第4話 俺、女神の説明を聞く

「先生、お願いします!」

「ではまず最初、『魔道士まどうし』!」

「おおっ、魔法!男のロマンですな」


 俺のヨイショのせいか、ノリノリになってきた女神の説明によると、『魔道士まどうし』は、炎氷風土水光闇の全ての属性の魔法が最初から全部使えるとのことだった。


 もちろん魔物の群れを魔法の一撃で吹っ飛ばすくらいは朝飯前です、と。


「それって最強じゃないか……もう決まりなんじゃね?俺」

「また気が早いですね。一応、続けますね。次は、『魔剣士まけんし』!」


 『魔剣士まけんし』、それは、伝説の魔剣を振るう剣士、とのこと。


 マギアムンドの伝説の魔剣は太陽の剣「ティソーナ」と月の剣「コラーダ」の二振あり、その名のとおり、天に配置された惑星級の力を秘めているらしい。

 受けている神の加護で魔法を切り伏せたりすることも余裕、とのことだった。


 また、魔剣と同時に所有する光の鎧「スターヌメロ」も星々の加護のある特殊効果のある鎧だという。


「ちょっと奥さん。中二じゃなくても、こいつ選ばないで何選ぶの? って感じじゃないですか? 双剣ですってよ、双剣!」

「何を言っているのかわかりませんが、遠慮無く次に行きますね。時間もないですし。次は、『魔槍士まそうし』!」


 『魔槍士まそうし』、それは背丈以上の武器、神に祝福されし槍を振り回し戦う者、とのこと。


 ゲームだと剣に比べて地味な扱いを受ける武器だが、現実の戦闘では明らかに剣より上であることは間違いない。

 槍の攻撃が相手に届く間合いでも、剣は相手に届かない。

 

 それに俺は知っている。

 中二御用達、ラグナロクな北欧神話の主神、オーディンの武器はグングニルという槍だ。投げてもよしで、敵を葬った後は手元に帰ってくるって本には書いてあったが……それありなんかよ、槍なんだろ? と本に対しツッコミをいれたものだ


 ……マギアムンドの魔槍の名前も「グングニル」とのことだった。

 伸縮自在で、俺の考えているような投擲効果もあるという。


 「エイトドラグーン」というドラゴンスレイヤーのみが着ることを許される竜の鎧持ちってのもいいなあ、この職業。


「マジかよ、俺のためにある世界かよ、まったく。そしたら槍かなぁ……」

「優柔不断ですね。まあ説明している甲斐があるということかもしれませんので、続けますね。次は、『魔弓士まきゅうし』!」


 『魔弓士まきゅうし』、どこまでも狙い撃つことの可能な、相手に必ず当たる魔法の弓が撃てる、とのこと。


 俺は耳を疑った。


 えっ? 必中すか? この「フェイルノート」って弓?


 ちょい待てよ、弓とか槍以上にリーチとか問題じゃないし、もし仮に威力がちょい低くても、連射されたらもう相手終わりじゃね?アウトレンジで決まっちまうわ。


 専用の鎧はないが、攻撃効果の異なる弓をいくつか所有していて、別の弓には時々即死効果があったりする、だと……不意打ち以外でこいつに勝てるやつ、おるんかよ。いくつあるんだ、弓。


「勝てない、どう考えても剣や槍じゃ勝てない……弓でいいか、もう」

「あくまで魔王と戦うことを考えてくださいね。では次『魔殺士アサシン』!」


 『魔殺士アサシン』、それは、姿を隠し気配を相手に感じさせないまま敵を屠る、とのこと。

 魔法効果ではないため、敵はその動きを感知することは困難であり、気がついたときにはもうその場に倒れているレベル、の隠密機動らしい。

 毒、麻痺などの状態異常効果を与える各種アイテムに加え、短剣、手裏剣など武器も豊富に扱える。


「忍者か! 忍者だよなこれ! ニンニンと魔王を暗殺か……普通にいけそうじゃね?」

「世の中そんなに甘くないですが、その気になれば、敵と戦わずに魔王の間までたどり着くことは出来るかもしれませんね。では次、『魔戦士ませんし』!」


 『魔戦士ませんし』、それは狂気に自分を支配させることで、絶大な力を発揮する、とのこと。


 つまりはバーサーカーだな。


 それだけではいまいちイメージしづらかったので、確認すると、能力発動後、あらゆる物理攻撃、魔法効果を一定時間受け付けなくなり、全てのステータスが普段の数倍になるということだった。

 

 おいおいおいおいおい、何だその特別にチートなその性能は。

 今までの職業全否定じゃねえか。

 俺時々バーサーカーとか便利すぎる。ただでさえ強力なのに、知性まで与えちまって、いいのか?


 ただし、効果時間中は、敵対する相手への攻撃以外には全く気が回らなくなり、効果時間をすぎると能力が落ちる。まあそんくらいの制限は普通だろう。むしろ安いくらいだ。


 武器は「ガンバンティン」という棒。

 対象の魔法効果を無効にするそうだ。

 とにかく圧倒的な力で物理で殴れ、殺られる前に殺れ! ということらしいな。


「変身みたいなもんか……ちょっと熱いな。使いどころってやつだな」

「わかってきたようですね。では次、『魔召喚士ましょうかんし』!」


 『魔召喚士ましょうかんし』、それは、精霊、モンスター、ゴーレム、マギアムンドの理に従う、あらゆるモノを召喚できる、とのこと。


 この職業だけ名前が長いが、まあ仕方ないのだろう。略しようがない。

 つーか激しく頭の「魔」を削りたいわ。なんでもネーミング統一すればいいわけじゃねえっていうことの見本みたいな例だな、これ。

 せめて魔殺士アサシンみたく読み方を変えろっての。魔召喚士サマナーとかな。

 誰がこのネーミング決めたんだよ? って目の前のこのおっぱいか……どうしようもねえな、ハア。


 しかし……俺の夢見た、船も飛行船もいらない職業か。

 しかも、召喚獣を戦わせれば、基本自分は見ているだけだから、楽なことこの上ない。

 精霊に自分を護らせることだってできるだろう。


「戦わずして勝つ!これぞ最強の男だよな」

「やっぱりあなたの考えは意味がわかりません……まあいいです。次に……」

「まてよ」


 俺は、おっぱいに注意しながら、言いかけた女神の肩をつかんだ。

 ああそうだよ、気をぬくとまた触っちまいそうだからな。


「何ですか? ここまでの説明で何か不明なところがありましたか?」

「いや、説明はもういい」

「なるほど、もう決められた職業があるということですね」

「違う」

「違う?」

「やっぱり全職業の能力、使える全アイテムをよこせ!」

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