家庭的な恐怖
帝都へと続く山脈を歩き進めていると、大きな存在を感知した。
正体は最近何かと縁の多いドラゴンさん。
真っ白でどことなく気品を感じられる綺麗なドラゴンさんでした。
ヴァルさんが冷や汗だらだらな感じからしてお知り合いっぽい。
「ヴァルさん、あのドラゴンさんは友達?それともイザベラさん系?」
「………イザベラさん系。」
聞き取られないようボソボソっと話す。
目の前のドラゴンさんは残念な部類の方のようだ。
「名はプリミスである。執拗に追いかけて来る者ではないのだが…。」
苦い顔して言い淀む。
すると、真っ白ドラゴンことプリミスさんはヴァルさんを視線に捉えると朗らかに微笑みそして。
「あら、あなたおかえり。もうご飯は用意しているわよ。」
凄く自然体で旦那を迎える奥さんの姿。
「ヴァルさん、結婚してないよね?」
「し、している訳無いのである!あやつの中では吾輩と結婚している事になっているのだ!」
僕らのやり取りも構わず頬をぷくぅと膨らませる。
それよりもこのプリミスさんヴァルさん以外は映ってない様子。
「もう最近帰りが遅いんだから、ほら早くご飯が冷めちゃうわ。」
自称奥さんはどでかい図体をよけて殺したてのワイバーンの山盛りを見せる。
もちろん山の数は2つ。
そして、遠くから香る腐敗臭。
ワイバーンの山盛りで見づらいけど、周りに月日の経った魔物の死骸がいくつも重ねられていた。
まるで毎晩旦那の食事を用意して帰りを待つ主婦のよう。
怖い。
「今日も帰りが遅くなると思ってたけどちゃんとご飯を用意して寝ないで待ってたんだからね。」
「お主と最後に会ったのは200年前くらいだと思うのだが…。」
「もうだからずっと待ってたんだってば、ずーっとね。」
顔が裂けたように見えるほどニンマリと微笑むプリミスしゃん。
「オカエリナサイ、ア・ナ・タ。」
はい、自信満々だったヴァルさんは姿をくらまし、恐怖で震える元のヴァルさんの出来上がり。
眼中に入れられてない僕もしっかりとふるえています。
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