優しいお姉さん
僕らは現在、帝都を目指して馬車に乗っています。
ヴァルさんの心をまた底にまで落とした山脈はあれから特別問題が起きることはなかった。
ひたすら気休めにしかならなくても慰めながら越えました。
終始落ち込んでいたけれど、「吾輩はドラゴンである、このぐらいで折れるほど弱くないのである!…でももう少し撫で撫でを所望する。」と自らを奮い立たせ復帰してくれた。
遠回りではなく近道で来たので、あとはこの道をひたすら歩いて行けば帝都に到着予定。
で、どうして馬車に乗っているかといいますと、それは山脈を抜けてから三日目。
キャンプセット用いていつもの野宿を終えて出発。
周りの景色を堪能しつつのんびりと歩み進めていると、後方からお馬さんのパカラパカラな音が聴こえてきた。
振り返ると馬車が一台走って来ている。
一台だけとは珍しい。
商人や貴族だったら、荷運び用にもう何台か用意したり、周りを護衛で固めてたりする。
ちょっと不思議に思いつつも、通行の邪魔になっては申し訳ないので左側へスーっと避けました。
そのままぼくの横を通り過ぎ去っていく、かと思ったら少し進んだ先で停止。
何だろう?
僕なにもしていないよね…。
ほんのちょこっと僕のビビり心が刺激される中、馬車の御者台から女の人が降りてきた。
薄ピンク色の少しウェーブのかかった長い髪が印象的。
初対面で顔は見れないけれど、僕らを見ている気がする。
あ、歩いて来た。
こ、こっちに向かって来てる。
魔物やドラゴンさんと出会った時より警戒。
より一層ビビりゲージが上昇する頃、その女性さんが声をかけてきた。
「ボク一人?ご家族の方とかいないの?」
ビクビクする僕に配慮するように優しく投げ掛けてくる。
返事を返さないのはまずい、懸命に震える唇を動かす。
「は、はい一人です。てて帝都まで旅をしてましゅ…。」
「そう、一人で凄いわね。」
「で、でも僕にはこの子達がいますから…。」
頭の上のヴァルさん達を撫でる。
旅の仲間はいます。
「ふふ、心強いお仲間ね。撫でていいかしら。」
「ど、どうじょ。」
距離がまた縮まり挙動不審になっちゃった。
ようやく顔を見てしまったけど、おっとりしてて優しそうな見た目。
撫でられるチビうささんは目を細めて気持ち良さそう。
ひとしきり撫でた女性さんは満足そう。
「私はロアナ。トーチっていう小さな町から帝都まで移動しているの。君は?」
「ぼ、僕はコータと言います。てて帝都まで旅をしています。」
道の行く先はもう帝都のみ。
行く場所はどう考えても同じ。
そこでロアナさんは提案。
「だったら、私の馬車に乗っていきなさいな。まだまだここらには魔物が出没して危険よ。」
小さな子供が小動物を連れて魔物が彷徨く道を歩いている。
冒険者ですと伝えても保護対象に映ってしまうようです。
どうしよう、どうしよう…。
上手く断る理由も見つからず、流されるまま馬車に乗っていました。
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