特別編 令和スペシャル②


「さて、休憩終了!」

「……あんまり休んだ気がしないんですけど」


 平成をゲーム音楽で振り返るということで先程はファミコンとスーファミ。

 小休止ということで休憩を入れたが、その間も結局語りきれなかった内容についてものすごい勢いで語れたものだから回復なんぞしていない。

 

「回復剤飲んだでしょ!」

「ドクターペッパーはポーションではない」

「はい次行くよ!」

「無視っていう」


 今日の月無先輩は止まらない、ということで次は第五世代、いわゆる次世代ゲーム機のプレステVSニンテンドウ64。

 同世代のセガサターンはバーチャロン一強とのことだが……。


「この時代は大躍進の時代ね。ゲーム機の音源に依存してたそれまでと違って、ストリーミング再生が可能になったことで生音の曲が流せるようになったわ! ゲーム音楽=電子音っていうイメージに終わらない数々の名曲が生まれたの」

「この辺りのゲームからサントラ出てるのも増えますよね」


 言ってしまえばディスアドバンテージが払拭されたようなもの。

 表現の幅はとてつもなく広がったし、この時代の曲からは他の音楽と比べても遜色ないものも増えた。


「そしてまずはセガサターン! これはさっきも言った通りだけど、バーチャロン一強ね!」

「……RPGは?」

「……あたしセガサターンでしか発売してないRPGってやったことないのよね。家にはあったんだけど……ほんとごめん」

「あ、いえ。……凹まないで下さい」


 まぁ全機種やったことあってタイトルまで全部網羅してるってのも信じがたいし。


「でも思うんだけど、ぶっちゃけプレステと64あったらセガサターンっていら」

「やめなさい」


 せがた三四郎がここにいたら背負い投げされてたぞ。


「で、気を取り直してバーチャロン! ハッキリ言って当時のゲームでは相当抜けてるわ」

「そんなに」

「目立って良い点といえば、単純に曲が良い以上に低音にこだわったサウンドがゲーム全体を盛り上げているところ。そして新世代を思わせる電子音のバリエーションね!」


 なるほど……生音かそれに近い音でも使える中、さらにゲーム音楽っぽい音を追及したって感じか。


「今となってはどれも定番の音を使ってるんだけど、だからこそのバーチャル感っていうのがタイトル通りで最高ね! ガッツリ聞こえるセガドラムもゲーム音楽って感じがして最高!」

「セガドラム……?」


 なんだそれ。聞いたことない。


「説明しよう! セガドラムとは!!」

「あぁ……」


 久方ぶりの解説キャラ登場。しかし割愛。

 何しろ当時のセガのゲームでよく使われた電子ドラム音で、割と騒々しいけどテンションが上がるのでアクション系にはぴったりとのこと。


「曲によってはちゃんと抑えられてるけどね。『The wind is blowing』とか」


 曲によるとのことで、女の子ロボのフェイ・イェンの曲はさっぱりした音の曲が多いとか。

 電子ドラムの音一つとっても様々な音色のバリエーションが出せるようになったあたり、この世代からのゲーム音楽には聴きどころが一層増えたと言えるかもしれない。


「あと番外編なんだけど……」

「番外?」

「うん、一応サターンでも出てるからさ」


 何だろうか。確かに移植なりで色んなハードで出てるゲームも多いが。


「超兄貴だけは絶対に外せないのよね」

「……むしろ曲が有名なゲームでしたよね」

「うん、これはゲーム音楽史に残る異端児」

「異端児」


 月無先輩曰く、ゲームの進化によって広がった『ゲーム音楽の世界』とは全くの別次元、謎進化を遂げて完全に『超兄貴の世界』を確立しているそうだ。

 ゲーム音楽、ではなく超兄貴というジャンル、と。


「ゲーム自体がかなりアレとはいえほんとすごいから、絶対聞いて」

「……了解です」


 単純に超カッコいい曲も多いそうだ。


「さて、次はいよいよ……ニンテンドウ64」

「お、任天堂からですね」

「これはある意味悩んだわ……」

「何にです?」

「……RPGがほとんどない」

「あっ」


 確かに、64といえばパーティーゲームとアクションに特化している印象。

 思い当たるものも特にないし、RPG要素のあるものといえば……


「なので枠組みをちょっと広げて……RPG部門はゼルダの一強体制……」

「やはり」

「……と見せかけて」


 ……面倒な子かな?


