いつもの神様



帝都に到着。

普段通りギルドカードを提示したら、驚かれて疑われてなんとか入れました。

もう避けられない事象だと思ってます。


ロアナさんとはこの入口でお別れ。

やっぱり終始緊張してしまったけど、久しぶりに感じるくらい良い人で良かった。

こういった出会いには感謝だね。

ロアナさんは城が見える大通りを真っ直ぐと馬車で進んで行った。



今日はこのまま宿屋に泊まろう。

明日、教会に行ったりクロウさんの現状とか探ってみよう。

もしあんな別れ方でも幸せになっているなら余計なお節介になる。しっかりと調べよう。



宿屋はロアナさんが勧めてくれたところに。

良かったら家に泊まる?と優しいロアナさんは言ってくれた。

けれど、新婚さんだろうから僕はお邪魔虫。

慎んでご遠慮致します。



さてと明日の神様に備えて今日はゆっくりと寝ましょう。

絶対に大変な目に遭うと思う。

起こりうる可能性を考慮しつつ睡魔に身を委ねていく。



次の日のおはようの朝、宿屋の一階に設置された食堂で簡単な朝食を済ませて教会へ。

事典に載っているマップを頼りに神様の所へ。


受付のシスターさんにお布施を渡してある部分がしっかりと割増しされた神様像の前で膝をつき祈る。





目を開けるといつもの真っ白な世界ではなく真っ暗闇。

何事!?

想定していた環境を超えたため動揺が脳を混乱させていく。

もしかして、ついに神様が闇墜ちとか悪魔とかになったとか。


「むー酷いですねー。神様は神様ですよ。」


何処からか聴こえた神様の声。


そして、全く気配のない正面からにゅっと腕が2本飛び出て来た。

正確には先に腕から出てきて付随するように神様本体も現れた。

思わず女の子みたいな悲鳴を上げてしまう。

暗闇から突然出現した腕に抵抗する暇なく、僕はそのまま神様に押し倒された。



僕の腹の上に跨り見下ろす神…変態さん。

指先をパチンと鳴らしていつの間にかベッドの上。

見たくなくても見えてしまう神様の上気した頬、瞳に映るハートマーク。

漢らしいくらい荒々しい息遣い。

誰が見ても分かる危険な現状。

この胸のドキドキは残念なことに恐怖からのもの。



「はぁはぁ、王ちゃんのお家ぶりですね。あの時は悲しいかな邪魔者がやってきてしまいましたー。でも、ここなら大丈夫です。いえいえ、初めては誰でも緊張します。コータさんは天井の染みでも数えててください。数え終わる頃には終わってます。まぁ、ここに天井は無いですけどね、げへへへへ。」


腕はしっかりと押さえつけられて動かない。

誰か助けて。


「うむ、任せるのじゃ。」


胸から返事が帰ってきた。


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