小話 ストーカーの鼻はよく利く



私はアリシア様の護衛騎士であるディーさんと一緒にミストリア王国を目指しています。


どうしてかと聞かれれば想い人を探すため。


なんとなくですけど、私の勘がこちらに行けとじゅるりと囁いてる気がします。

何度も信じて正解へと導いてくれた勘を頼りにスロウハートとミストリアの国境までやってきた。


早速、情報が手に入りました。

検問をする兵たちから聞き込みをしてみれば、以前黒髪という珍しい髪色の男の子が子うさぎと蜥蜴を連れて通ったというではないですか。


応対した者は組み合わせと小さい子供もあってかはっきりと覚えてくれてました。

着実に近付けていることを実感いたします。


さて、また私の本能を頼りに進みましょう。



コータくんと会えない寂しさを現れる魔物で紛らわせること数日、囁き声や笑い声が何処からともなく聴こえてくるという谷まで到着。


くんかくんか…すんすんのすん。


これは、微かにですがコータくんの香り。

懐かしい匂いに悶えているとディーさんに引かれた目をそれてしまいました。

乙女の矜持に失礼です。


今日はこのまま橋の近くで野宿。

久しく嗅げなかった香りを丸1日使って堪能致します。



目覚めは憂いのなくすっきり。

これも橋の中腹でうつ伏せのまま寝たおかげかな。

ディーさんは笑い声が聴こえたと少しビビってあまり眠れなかった様子。

私は匂いに夢中で周りを気にしませんでしたよ。



気力の充電も完了。


王都を目指しましょう。

ここから一番近い主要都市です。

必ず、必ずいてくださるはず。

止めどなく溢れる涎をちょこっと抑えつつ、愛の旅を再開する。




ふふ、まもなく会える楽しみでついついスキップが止められない。

あらあらスキップが弾み過ぎてゴブリンをぷちっと潰しちゃった、ごめんあそばせ。





俺はお嬢の強制的指令のため、女帝と行動を共にしている。

綺麗な女性と二人旅。

聴こえは良いが、中身は全く違う。


少なくとも、橋全体を万遍なく嗅ぎ続ける人を女と認定するのは出来ないだろう?



橋では謎の笑い声が聴こえるし、同行者は年下の男の子相手にあらゆる手を使う変態だし…帰りたいよ。



早く帰るためには一刻も早く少年を発見すること。

しかし、少年の未来を思えば見つけたくない。


俺の心の葛藤はもうしばらく続きそうだ。


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