三十一フル(みそひとふる)EXIT

@hasegawatomo

第1話 花のある時間

横ばいの細き枝より離れても椿は椿地に咲く紅


太陽もたまらず汗をぬぐうほど 夾竹桃は今日もおしゃべり


短夜に淑女の如き夕顔よ微笑たたえて誰を待つのか


他人には見向きもしない三毛猫の飼い主の庭に沈丁花


白き手よりこぼれ落ちゆくサルビアのくるしいほどにその花は赤


威勢よく雲から飛び出た雨粒が鶏頭の上でスキップステップ


いつまでも金木犀咲く頃の君思い出すには香りきつくて


オレンジの色ふるぼけたA3のスケッチブックに枯れない小菊


マーガレット咲き乱れているその場所でやがて君は泣くのだろう


嘘・嘘・嘘その赤は嘘と指を刺す棘に向かって少女はうたう


早春に装いさわやかいぬふぐり 一枚イイカイ?コッチヲ向イテ


いまさらにさびしいなんて言えなくて傘も持たずに丘の紅梅


石垣に夕顔の花二つ三つ閉じるわが目にその白を灯す


わけもなくレンゲの行方をたずね行く夢から覚めたカーテン


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