幕間 綺麗な気持ち
「決! 起! 集! か」
「いいよ藍、そういうのは」
「はい」
清田の威勢のいい掛け声を、八代が制止する。
23時を回ったころ、めぐるたちの宿泊する二年女子部屋には、児相ことヤッシー児童相談所の面々が集まっていた。
「ふふ、のんびりやりましょ~」
「五日目でよくそんな元気有り余ってるね藍ちゃん」
女神秋風と、その膝の上に乗る春原がそう言うと、清田は暴走するエネルギーを収める。
「明日ライブだと思うとなんかこう……なんかな!」
「もういいから藍も座りなよ。動かれると落ち着かない」
「……なんか座ってられない小学生みたいだよね」
「はじめと舞って絶対私の味方してくれないな」
トリオ仲間の辛辣な扱いに、わざとらしく不満げにぽすんとベッドに腰かける。
するとめぐるが清田にフォローを入れた。
「フフ、でも明日ライブだからって気持ちはあたしもわかるなぁ。何が起こるんだろうって思っちゃう」
「そうね~楽しみだね~」
秋風が同調すると、皆思い思いの表情を浮かべる。
いよいよ本番直前の夜であり、そして……
「最後だって思うとちょっと寂しいです」
「アハハ、あれだけ詰めたし、後はライブ楽しむだけだよ、なっちゃん」
夢の時間の終わりを感じさせる夜でもある。
夏合宿がずっと続けばいいのにと思うのは、ほとんどの部員に共通することだ。
「よしよしなっちゃん、じゃぁ私がより高まる演出をしてやろうな!」
「……何する気よ藍」
「いやぁ旦那ァ……
そういって清田が鞄から取り出したのは……ココアの粉。
「こんな時間が来ると思って持って来たんです!」
そんな粋な計らいに、一同から拍手が起こる。
少しお高めのココアの粉末は、清田がバンドメンバーを想って購入したもので、後輩としての殊勝さと、仲間想いの一面に、今日ばかりは誰も茶々を入れなかった。
普段の言動で損している分を挽回するのに十分といえるだろう。
お湯を沸かして全員分のココアを注ぎ、色々な話題に華を咲かせる。
仲間とのんびり過ごせる最後の夜は、軽音学部最大のイベントへ向けて、色々な想いが交差する夜でもある。
児相や巴☆すぺくたくるず以外にも、バンドで過ごす人たちは多い。
わざわざそうするというよりは、それが自然な流れかのように、皆なんとなくそうするのである。
その証左として、22時から始まる深夜練習の時間割も、24時までは空白が目立つ。
会話の途切れの静寂も、団欒の一幕であり、ここで過ごす全ての時間が、ここにいる全員の大切な思い出となった。
「さてそろそろ……」
しかし清田が不穏な動きを見せる。
いちいち反応するとキリがないので泳がせてみる。
「生ぬるい馴れ合いはお終いにしましょうや……」
キャラが定まらない清田が取り出したのは……
「……あんたそんなん持ってくるから荷物多くなるんでしょ」
「……そっちのバッグ絶対持ってこなくてもよかったよね」
清水寺トリオの二人すら呆れるそれは……そこそこデカ目のサイコロ。
「何書いてあるんですか? ……あ」
「なっちゃん気づいたようだね……そう、これを振って出た目に書いてあることを話すのさ!」
「ご……ごきげんよう」
懐かしの某TV番組よろしく、各員じゅんぐりにやろうとのこと。
出目にはそれぞれ
・気になる話
・実は……な話
・ムカついた話
・ショックな話
・今更な話
・今日の当り目
と妙に凝った字で書いてある。
呆れ半分でスルーしようとしたのが大半であったが……
「面白そうですね!」
と無邪気にも夏井が興味を示してしまう。
予測していただけに心の中で「なっちゃぁぁん……」となる一同と、計算通りと不敵に笑みを浮かべる清田。
とはいえ末妹ポジションの夏井を無碍に扱うことは誰にもできず、テンションの差は随分あるが、第一回児相サイコロトークの幕が上がった。
言い出しっぺの清田から、とサイコロを振り、出た目は……
「何が出るかな何が出るかなてれれてんてんてれれれん……ショックな話! うぅ~……ショック!」
「うぅ~ショック!」
「……え、なっちゃんだけ? ……皆やりましょうよ……うぅ~ショック!」
「「「……うぅ~ショック」」」
