行きは天国、帰りは地獄



姫さま達と王都に向かうことになりました。


「それで今後のことなのですが、まずこの盗賊達はどうしましょう?王都まで連れて行くには数が多いです。殺りますか?」


姫さまは物騒。


「え、あ、あのーとりあえず皆さんここからで出ましょう。」


僕はロープで縛っておいた盗賊達を次々と風で浮かして纏めて運んでいく。


「え、詠唱無しですか‥」


「はい?」


「いえいえなんでもございません。…‥有能」


後ろで姫さまがなんか呟いている。


「クックゥー!」


こ、この声はうさぎさん!

声のする方を向くと、うさぎさんがこちらに走ってきている。


そして、僕の胸に飛び込んできた。

ふわぁ、モフモフだぁ‥


「うさぎさん終わったよ。ただいま!」


「クゥークゥー!」


本当に疲れたよーうさぎさん。


「……うさぎが2匹、素晴らしいです」


「ひ、姫様!?鼻から血が!」


後ろでは騎士さんが大慌て。


とりあえずうさぎさんを引き連れて、キャンプセットを建てていた場所に戻る。

黒うささんとチビうささんは帰ったみたいだ。


キャンプセットに付いてる椅子を取り出し、座ってもらう。

盗賊をどうするか考えないとね。

ちなみに盗賊達は起きたら騒いだのでまた気絶させてます。


「それでは盗賊の処遇について考えましょう。コータ様、盗賊達をそのまま浮かせて王都までだと負担がかかりますよね?」


魔力はしっかりある。


「い、いえしょんなことは‥」


「ふふ皆まで言わなくても分かります。そこで私に一つ提案があります。」


ことごとく僕の台詞を塗り潰す。


「先ほどの岩壁の上にロープで吊るし上げておきましょう。抵抗出来ないように何重にも縛り上げて。私が土魔法で岩壁の上に吊るす用の台を作りますね。念のために崖下には土の棘を沢山設置しておきましょう。」


「そ、そうですそうです…ひ、姫様の言う通りだ!」


姫様は明るい口調で恐ろしいことを言う。

ほら、騎士さんも震えてるもん。


「任せてください、魔力には自信があるのでしっかりと作りましょう。ふふ、最低二週もの間、飲まず食わずで岩壁に宙吊り‥ふふ。私が兵を送るまで空腹の中で懺悔すれば良いのです。」


こ、怖い。


「あのーででも流石に飲まず食わずでは可哀想では‥」


「クックゥー!」


俺に任せろと言わんばかりに前足でポフポフしてくる。

時折、果実を運んであげてくれるのかな。この世界唯一の良心だ。


「ありがとう、うさぎさん!」


「クゥー!」


「それではさっそく始めましょう。善は急げです」


「そうですそうです、姫様の言う通りだ!」


「は、はい!」


こうして、夜になるまで作業は続きました。

終始にこにこと笑い声を上げて吊るし台を作る姫さまに、僕と騎士さんはガタガタ震えてました。



夕飯を終え、姫さま達にはテントの中で寝てもらうことに。


「あの、最後にお聞きしたいんですが‥」


「は、はい何でしょう?」


「その着ている着ぐるみは防具なんですか?ずいぶん可愛らしいですね」


「へ‥」


僕は自分の格好を見る。うさぎさんをモチーフにした着ぐるみ。

そういえば、着替え直した描写はない。

ずっと盗賊や姫さまのことで一杯一杯で気づかなかった。


「う‥」

「う?」


「うわあぁぁーーん!」

「こ、コータさまぁ!?」


僕は一瞬で顔を真っ赤にして大森林を走った。





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