第13話 俺、自分の職業の説明を聞く

「職業選択は一度だけです。やり直せません」


 なぜか俺は女神に説教を受けている。


 くそう、このおっぱいめ。

 勝手に解釈しやがって。

 俺は口が滑っただけだっていうのによ。


 しかし、しゃべるたびにぷるんぷるん良く動くなー、こいつのおっぱいは。

 気になって全然話に集中できないぞ。


 こんな感じだ。


「もう……私の話を聞いていますか、あなた?(ぷるん)」


「はい……」


「もう一度説明してあげますから、よく聞いてくださいね(ぷるぷる)」


「はい……」


「あなたの職業は『魔紐士(ジ・ゴロ)』ですよ(ぷるぷるんるん)」


「はい……」


「その名のとおり、女性の心を見えない紐で縛り付ける、すなわち女性の心を操ることができますっ!(ぷるっ)」


「はい……」


「能力を使わなくても女性に対する魅力補正+100です(ぷるるっ)」


「はい……」


「良い言い方をすれば女の子を味方に出来る能力(ぷるるる)」


「はい……」


「悪い言い方をすれば、スケコマシ、まんまヒモ……(ぷるん)」


「は?」


「……人間のクズを追加しておきましょう、カキカキ(ぷるりん)」


「言い方っ!」


 流石の俺もここまでの女神の攻撃で、おっぱいスリープから目覚めた。

 いや、正確には、おっぱい魅了か?

 リズミカルに魅せてくるぜ、まったくこいつわ。


 いやいや、そんなこと言ってる場合じゃないな、これ。


 やばいぞ。


 ギャルゲーで、女のおっぱいばっかり見ていて、適当にボタン連打してたら、気がつかんうちにストーリーが進んじまったアレになってる。


 俺は、状態異常が得意らしい女神によって、このように、完全な混乱状態にさせられていた。


 その時だった――。



「ちょっと待ってくれ」


 もちろん俺じゃない。

 魔法の俺、の声だ。


 全くこいつは賢いな。そして良い仕事をしてくれる。


 さっきは、裏切りとか考えてすまんかった。

 お前は最高の俺の味方な俺だぜ!


 今のうちに会話ログ見直すから、適当に何でも聞いておいてくれ。

 頼むっ!


「俺たちの目的である、魔王討伐。その対象となる魔王の性別は男か女か、どっちだ?」

「!」


 こ、こいつわっ。

 こんなとこで、核心ついたような質問するんじゃねえよ。

 気になって、ログ読みにいけねーじゃねえかよ。


「……どういう意味ですか?」


 マジで「何でそんなこと聞くの?」って顔してやがる。

 女神~~~~お前はやっぱり、おっぱいに栄養を全部吸い取られてるんか?

 そして、しゃべるな~揺らすな~コノヤロウ!


 魔法の俺の質問なんだから、意味ないわけないだろっ!

 何でもいいから、とっとと答えやがれよ!


「この、布、いや最強の俺の能力は、女性の心を操れるんだろう?」

「はい、そうですが……?」


 何だよ魔法の俺、そのいかにも気を遣った言い方は……。


 しかし、「最強」の響きが全然嬉しくないのは何でなんだ……。

 クソウッ!

 わかってるさ、コンチクショウがっ!!!


「しかも、能力特化したチートなだけに、レジストは困難そうだ」

「そうですね。本気を出されたら女神の私でも無理でしょう。そういう能力ですから」


 な、何だとぅ~。


 女神っ!

 こんなとこで、そんな、自分に致命的そうなこと言っていいんか、お前は!?

 ギャルゲーのバッドエンド担当のゆるヒロインかよっ!


 ……


 しっかし、あれだな。

 会話ログ見なくていいわ、これ。

 ほんとに賢いなー、魔法の俺は。

 なんか、出来の良いまとめサイト見てるみたいだぜ。


「だったら、魔王が女なら、俺たちの勝利は確定だと思うのだが」

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