第3話 闇は流れて

足元までたらりと下がる夜の幕月を枕に明日夢見る


雨音も染み込んでゆく秋深きこの森より闇は流れて


「多い方がいいから」と言う母のコスモスの詩(ウタ)聞こえる夕べ


回復を待てども待てども兆しなく冬の吐息に今宵も浸る


路地裏に高層ビルにキミの眼に不協和音が響いているよ


誰となく刺した言葉が這うようにぼくの方へと近づいてくる


歌ってよ心に苦く残る音(ネ)でからだに甘く響く言葉で


彼の人に白雪姫は待ちぼうけ期待外れの眠りはつづく


目の前を楽しげに行く少女達渇いているのは空だけじゃない


朝もやのベール体覆っても燃ゆる肌隠せぬ曼珠沙華


雨音に負けず劣らず隣人の電話する声うらやましき夜


床の吾と足音させる誰かとの壁一枚のプラーベート


一日中思い巡らせ過ごせれば積もる吾の二酸化炭素


暗色に映りし吾を消すためのテレビつける無意味な指先

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る