第2話 無音の海

我を消すこの落日も今まさに今日という日のはじまりとなる


夕映えの空をゆくゆく巨大な魚おまえは帰る場所を知らぬか


波だけが風にまかせて打ち寄せる月もない夜星ひとつない時


鍵の無い曇りガラスに囲まれた我は日曜日の空を知らず


山吹色の満月に魅せられて無形の空よ無音の海よ


目の前の君の肩に乗る花びらになってみたいと今年も思う


電灯が言っていました「マッチ売りの少女はどこにもいませんよ」


「誰が来て」我を忘れて叫んでも真夏の陽射しただ冷たくて


下駄箱に空の金魚鉢 そこにはほこりと思い出少しためて


真新し鎧の内に隙間ある僕を惑わす早春の花


嫉妬する自分の瞳に気づいたら爪の先まで血色鮮やか


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