「がんばれゴエモンとゼルダの一騎打ちだったわ」


 なるほど、ゴエモン。

 シリーズ通して曲の良さはゲーム音楽界屈指のレベル。


「どっちもゲーム音楽史に残る先進的な技術がふんだんに使われてるもんだから本当はどっちも一位にしたいんだけど……」

「字数が」

「……そうなのよ。だから『ゼルダの伝説 時のオカリナ』に軍配が上がったわ」


 ゴエモンはこの前さんざん語られたしな(夏編①『冷静と情熱の共感』参照)。


「ゼルダの何がすごいってね、これまでと全く違った音楽的アプローチがされているところなのよ」

「……どんなのです?」

「それまではね、ゲームプレイ時の音っていう情報を音楽が隙間なく埋めてたわけなんだけどね。なんとゼルダはその逆を行きます」


 ……よくわからん。


「常にばりばり鳴ってるわけじゃなく、場面に応じて時には無音に近いくらいまで身を引くっていう映画音楽的なアプローチは新時代のゲームの見本と言えるわ」

「はぁ」

「より本当の意味でのBGMに近くなったとも言えるけど、画面への溶け込み方っていうのはそれまでとは別次元ね。冒険へのワクワク感から不気味への不安まで、プレイヤーの感情に真に迫ってくるわ」


 確かに……悪い言い方すれば普通のBGMっぽい、というか印象が薄いって気もするけど。

 そんなことを言ってみると……


「でもそれがあってこそなのよ! 時のオカリナは!!」


 ……急にどうした。


「オカリナで演奏する曲のメロディの良さが、それによって一層際立つの! シンプルにそれだけで良いって思わせるメロディが多すぎて!」


「あ、確かにわかる。オカリナ曲やたら印象に残りますもんね」

「引き算によってより強調されて得られる特別感、どう足掻いてもプレイ後に口ずさんじゃうくらい鮮烈に耳に残るでしょ!? ループして散々聞くから耳に残るっていうのはまた違うし、ものすごく計算しつくされた技術よこれ!」


 おぉテンションが。


「通常BGMとオカリナ曲、この相互関係の深みにハマってしまえばゲーム全体が一つの芸術作品と言っても過言じゃないくらいね」


 大袈裟とも思うけど、ゲームにしては演出として完成し過ぎている。

 映像がよりリアルになったことでこうして映画的な表現もされるようになっていったってことか。モンハンとかにも通じる気がする。


「ちなみにあたしはブレス・オブ・ザ・ワイルドの馬宿でエポナのメロディがちょっと流れる演出で泣きました」

「泣くほど」


 でも思い出深い曲ならそのメロディが流れただけでも嬉しくなるもの。

 時のオカリナのシンプルなメロディだからこそできる演出か。


「でもあれですね、時のオカリナの良さはゲームやってこそって感じもありますよね」

「そうだけど時のオカリナやったことない日本人とかいるわけないでしょ」

「……いないわけないでしょ」


 もうなんか神格化してんな。確かにゲーム史に残る超名作だけど。


「で、RPG以外部門! ……こちらも中々迷いました」

「任天堂の時点で曲がいいゲームしかないですもんね」

「うん、任天堂以外のゲームも勿論たくさん良い曲あったけど、やっぱり強かった」


 さぁ何が来るか。


「星のカービィ64!! ここで! やっと! カービィ!!」

「いきなりブチ上がる」


 多分すげぇ好きなんだろうなぁ。

 でもカービィといえば何年も変わらず高いクオリティを保ってるし、シリーズタイトルでもゲーム音楽的に見れば間違いなく上位だ。


「正直言ってここまでカービィを挙げられなかったのは本当に忸怩たる思いでした」

「好きすぎじゃね」


 そして語りたくてしょうがなかったという表情。

 口角が上がるのを抑えられないと言った感じで選評開始。


「新時代に突入してカービィの世界観は一層深みを増したわ! スーファミまでで構築された『カービィらしさ』は生音という武器を手にしてさらなる進化を遂げたの!」


 生楽器じゃない電子音の時点で、一発でわかるカービィっぽさみたいなのは確かにあった。

 

「カービィらしい音で奏でられるカービィらしい曲、カービィの世界を曲が十全に表現するそれはゲーム音楽の本質と言って過言ではないね!」


 曲による世界観構築といったところか、カービィは確かにその当たり群を抜いている気もする。


「ゲームが進化しても変わらず『らしさ』を保ち続けて、更に高みに向かったっていうのが64のカービィのすごいところね。ただの曲作りじゃなくて、『カービィの曲作り』なのよこれは。他の人じゃ絶対に出来ないね!」

