緊急的脱出



ヴァルさん事件が一時的とはいえ落ち着くことが出来た。

あんなに戦闘中激しい振動や咆哮が乱発していたのに王城内も外も来た時と変わらない。

でも、ヴァルさんの表情は一つ大人の階段を上ったような達成感に変わっている。



僕もいつの日か同じように乗り越えられるといいな。



今日は本当だったらもうイザベラさん達の追手を恐れて王都を脱出する予定でした。

けれど、もう追われる心配が無いならもう少しここでのんびり観光を楽しもう。



まぁもう今日はお休みするけどね。

ドラゴンさんを三体ほどお相手したからゆっくり寝よう。

万全の状態でここを楽しみたい。



そんなこんなでチュンチュンチュン。


次の日から3日かけて諦めていたミストリア王国名産であるデザート食べ歩きを実行した。

神様の息がかかった元の世界で見覚えのある数々のデザート。

完璧なまでに仕上げたクオリティに神様の並々ならぬこだわりを感じる。


もうちょっとだけ王都で楽しもうかな。


なんて思っていると突然のお知らせを告げる鳥肌。

もうイザベラさん問題は終わったはずなのに、なんで鳥肌が現れたんだろう?



それは目の前をすれ違った。

人が行き交う混雑した空間ではほんの一瞬の出来事。

目が合ってたとしてもそんなの刹那の世界のはず。

あちらさんも気付いてないよ、気付いてない。


通り過ぎた背中に届いた聞き覚えのある懐かしい声。


「ミーツケタ…。」


ギギギと無意識に固くなる首を動かし振り向く。

長い耳をピコピコさせて微笑む彼女。



僕は…。



「散開!!」



そう叫んだ時には、もう王都のお外。

どうしてと頭の中を困惑・疑問・恐怖・絶望が走り回る。


なんで街の受付嬢さんであるララお姉ちゃんが他国まで居るの?

どうして僕を探していたの?

どうして笑っていたの?



久しぶりの恐怖でパニック。

元々すぐに脱出する予定だったから食料とかは準備万端。


結局、僕は逃げるようにクロウさんが捕縛されているオルスタル帝国を目指す。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る