小話 ディーのつぶやき
ララちゃんとの旅が始まってもう何日経ったんだろうか。
こんな綺麗なお嬢さんとの旅だ、普通なら浮かれる。道中の間で恋心が芽生えたりなんてことも………ある訳が無い。
正直、早くスロウハート王国に帰りたい。
ララちゃんとの旅でドキドキはない。
別の意味でなら心臓の鼓動はえげつなく激しくなるけどさ。
この前も逃げた坊主を追う為に再度準備し直してミストリア王国を出た時だ。いきなり空から降ってきた巨大な白い竜が俺達に激突しそうになった。混乱の中で死を悟ったのに何の衝撃も無かった。恐る恐る咄嗟に閉じた目を開けると片手で迫ってきた白竜を受け止めているララちゃんの姿が。
乙女とはなんぞや、俺は何度も問いたくなる。
生物の頂点に位置するドラゴンを顔色一つ変えず受け止める人間なんてそれはもう人間なのか?
そして、そんなのに追われる坊主の不憫さたるや。
でも、俺には何も出来ないし、してやれない。
お嬢の命令は絶対。
あの坊主を探し出すまでこの指令は終わらない。
少年へと黙祷を捧げる。
貴重なドラゴンに一切の興味も無く、王国方面に捨てるように放り投げていく。そして何事もなかったかのように坊主の辿った道のりを進むララちゃん。
痕跡も何もないはずなのに第六感という名の本能でオルスタル帝国へと侵入した。
まだミストリアのどこかにいるのでは?
そう問いかけて見ると…。
「そんなわけ無いですよ。だって、帝都方面からコータくんの気配を感じます。私達は運命の鎖で結ばれてますので間違いありません。」
曇りなき眼ではっきりと告げた。
自信なんて可愛いもんじゃない盲信と断定だ。
少年に逃げ場なんてないのかもしれない。
俺は心の中で謝り続けた。
そして、帝都に到着。
結果から言うと、ララちゃんの言葉は正解していた。
坊主は帝都に訪れていた。
しかし、賞金首として本格的に色んな奴らから追われる形となっていた。
簡潔にまとめると帝国の姫様の旦那を攫ったらしい。
だが、あの少年が無闇に悪事を働くとは思えない。何らかの事情があるのだろう。わざわざ姫様本人でなく旦那を攫ったんだからな。
2つの国から追われる少年。
俺はその不遇さを神様にでも呪われているのではないかと思いました。
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