「作曲家ってずっと同じなんですか?」

「うん。石川淳様だよ。64からは他の人も関わってるけど、一作目から同じ人」

「スゲェ……」


 ブレずにただ進化していくっていうのも、それだからこそということか。

 わかってる人にしか作れない熟練の名曲達というわけだ。


「さて長くなりましたが次はプレステ」

「……この企画終わるんですか?」

「とりあえずこれで一区切り。ゲームキューブとかはまたしばらく時間を置いてから。本編が進まない」


 たまに出るメタ発言やめなさい。


「プレステは64とは逆にRPG最盛期ね。名作多すぎて難航したどころじゃないわよ。しかもまたスクウェア最強説」

「FFにゼノギアスにクロノクロスにサガフロ……なんか席巻してる感じですよね」

「うん、もう遠慮してよってくらい」


 でも他社にも名曲揃いのゲームは多い。

 RPG最盛期のPS時代、月無先輩の中でそれを制したのは……。


「なんか申し訳ないんだけど……クロノクロス」

「……いや有名タイトルはダメとかそういうのないですからね」


 オタクあるあるというかなんというか。

 良いものを決めるなら、通ぶってマイナータイトル挙げる意味もないし。


「しかもあたし的に一位の理由も納得してない」

「……自分で決めたのに?」


 意味がわからない。


「正直言って、一曲で決まってしまいました。『時の傷痕』が次元違いすぎました。色々選んでる時にこの一曲だけがどうしても頭から離れませんでした。……だからいいのかなって」


 あぁ、確かにゲーム音楽を代表する超名曲。

 これだけで決め手になってしまっても仕方ないと思えるくらいの名曲だ。


「音源の制約から解き放たれたゲーム音楽がここまで進化してしまうのかっていうくらいの名曲。それにOPっていう大事な要素でここまで最高にわくわくさせたものがあるかっていう。……」


 わかる。

 というかぶっちゃけゲームの出来自体も曲の良さに助けられてた感あるくらい曲がいい。


「楽器の使い方も先進的でゲーム音楽以外じゃ考えられないハイブリッドなジャンルでさ。超語りたいんだけど語るのすら無粋なくらい」

「確かにあれは聴いた方が断然早いかも」

「……でしょ?」


 月無先輩が身を引くレベルの圧倒的クオリティ……。

 ゲーム音楽の歴史を変えた一曲と言って過言でないかもしれない。


「あ、でも……『時の傷痕』なかったとしたら」

「それはFFⅨ。全体で見たらこれに及ぶものはないわ」


 なるほど、Ⅳの時と同じ観点か。

 さらに先輩曰く、当時のスクウェア製RPGのBGMが一線を画している理由は、世界観と曲のマッチングの上手さが飛び抜けていることで、「ただ良い曲」をBGMとして付けるだけでは成立しないゲーム音楽の本当の魅力を最大限に引き出しているからだという。


「結局スクウェア、ってなっちゃうけど、実際本当にスゴいから仕方ないね」

「一位決めるってなっちゃったら余計にですよね」

「うん。語りきれなかった別の色々な作品は本編で!」


 本編? さぁなんのことやら。


「さて今回のラスト、プレステRPG以外部門!」

「締めくくりましょう」

「一位! ロックマンX6!!!」


 ここで再びロックマン。


「ロックマンXのシリーズ、特に5と6のクオリティは高かったわ」


 全部曲よかった気もするけど、敢えての6、とのこと。


「一般的なインスト曲、しかもロックで、しかもギターありでって考えるとやっぱりギターメインのインストに寄りそうじゃない?」

「まぁ確かに。大概ギタリストメインですし」

「PS時代に突入して、しっかりしたギターの音だって使えるんだからロックマンだってその可能性は大いにあったってわけよ!」


 路線変更というか、曲を一般的なインストに寄せることも当時は既に可能だったと。


「そこでロックマンが見せた他のゲームとの違い、これが一位の理由だね!」

「違いとは」

「色んな音がリード(メロディ、主旋律)に使えるとなった中、ロックマンはわかりやすくカッコいい、派手さのあるギターやオルガンに頼らなかったの」


 音色という観点で見れば、確かにメロディの音がカッコ良ければ曲の聴こえは良いし、ギターやオルガン、インストの定番ならそれもやりやすい。


「それまで出来あがってたロックマンの世界観を踏襲した上での曲作り、安易にギターインストに寄せたりしてたらそれが台無しになってたって、あたしは思うね!」


 なるほど、さっきのカービィと似たところがあるかもしれない。


「ぶっちゃけX5~6はもう人気も陰りが見えてあんまり曲有名じゃないんだけどね」

「問題発言」

「それでも曲はしっかりブレずにゲームを完璧に支えてたってわけ!」


 そしてまとめ、と月無先輩は総評のようなものを始めた。


「この時代のゲーム音楽っていうのは制限がなくなったことで一気に拡張されたわけなんだけど、その中でしっかりゲーム音楽の本質を体現した作品が今回一位に輝いたってワケね」