ノリだけでゴリ押ししてくる。
折角だから皆が知らない話題、と清田は少し考えを巡らせ……
「高校三年の時に三者面談で親と担任両方に『え、進学するの!?』って言われたことだな!」
「「「ブフッ」」」
完全に出オチの内容だったが思いの外ウケた。
趨勢を決めるトップバッターだったが、それなりに盛り上がる。
そしてサイコロを渡された春原がくるくる回して出目を確認する。
「ふふ、意外と面白いかも……あ、でもなっちゃんとかこの目意味ないよね。『気になる話』」
「アハハ、確かにそうだな! いっつもその場で聞いちゃってるもんな! 定番だからとりあえず入れたけど」
にこやかに春原たちが夏井に目を向けると、
「……え? あ! いつも聞けないことも聞いていいのかと思いました!」
「「「……え?」」」
普段は抑えていたという含みに一同戦慄する。
そしてなんとも言えない面持ちで春原が振ったサイコロは……
「お、出ました実は……話。『実は私……』。はい!」
「「「実は私……」」」
常に冷静な春原の喋り口調にぴったりな話題が出る。
「スーちゃん、とびきりの爆弾発言を期待してるぜ」
安全策は許さないと言わんばかりに清田もそう煽る。
「……そんなのないけど。……なんだろ」
少しばかり思案した後、
「あ、お姉ちゃんが欲しいとずっと前から思ってました」
と切り出す。
自身の座る膝の持ち主が若干ぴくっとなるが、春原はポーカーフェイスを崩さない。
ちゃっかりとその場の話題に乗じて意思を通すあたり、流石の春原である。
そしてもちろん一同即座に含みを理解した。
春原弟の初恋の相手はどう反応するのであろうか……チラりと直視はしないように、とある人物に注目が集まるが……本人は表情を変えずにいる。
「そっかー。スー長女だもんね」
「はい」
八代がニヤりと話を繋ぎ、一同またチラりと目を向ける。
攻められる人とその膝の上の攻める人、完全ゼロ距離のせめぎ合い。
周りから見れば春原の度胸も秋風の余裕もすさまじいものがあったが……
針のむしろと静寂に、ついぞ女神も保てなくなり、
「つ、次は私が振ろうかな~」
ごまかすようにサイコロトークの進行を申し出た。
この勝負、春原の勝ちである。
――
サイコロトークもそれなりに盛り上がり、ラストは満を持して
「何が出るかな~。そういえば当り目って出てませんね。藍ちゃん先輩、コレってなんなんですか?」
「それはだな! ……一日私がいいなりになる権利」
「……へぇ」
ほぼ無意識に、夏井は「いらねぇ」と思った。
「よし、なっちゃん。何としても当り目を引くんだ」
「……一日藍を黙らせる権利は貴重」
「……ねぇ私ボーカルだから黙っちゃいけないんだけど」
水木と小寺はなんとしてでも当り目を引かせて清田を黙らせたいが……
夏井がサイコロを振り、出た目は案の定……皆に緊張が走るものであった。
「……あ……気になる話! 『私、気になります!』」
「「「私、気になります」」」
清田ですら一瞬逡巡した。
先ほどのやりとりの中で、夏井が普段はセーブしていたという事実が明らかになった以上、どんなヤバい質問が飛ぶかわからないからである。
スルーすればいいだけであるのに、変な空気にアテられたか、何故かその場の全員にその考えは浮かばず、覚悟を決めた。
「……聞いちゃってもいいか微妙なんですけど~」
一同「ですよね」と思う。
「最近一年女子で話題になってることがあって」
そう切り出すと、幾人かは安堵を覚える。
普段から話題になっているのもであれば、それほどヤバい内容ではないと踏んだ。
「あ、でもやっぱりめぐる先輩……や、やめときます!」
ここでまさかのめぐるの名前が出る。
完全に口が滑ってしまった形だ。
予測されるのは、めぐるがいると特にしづらい話であるが、
「……いや、なっちゃん、あたし大体予想ついちゃったんだけど」
本人にはわかったようである。
そしてその場の数人も察したようだ。
「多分大丈夫だから言っていいよ」
「え、じゃ、じゃぁ……」
様子を窺うようにして、夏井は気になる話を口にした。
「巴さんって白井君のこと好きですよね?」
