こう掴んでポイ
盲目で家庭的なドラゴンさんはまだ止まらない。
大きなお体を動かしてドスンドスンと僕達に近づいてくる。正確には頭の上のヴァルさんにだけど。
強制的旦那さんの小さい容姿は気にも止めず、スンスンと鼻を近づけ匂っている。
すると、急に険しい表情になり問い詰めてきた。
「すんすん、あら貴女から微かに他所の雌の匂いがするわ。イザベラよね、どういうこと?浮気?ねぇ、浮気?」
瞳から光は消え、なにも悪くないヴァルさんをどんどん追い詰めていく。
「う、浮気もなにもお主と結婚なんてしてにゃいのである。」
「あなた、何を言っているの?」
ドラゴンサイズのまま可愛らしく首を傾げる。
「1600年前に竜の里で結婚しようと交わしたじゃない。結婚は成立しているのよ。」
「交わしていないのである!そもそもあれはお主が吾輩を強引に磔にして言わせたのではないか!む、無効である、無効である!」
「あなた、何を言っているの?」
またとぼけた様に可愛らしく首を傾げた。
ヴァルさんが凄く泣きたそうな顔をしている。
「あなたの話はそれで終わり。それよりも、浮気にはお仕置きをしなくちゃね。あなた、ご飯にする?磔にする?それとも子供を作る?」
プリミスさんの瞳はどこまでも暗く闇が広がっていた。
怖いね。
本格的に泣き始めたヴァルさんは救いを求めるように僕を見下ろしてきた。
う、うん任せて。
「あ、あの…。」
「………なに、お客さんかしら?」
グリンと至近距離まで迫ってきた。
深淵な瞳で僕を見つめてくる。
こ、怖いね。
「ヴァ、ヴァルさんがこんなに困っているのでもう止めて頂けませんか?」
「夫婦間の話し合いに他人は入って来ないでくれないかしら。」
夫婦じゃないのであるとポツリと呟く。
「ほ、本人も結婚していないと言っているのでこれ以上は迷惑だと思います。き、嫌われますよ…。」
言った、頑張って言った。
ヴァルさんも良くぞ言ってくれたと頭をポンポンしてくる。
プリミスさんは未だ険しいまま。
「……だから、私達の愛に入ってくるんじゃねぇよ!!」
色の無かった瞳に真っ赤な憤怒を宿し、僕目掛けて前足を踏み降ろしてきた。
押し潰すつもりらしい、でも頭の上には貴女の大好きなヴァルさんが乗ったままですよ。
もう話し合いの余地なしと判断し、するりと迫りくる巨大な足をすり抜けた。
すぐ近くで揺れ動く振動。
そのまま後ろへ飛ぶ。
いつもの要領で翼を切りつつ後ろへ。
そして、尻尾を掴んでハンマー投げならぬドラゴン投げ。
あなた、あなたとヴァルさんに助けを求める自称奥さんを投げ飛ばす。
星には残念ながらならないけど、ミストリア王国方面の彼方へとキランしました。
見えなくなるまであなたと叫ぶ声が木霊した。
…………と言う訳で出発再開!
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