 普通のBGMだったり、ただ良い曲を付けただけとは違う、ゲームとの親和性こそがゲーム音楽たらしめるということか。

 いきなり全ての制限が取り払われるってことは、何でもできる半面、できることが増え過ぎたことで路頭に迷う可能性もある。

 大御所の作曲家の確かな実力が、改めて発揮された時代とも言えるか。


「そんで今聴いても思うし、ゲームやってても思うけど、やっぱりゲームとのマッチングをしっかりイメージされてる曲の方が良いものも多いし、何よりゲームが楽しくなるよね。それこそがゲーム音楽らしさって思い知るよね」


 ある種分岐点のようなものでもあった時代、それでも本当に曲のいいゲームが証明したゲーム音楽らしさというのが再確認された時代でもある、のか?

 FFⅦのサントラのブックレットにも何かそんなこと書いてあったな。


「……しかし長くなっちゃったね。ゴメン」

「いえ。元号も変わりまして新時代なんで」

「無理やりフォローしてくれてありがと」


 そんなこんなで、新元号記念、平成をゲーム音楽で振り返る企画はいったん終了。

 まだ平成の半分までしか進んでないけど、ゲームキューブやPS2以降はまたの機会、とのこと。

 

「あとあたし実はPS2まだ決められてないんだよね」

「あ、そうなんですね。……辛い戦いになりそうですね」

「……死ぬかもしれない」

「生きて帰って。必ず」






 隠しトラック

 ――栄光の影 ~部室にて~


「そういえば携帯ゲーム機の方はどうなんです?」

「白井君あたしを殺す気なの?」

「……そんなつもりは」

「携帯ゲームでも振り返りたいところだし、むしろあたし携帯ゲームの方が詳しい説あるくらいだけど」

「説あるんだ」

「うん。特に任天堂ならGBから最新機まで。PSPから始まったソニー製のは全部はわからないけど」

「先輩任天堂系のハードの方が好きですもんね」

「う~ん……そうっちゃそうかも」

「しかも携帯ゲーム機の方は、据え置きとはまた違った進化の過程があるから面白いのよ」

「なんかわかるかも。ゲームらしいゲームって感じしますし」

「うん、ゲーム音楽っぽいっていうのはこっちの方が多いかもね」


「なんか携帯ゲーム機の方も微妙なポジションの奴いましたよね。任天堂とソニーに比べてアレな奴」

「ワンダースワンのこと?」

「あ、それですそれ。現物見たことないですけど」

「デジモンしか褒めるところのないゲーム機の話……しちゃう?」

「結構ギリギリ発言」

「後継機種まで頑張って作ったのにすぐにゲームボーイアドバンスが出て話題にもならなかったゲーム機の話……しちゃう?」

「悲しすぎる」

「販売元のバンダイが自社のゲームたくさん作って頑張ったのに結局FFの移植とリメイクが一番売れてスクウェアのゲームだけが売れたゲーム機の話……する?」

「もう全部わかった」


「ってかFFリメイクされてたんですね」

「Ⅰは移植、Ⅱはリメイク版がワンダースワンで出てるよ」

「あ、じゃぁゲームボーイアドバンスより前なんですね」

「うん。でもなんか変なところあった」

「変とは……」

「ギル(通貨単位)がひらがなで『ぎる』だったりエリクサーがエリクシャーだったり」

「……微妙に気になりますねそれ」

「うん、超気になる。……何なのかな?」

「……何なんでしょうね」

「……バンダイ側の……抵抗?」

「だとしたら悲しすぎる」



 実はⅡではFC版からの表記。バンダイは無罪。




ハード毎の曲のいいゲーム・作者的次点(★付きはガチで悩んだヤツ)


 当時の事がわかる方には共感を得られる方もいるかもしれませんが、64はアクションとかをやるハード、プレステはRPGをやるハードと結構割り切っていたため多少偏りがあります。


・ニンテンドウ64

★がんばれゴエモン~ネオ桃山幕府のおどり~

★がんばれゴエモン~でろでろ道中 おばけてんこ盛り~

マリオカート64、実況パワフルプロ野球4~6

★ゆけゆけ!!トラブルメーカーズ、カスタムロボV2

大乱闘スマッシュブラザーズ


・プレステ

★FFⅦ、★FFⅨ、サガフロンティア、★ゼノギアス、テイルズオブエターニア

アークザラッドⅠ~Ⅲ、ワイルドアームズ、★ワイルドアームズセカンドイグニッション

マリーのアトリエ、女神異聞録ペルソナ、★ヴァルキリープロファイル

ポポロクロイス物語(サントラ未収録曲多い)、デュープリズム

★グランツーリスモ、FFタクティクス、デジモンワールド

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