その場の全員が「やっぱそれかぁ」と思う内容、それは水面下で目下進行中のホットな話題であった。
というより、そう思っている人が大半な割に誰もが話題にしづらい内容である。
そして、このサイコロトークが始まった時に、何人かは意識した話題でもある。
当たり前だが、白井にはめぐるがいる。
応援するには道理が通らず、釘を刺すにはハッキリとしない。
そうかもしれないし、そうではないかもしれないという微妙なラインであり、ただ仲が良い程度に見えなくもない。
少なからず問題に思っている者もいるが、当人たち三人の誰からも邪な気持ちが見えないことが、周りが全く口出しできない要因である。
所謂ただの恋バナと割り切ってもいいが、事情が事情だけに少し複雑。
ただ、一部からしてみれば、いずれはハッキリとしなければならない話題であったし、めぐるの前で敢えて話題にすべきという見方もある。
夏井の口が滑ったのも、言った方が良さそうだけど言いづらいという葛藤によるものだ。
「一応巴さんの名誉のために言っておくけど~……あたし巴さんとその辺は直接話してるから大丈夫だよ」
めぐるのフォローが入ると、禁忌に触れたのではないかと恐れていた面々が胸を撫でおろす。
動じなかったのは同じく三年生の二人であったが、それは事情についての理解があるからだろう。
しかしながら、めぐるの言葉が夏井の疑問に答えるものではなかったことに、釈然としない思いを抱えた者もいた。
「別に話してもいいって言われてるし言った方がいい気がしてきたんだけど~」
そんな反応を受けてか、めぐるは話を続けた。
「巴さん、本当に彼氏作る気ないんだって。カナ先輩に彼氏が出来ない限りは」
なるほど、という反応を数人が示した。
三年生の二人は知っていたようで、干渉しない理由もそれに起因するのだと夏井達も理解を示した。
夏井の疑問によって収穫であったのは、好きかは別として、何も起こらないということである。
よくよく考えてみれば、秋風や八代がこれまで何も言わなかったことが何よりの証拠であるし、マズい状況であれば釘を刺している。
そして変に禁忌扱いするよりも、いっそ共通認識を持ってしまった方が皆スッキリするかと、八代が話を拾った。
「一年でもそんな風に思われてるんだね。私らは付き合い長いから結構わかりやすいけど」
同学年からすればよりわかりやすい。
男嫌いと思われる程には男性を
白井が無害だからという事実もあるが、それは正景等も同様で、巴自ら白井に接触することが多いことを見れば、それが理由とは言い難い。
夏井は少し考えるようにして答えた。
「ん~……実際には一年生の間では、あの二人って仲良いよねってくらいだったんですけど~……」
実のところ、一年女子同士では恋愛模様というより、「仲の良さが羨ましい」といった内容が多い。
夏井は夏井なりに察した理由、それを話した。
「さっきバンド名決めた時、巴さんがすっごく嬉しそうにしてて。PAシートにそれ書いた時とかそれずっと眺めてたんですよ」
数十分前のこと。
「思い返してみたら、アレって白井君が決めたからあんなに嬉しかったのかなぁって」
最後のバンドという感慨深さもあっただろうが、好きな人が自分のバンド名を、自分の名前を入れて決めてくれた、その事実が嬉しかったのではないかと、夏井は予想した。
「……正直私もそれ思った」
「……私もそれ思っちゃった~」
同席していた春原と秋風も思ったようだ。
確信に足る出来事だったのは明白だったようだ。
めぐるがそういった事実にどう思うのかは気を遣うところではあるが、目撃した三人がそう思ってしまったことを口にすると、
「え、どんな表情? めっちゃ見たいです」
めぐるがそう返す。
余りにも肯定的な反応に、再び安堵する夏井達ではあったが、これはこれで反応に困るものである。
口には出さないが、幾人かは軽く神経を疑っている。
そして流石に動いたのが……
「めぐる……前々から思ってるんだけど、めぐる自身はどう思ってるの?」
所長の八代である。
これはこれで皆が口にしづらくも考えていたことである。
