ヴァルさんの宣誓



脱出しようと考えていた僕達の前に現れたのは痛みを快楽に錬成出来る変態術師ドラゴンさんのグリースト。


彼は僕等を呼んでくればまたご褒美を再開してやると言われ、喜んで遂行してきたそうだ。

迷惑な話だよとジト目を送りつけるも逆効果なだけ。

鼻息荒く変態さんと一緒にミストリア王都にある大きなお城へとやってきた。ここにイザベラさんが待っているのか。

ごくりと唾を飲み込み、グリーストさんの後ろを付いていく。

見た感じ兵士さん達は普通の人間だと思う。

この人達は仕えている人がまさかドラゴンと気づいているのだろうか。



多分女王さんにけっこう近づいて来ている。

ヴァルさんやグリーストさんに似た威圧がびしびしと伝わってくる。



一つの扉の前で立ち止まる。

自動的に開かれたその先は普段使い用の謁見場。そこには以前外で見かけた魔法使いさん達。そして、メイド二人の間に真っ赤な髪を靡かせギラついた瞳でこちらを見据える女性が仁王立ちしていた。


間違いなくあの人が女王さんだ。

ここに来るまでに感じた威圧はこの人が放っていたんだ。



「ようこそ、小さき客人よ。私はミストリア王国の女王 イザベラである。私の愛しき旦那様であるヴァルたんを連れて来てくれて感謝する。」


ヴァル…たん?


僕はヴァルさんをチラ見する。

すんごいげんなりしてた。


「まぁ褒美はあとで渡すとして…私のヴァルたん、ずっと会いたかったぞ。ようやく私のものになる気になったようだな。」


ヴァルさんは両手を広げるイザベラさんに人目も気にせず喋りだす。


「イザベラよ、久しいな。しかし、吾輩はお前の物になどなる気は無いである。吾輩がここに来たのはちゃんとはっきりと断る為である。」


女王さんの紅い目が動揺に揺れる。


「ヴァ、ヴァルたんなにを…」 



「吾輩はお前と結婚する気は無いのである!!」



言った、はっきりと告げた。

見えないけど女王さんには雷が落ちるほどの衝撃だろう。

わなわなと信じられないような表情を浮かべている。

でもそれはすぐに怒りへと変わり、その標的は僕とチビうささんへと向いた。

チビうささんは変わらずククゥーと楽しそう。


「そうか、貴様たちがヴァルたんに何か吹き込んだのだな。許さん、許さん許さん許さんユルサン………殺れ。」


「「「はっ!!!」」」


ぽつりと告げたのは明確な殺意。

イザベラさん以外の人達が動き出した。



いいよ、僕がヴァルさんは誰のものでも無い事を我儘女王さんに証明してやる。


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