第3章 烈日の記憶

第27話 決行前夜

 メッセージを送り終え、男はスマホをソファに投げた。2度のバウンドをした後、画面を下にして動かなくなる。

 唇に触れる煙草だけが、今の彼に感じられる全て。

 右手で煙草を口から外すと、濁った白の煙を追うように口内の煙を吐き出す。

「いよいよ明日か……」

 低くこもる声を残し、再び口に煙草を戻す。


 目の前の机に広がるのは、ビルの構成図。

 明日、武力で占拠する場所——記憶を蘇らせる舞台。

 図面の横に置いてある拳銃を右手で持つと、その重みにまだ不安を覚える。

「やっぱ、慣れねぇな……」


 弾はまだ入ってない。まだ、入ってない。

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