状況だけを見れば、自分の彼氏に他の女が寄りついていることに外ならず、めぐるの考えを皆ある程度知っていても、理解はできない。
「ん~……やっぱその辺ハッキリさせといた方がいいですよね?」
巴の考えだけでなく、めぐるの考え、それが明らかにならない限りは煮え切らない話題である。
「白井君にはもう言ってあるんですけど~……」
そう前置きして、めぐるは話を続けた。
三年である巴には好きにして欲しいこと。
仮に巴が本当に白井のことが好きだったとしても、その気持ちの邪魔をしたくはないこと。
好きなものを否定することは絶対にしたくないことであり、自身の経験からそれは絶対に揺るがないこと。
当人達は白井の人柄や信頼に甘えているフシがあるのは理解しているし、一般的な感性では同意は得られないのはわかっていても、必要だと思うことは話した。
献身的なまでに巴を尊重した言葉の数々には、他人が口出しできない信頼が垣間見えた。
ちなみに定例報告『今日の白井君』だけはさすがに伏せた。
「それに、さっきのなっちゃんの話聞いてやっぱり思ったんです。ただ純粋で綺麗な気持ちなんだなって」
めぐるもめぐるで巴に対して疑いがなさすぎるが、話を聞いて一同も理解はした様子だった。
それでいいのだろうか、そう思う者もいた。
それでも、好きなモノを抑圧してきためぐるだからこその言葉、その芯の強さに口出しは出来なかった。
「でも見たかったなぁ。どんな表情だったんだろ」
「カナ先輩写真撮ってたよ」
「ほんと!? さすがカナ先輩」
めぐるがそれをねだると、春原はその写真を送ってもらい、めぐるに見せた。
「……めっちゃいいこの写真」
めぐるがその写真に見入ると、清水寺トリオもぐいっと乗り出す。
「なんてこった、はじめ見ろよ……巴さんメスの顔してやがる……」
「……あんたどこでそういう表現覚えてくんのよ」
「お前が描いた同人誌からだウッ……いい……パンチだ」
「……当り目引かなくても黙らせられたね」
普段は大人な雰囲気で余裕を絶やさない巴の意外な姿に、後輩たちは無性に嬉しくなった。
そして、めぐるが「邪魔したくない」と言った理由がわかる、そんな綺麗な感情が見える。
写真に写る巴の表情はそんなものであった。
「あと一年女子で話題になってるんですけど……白井君ってモテるんですかね?」
話題の区切りに、夏井が新たな疑問をぶつける。
居並ぶ年上の女子勢に、素直に聞いてみたくなった。
「彼氏としてならないな! モヤシ!」
「あんたあんだけ構ってもらってるくせに最低だね」
「……傲岸不遜」
清田的にはないらしい。
さんざん迷惑をかけた相手に失礼極まりない評価である。
「じゃぁモヤシっ子と付き合ってるはじめ的にはどうなんだよ」
「いや考えたこともないけど……というか失礼でしょ有り無しの話とか」
「フフ、あたしは別にいいよ。むしろ皆的にはどうなのか気になるかも」
「あらら。じゃぁ……ない。人としては好きだけど」
残酷な評価である。
「舞的には? ま~舞は好みおかしいの知ってるけど」
「……パワー不足?」
評価基準を満たしていない様子。
「き、清水寺厳しいね……スーちゃん的には?」
「草食系の時代は終わった」
「……スーちゃんリスのくせに」
対話拒否。
二年女子勢からそんな評価が下されたところで、三年女子勢が口を開いた。
「アハハ、でもまぁ、年上に好かれそうではあるよね。可愛いとこあるっていうか」
「ふふ、見守りたくなる感じね~」
余裕たっぷりな大人な女性からすれば庇護対象のような感覚があるようだが、
「弟って感じだけど」
「ふふ、そうだね~」
当たり障りのない定番のフリ文句に帰結した。
ラブコメ野郎と称される程度には女子勢とは仲がいいし、ここにいる全員が白井のことを人としては好きであるが、実際はそんなところである。
何故か意地になってか、めぐるは夏井に目を向け、
「なっちゃん的には!?」
縋るようにそう尋ねた。
「……いい人ですよね」
絶対に恋愛対象として見ていないセリフランキング一位でトドメを刺される。
いい人というだけでモテるのは現実ではまずない話である。
「ふふ、でも下心ないとこじゃないかな~。しろちゃんのいいとこって~」
