第21話 俺、作戦会議開始

「紐の俺、イッキよ、おめでとう……ようやくこれで作戦会議に入れるな」


 魔法の俺セイが感慨深げに言った。


 やっぱり、セイ先輩、って感じだよな。

 『知性』って、大人だってことなのかもしれない。

 「おめでとう」は素直に嬉しいぜ。


 他の俺は、アワアワしてやがったせいか、何も言わなかったしな。


 そういえば、召喚の俺イーブは、こっそり泣きながら、手を叩いてはいたか。

 あいつの感覚やっぱりわからねえよ……。


 まあ、どいつも待たせたのは、本当に申し訳なかった。

 おっぱい様の力を借りなければ、どうにも出来ない程、追い詰められていたからな、許してくれ。


 セイ、ここは「一気イッキ呵成カセイ」に進めてくれ!

 ……ああ! こう使うんだよ! この四字熟語ッ!

 今更思い出してどうするんだ、俺、もう……どうぞっ!


「では、女神、まずは、魔王を倒すにあたっての情報が欲しい。教えてくれ」


 女神は頷くと、話し始めた。

 珍しくおっぱいの動きが大人しく、神妙さを醸し出している。


「では、まずこの世界、マギアムンドのことからお話しましょう。マギアムンドには八つの国があります」

「八つも国があるのか……」


 何だと、八つも国があるのか。

 覚えるの面倒くさそうだな……。


 ゲームならばイケそうな気もしなくもないが。


 オーストラリアとオーストリアとか、イラクとイランとか、インドとインドネシアとか、アイルランドとアイスランドとか、紛らわしい名前じゃないので頼むぞ!


 アルジェリアとナイジェリアは、何があるのか無いのかわからないからな!


 パラグアイとウルグアイも、何がパラなのかウルなのかはっきりしてもらわんと困る!


 ……うむ、ツッコミいれながらだと、意外に覚えられるかもしれないな。国名だけならなっ! 地図上の場所は知らんっ!


「はい。ですが、いずれも魔王軍の侵攻を受け、状況は国により異なるものの、ある国は既に征服されていたり、ある国は陥落寸前、風前の灯火であったりと、状況は芳しくありません。」

「なんと、そこまで悪い情勢なのか」

「ええ、この八つの国の絶望的な状況を、まずは打開いただきたいのです」


 ここが世界のどのへんなのかが、激しく気になるな……。

 既に魔王軍の手に落ちてる国だったりしたら、悲劇過ぎる。


 いきなり窓破って、モンスター来たりしないよな?


 俺、基本戦闘職じゃないからな、俺以外の俺頼むぞっ!

 チート性能的に、最初の戦死者がこの「紐のイッキ」とか普通にありえる話だからな!

 そうなったら呪ってやるからな、コノヤロウ!

 だからそうならないようにしやがれ……してください、お願いします!


 うーん、真面目に隠れるとこを探さんといかんな。

 足手まといだけは避けたいからな。

 俺って本当に殊勝で苦労性だよなあ。自分で言うのもなんだがよ。


 などと考え、俺がキョロキョロしていると、例の問題児な俺がまた横から口を挟んできた。


「そんなことをせずとも、魔王を倒せば全て解決するんじゃないのか? 何のためのチート能力だ。魔王の場所さえ教えてもらえれば、それ以上は必要が無い気がするんだがな」


 魔剣の俺テュニス!


 ……今回は、珍しくお前の言うこと、分かる気がする。


 ラスボス叩けば一発だよな。

 これだけチートなメンバーがいるってのに出し惜しみはいかん。

 難しい国名覚えるのなんざ、クソっくらえだ。

 むしろその方向でお願いします、お願いします。


 俺、安全なとこで待ってるだけでよさそうだな。

 ふう……、一安心だ。


「残念ながら魔王の城は、闇の世界にあり、そこに行くためには、各国が所有する八つの『鍵の欠片』が必要となるのです」

「何でそんなことになっているんだ? 面倒な」


 テュニス、どうしたんだお前。急にまともになったな。

 全員の俺の心を正しく代弁しているぞ。


「過去に魔王を封印した際に、それが無ければ闇の世界には行けないようにしたのです。魔王を復活させる者が出ないように。しかし、なぜか封印が解かれてしまったらしく、この状況となってしまいました」


 何だってー、またもお前のせいか女神。

 あれ? でも、まてよ……。


「こっちから、魔王の本拠地に行けないのは分かったが、魔王軍はどうやってこっちに来てるんだ」

「申し訳ありませんが、私にはわかりません」


 意味不明過ぎるが、これまでの経験から、こいつがこう言うってことは追求しても無駄っぽいな。おっぱい眺めて諦めるしかねえ。


 まあ、攻略対象が八つ増えただけだ。

 チートで順番に攻略していけば、そんなに大変でもないだろう。

 丁度俺も八人いるしな。

 あ、この俺は、数にいれたらマズいか。


 どの俺でもいい……、倍働いてくれっ!!!


「テュニス、もういいか?」

「ああ、どうしようもないらしいからな」


 おっ、今回は珍しく引き下がったな。ここでセイにバトンタッチか。良い判断だぞ、テュニス。


「では、女神、その八つの国について教えてくれ」

「いいでしょう……」


 そう言うと、女神はこの部屋の壁に据え付けられた黒板に、国名を書き始めた。

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