ロアナの事情



ロアナさんの親切心を無下にすることが出来ず、帝都までご同行させてもらっています。

馬車の中は僕と両隣にヴァルさんとチビうささん。

御者台にはロアナさんという形で座っている。


前に姫さん達と王都までの旅は対面するように座ったけど、これなら幾分か落ち着いていられる。

あの時は緊張と恐怖が入り混じっていたもんね。



あと、どうして護衛も付けずロアナさん一人で馬車移動しているか分かりました。

護衛とか必要ないくらい強いから。

出てくる魔物に全く怯える様子もなく眉間に的確に矢を射っている。

優しい微笑みを崩さないまま射る姿は少し怖かったです。


ちょっとロアナさんの腕前に驚愕していると、御者台から話し掛けてきた。


「コータくんは帝都で何か用事なの?」


ずっともじもじと挙動不審な僕に気を遣ってくれたのか何気ない会話を投げてくれる。


「ぼ、僕は帝都にいる友人に会いにい行こうと…。」


嘘ではない、出来れば救出も可能なら好ましい。


「ろ、ロアナしゃんは?」


「わたし?ふふ私はね、つい最近に結婚したの。それで元々住んでた場所の用事や片付けを終えたから、旦那の住んでいるお家に移り住むのよ。」


「そそうなんですか…。」


「なかなか結ばれるまで時間かかっちゃったけど、ようやく彼とずっとそばにいられるわ。ホントニウレシイワ。」


ん?

少し肌寒いなぁ、鳥肌が止まらない。


背中を向けたまま話し掛けてくれた優しい印象のロアナさん。

なのに、どうしても恐怖を少し感じてしまうのはどうしてだろう?

まだまだ自分の対人スキルが成長していないからだろうか。



全く改善されない症状に落ち込みつつも、長い旅の末オルスタル帝国の帝都へと到着。


事典によると、第31代目皇帝が支配し実力主義傾向らしい。そこらの貴族よりも立場関係なく騎士の方が偉ぶれると。でも、弱かったら馬鹿にされるみたい。

うわ、追記に神様から教会へ来てという内容の嘆願が記されてる。

全部は読めないけど100行以上続いていた。

最後に会ったのが、妖精さん達の里だからしばらく会っていない。

所々に涙の跡が付いてる………はぁ、行った方がいいよね。

無視したらしたでなんだか嫌な予感がするもん。



大きなため息を吐く僕に大丈夫?とロアナさんが声をかけてくれる。

ロアナさんから感じた恐怖は気のせいかも、だってこんなに優しい人だもの。


僕達は帝都の中へと入っていく。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る