットに差し込む。流石に大きすぎて少しはみ出しているが、走ったくらいでこぼれ落ちる気配は無いので、今は特に気にしない。
「それじゃ、話をしましょうか……犯人のお仲間さん?」
座り込んで、腕と体を密着させられた状態になりまるで何もできない男に、私は目線を合わせようと腰を下ろすと、
「……あの、聴こえてます?」
そこには、目に光が一切無い、干からびたような男がいた。いた、って言うか、まぁずっと座ってたんだけど。
まさか……
「あの凄まじい江の攻撃に意気消沈していたとは……」
「あのー美咲さん?何か勘違いしているようなので訂正させて欲しいのですが」
「ん?」
「私のそれも割と威力あったと思いますけど、どっちかと言えばその後の美咲さんの方が原因じゃないですかね」
「ごめん美咲さん、私も江ちゃんに賛成……」
2人が呆れたように私と犯人を見る。
江の後にしたことと言えば、頭に銃を突きつけて……
「あ、なるほど」
どうやら否定の余地は無いらしい。
「でも、本当に無意識のうちにやってたんだよね……銃が目の前に落ちた途端に無我夢中になっちゃって」
すると江が目に見えるため息を
「……やっぱ部長にそっくりですね」
……。
「どういう意味」
「想像に任せます」
こ、コイツ……!
「2人とも、こんな時によくそんな話できるね……」
真希が珍しく正論ぶつけてきた。
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