「そう……って言いたいけど吹。アレはやせ我慢」
「そうなの~?」
「うん。ね、めぐる」
「見せないのはすごいと思いますけど……あるにはありますよね」
「あら~」
自制心がバグっていると言われるだけでなく、女神を欺くほど。
「っというか巴さんとアレだけ仲良くしてて下心生まれないって無理じゃないです? あたしだったらもう……だってもう、こう、だってですよ」
「うふふ、めぐちゃんは正直ね~」
胸を盛る仕草で対照的にオープンなめぐるの姿。
だからこそ上手くやれているのかと感じさせるものではあったが、
(……スーちゃん)
(……どうしたの舞ちゃん)
(めぐるちゃんって男だったら絶対巴さんと仲良くなれてないよね)
(……白井君に中身オッサンってたまに言われるらしいよ)
「……ブフッ」
「うわどうした舞、急に噴き出して!」
「……ごめん、何でもない」
一部の人からは残酷な評価を受けるのであった。
清田の思い付きから始まったサイコロトークであったが、児相の面々は思いの外楽しめたし、真面目なトーンになった話題も、得られた共通認識は価値のあるものであった。
自分が好きな人を、他の人も好きになる。
邪な感情がないことが前提ではあるし、人によってはそれでも訝しむものだが、めぐるからすれば悪いことではない。
好きなものは好きであるべきで、そうすることで人が輝けることもよく知っている。
結末は信頼に託して、今はただ、明日のライブへの期待を更に高めるのであった。
隠しトラック
――同輩として ~合宿場廊下にて~
八代、秋風、部屋に戻り中
「……今更だけどさー」
「ふふ、サイコロの続き~?」
「アハハ、あの場じゃ言えないよ」
「あら~?」
「……私、
「うん、わかってた~」
「私が勝手になんとなく納得いってなかった感じだけどね。……それに考え方違うのはお互いわかってるしさ」
「そうね~。でも今は違うんでしょ~?」
「そうだねー。……バンド一緒じゃないのにさっきの話聞いて嬉しくなるくらいには好きだよ」
「ふふ、夏バン組んでおけばよかったって思う~?」
「ん~。思わなくもないけど、これでいいかなと思う」
「そっか~。ふふ、本当に変わったよね~ともちゃん」
「一番変わったのあいつかもね」
「でもさー……」
「ん~?」
「辛くないのかな」
「……それよね~」
「本人含めて誰にもどうしようもない話だよね」
「ふふ、やっちゃんってほんと優しいわよね~」
「いやそういうわけじゃ……」
「意外と大丈夫なんじゃないかな~? カナちゃんいるし~」
「ま、それもそっか。……この部活って奏で持ってるとこあるよね」
「カナちゃんが副部長で支えてなかったらヒビキ君だけ空回りして終わってたわね~」
「……吹って私よりヒビキに厳しいよね」
「……甘やかしちゃダメなタイプじゃない?」
「マジなヤツじゃん」
「冗談よ~」
「いやマジだったよ?」
「でもカナちゃんも、めぐちゃんと同じ考えなんじゃないかな~?」
「多分そうだろうねー。水差したくないって思いそう」
「ともちゃんが楽しそうにしてるのが一番嬉しいだろうからね~」
「そうだよねぇ」
「それにともちゃんも結局カナちゃんのこと一番好きじゃない~? カナちゃんもそれわかってるし~、心配してもそこまでじゃないかも?」
「確かに……あ。ちょっと……ていうかかなり失礼な例えなんだけどさ」
「何~?」
「自分ん家の猫が他人の家で餌もらってても気にしない感じ?」
「……フフッ」
「あと
「……カナちゃんも同じこと言ってたね~」
「ね。一、二年は知らないだろうけど」
「お互いにわざと言ってるわよね~」
「……アレだよね、確かめ合ってる的な……」
「どう考えてもそうよね~……」
「やっぱりガチだよね」
「……ガチね~」
「私あの二人が部屋いる時に外出るとさー」
「ん~?」
「戻る時ちょっと緊張するんだよね」
「……フフッ。ま、まさに今ね~」
「割と笑いごとじゃないからね?」
同輩からみたら色々深刻。
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