友の為の闘争



女王イザベラさんの怒号にも似た指示により、魔法使いさん達とメイドさんのお二人が動き出した。


メイドさんはおそらくイザベラさん達と同じでドラゴンが人化しているから平静に対応出来る。

けれど、他の魔法使いさん達はどうしよう、とてもやりづらい。


「吾輩があの者たちの相手をするのである。」


僕の心を読むのが上手い親友は、代わりに受け持ってくれた。

ヴァルさんなら小さい姿でも全く問題ない。

最強種にとっては取るに足らない相手だろう。



「人間のくせに余所見とは随分と余裕がありますね、ねぇお姉様。」


「そうね、本当に虫唾の走る存在ね、ねぇ妹。」


この二人は姉妹なんだ。

全く表情の無い顔と冷めた目がとてもそっくり。

ドラゴンは身体能力も全てが最強と称される。武器や防具なんておまけにもならない。

ただのパンチ一発で多くの者を屠る力がある。



でも、僕も神様のせ…お陰で普通じゃない。

残念ながら人の領域から足を踏み外しちゃったから。


羽虫を潰す感覚で繰り出された左右からの拳を両手で受け止める。

冷めていた目にも多少の驚きは与えられたみたい。


「あのヴァルガルド様が慕う存在。人間風情とはいえ侮れませんね、ねぇお姉様。」


「そうね、少しはやるようだわ、ねぇ妹。」


そこからは文字通り目にも止まらない連撃のぶつかり合い。

僕は交わしたり受け流したりとどこまでも冷静を保つ。

少し均衡は崩れる。


苦しい表情を浮かべ始めたのは姉妹ドラゴンさんの方。


「くそがっ、何故たかが人間に我々が、なぁ姉!」


「本当よ、ヴァルガルド様の隣はイザベラ様のものだろうがぁっ、おうとも妹!」


口調も大荒れ。

憎々しく吐き捨てるように叫ぶ。


聞き捨てならない。


僕は姉妹さんの顔をガッと掴み、そして告げる。


「違う…間違ってるよ。ヴァルさんは誰のものでも無いんだよ!!」


訴えと同時に謁見場の真っ赤な絨毯が敷かれた床に顔から叩きつけた。

思っていたよりも僕は怒ってたみたい。


床に顔を埋められた二人はぴくぴくとするだけでもう攻撃はしてこない。


ヴァルさんも魔法使いさん達の生きた屍で出来た山の上で両手をパンパンと払っている。



残るは、女王様のみ。

グリーストさんは隅の方で物欲しそうに指を咥えているだけ。



下を向くイザベラさんは怒りからぷるぷると震え、段々と元の姿へと変貌していく。


それは大きな瞳をメラメラと憎悪で燃やす真っ赤な竜。

イザベラさん口から本当に火が漏れていますよ。



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