小話 変態は陰で見守るもの



どうもグリーストです。

厳剛にして堅牢な糞マゾ蜥蜴野郎こと岩竜さんです。


最近はめっきり我が女王様からのご寵愛が無くなってしまい少し寂しい気持ちで過ごしております。

あの黒炎竜との一件があってからあの素晴らしい私専用の地下謁見場も閉鎖されました。血の涙を流して止めに入りましたが叶いませんでした。

女王様いえイザベラ様は本格的に変わろうとしているようです。


「ヴァルたんに見合うだけの女性に変わるんだ!」


両手をギュッと握って意気込む姿が私の頭を踏み抜いていた頃を思うと残念なようで…でも古き友人としては微笑ましくも思えます。


私は下僕です。

女王様の側で支え見守りつつ、いつなじられても良いように控えるのみです。



そう思うこの頃、空からご主人様のご友人であり恋敵であるプリミス様がやってまいりました。


お土産と言わんばかりにこの卑しい私めに突っ込むような形でありがとうございます。

普通なら城が半壊しかねない威力の一撃を本当にありがとうございます。


ですが、ご主人様は突然の強烈な訪問に少し怒り気味です。


「こらプリミス、何の用だ!もう少しまともな挨拶は出来ないのか?」


イザベラ様の叱責もなんのその。

プリミス様は急に人型へと変わったと思えば辺りをキョロキョロと見渡す。


「あれ、あなたどこ?どこにいるの?」


「プリミス何を言っている?」


「ねぇ、私のヴァルたんを見なかった?さっき一緒に夕飯を食べていたら邪魔な人間に妨害されたの。」


人間?

あぁ、あの人畜無害そうな顔して結構容赦ない素晴らしい男の子のことですね。

また斬られたい。



「……ふむ、もうヴァルたん達はお前のところまで進んだのだな。」


あの人達ならありえる移動速度ですね。


「もう旦那様ったらまた愛する妻を残して浮気にでもいったのかしら?」


「プリミスお前…。」


この女相変わらず怖えです。

流石の私もこれには引きます。


イザベラ様も引き気味。でも、貴方も少し前は似たようなものでしたよ。


あ、久々に殴られちゃった。


「プリミスよく聞け。ヴァルたんはお前の旦那様でもなければ誰かのものでもない。」


「………何を言っているの?ヴァルたんは私のものよ。好きだからって嫉妬しているの?」


この殺伐とした雰囲気たまりません、もっとやれごほんごほん。

ですが、ご主人様は大きくため息を吐き子供に言い聞かすように優しく諭し始めた。


現状であの黒炎竜がお嬢様方に対してどう思っているか、今後の対応次第でどうなっていくか。


何時間も長い時間を掛けて生きる恐怖に語りかけていく。

途中で私がご用意したお茶にも口を付けることはなく続いた説得。


しかし、底冷え待ったなしのプリミス様には届かない。


「う、嘘よ!そんなの嘘だわ。ヴァルたんは私を愛しているし私も愛している。だから、それは嘘。嘘嘘嘘よウソよ嘘だウソウソウソウソ…。」


だから、怖いって。

自分に言い聞かせるようにブツブツと呟いたかと思えば急に顔を上げた怖い。


「ダッテワタシノナカデヴァルヲカンジルモノ。」


訳のわからんことを宣言して高さ何メートルもあるお城から飛び出た。

翼は無くともドラゴンだ死にはしない。


一連の光景に呆気に取られてたご主人様だが、はっと我に返りました。


「やばい、ヴァルたんの身が危ない!」


でしょうね。

ご主人様は私めに仕事を押し付けて頂き、プリミス様の暴走を止めるため後を追いかけていきました。



ありがとうございます。


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