インターミッション

特別編 令和スペシャル①

「……はい! ついに新時代突入! 令和元年おめでとうございます!」

「……唐突すぎてついていけん」


 部室に呼び出しを喰らったと思ったら急に新元号を祝い始めるっていう。


「ノリ悪いなぁ! 今日は何のために呼び出したか!」

「今のやりとりでわかったら俺エスパーじゃ」

「っということで今日は何と!」

「無視かよ」

「平成の30年をゲーム音楽で振り返りたいと思います~」


 わ~ぱちぱち~……。

 まぁ新元号にかこつけてゲーム音楽の話をしたいだけなんだろう。


「この日のために考えてきました! 平成で活躍した各ハード毎の曲がいいゲームタイトルベスト1!」

「ベストが決められない女だとか言ってませんでしたっけ」

「……もう泣いて馬謖を斬りまくる想いだったわよ」


 ……もう何人いたのかわかんねぇな、馬謖。微妙に意味違うし。


「はい、早速行きましょう。まずはファミコン! 古くはアーケードとはいえ、ゲーム音楽の歴史はここから始まったと言っていいわね! 今も続くタイトルも多い元祖ゲーム機!」

「俺ら生まれてないですよね」←18歳

「進行の妨げになる発言は慎みなさい」←19歳

「はい」

 

 そしてカンペらしきものを取り出して色々と取り決め。

 ハードも結構多いので有名ハードのみ、携帯ゲーム機は別の機会。

 ゲームに関してはRPGが有利すぎるということで、RPGとその他で一つずつ。


「三単音+ノイズ、そして容量、音源、色んな制限があった中! 試行錯誤の上で数々の名曲が生まれた時代! 矩形波くけいはの響きが一般家庭に浸透してシンセのリード=ゲーム音楽っていう印象がついたのもこの時代!」


 早速止まらず語り始めるっていう。


 そして長い前置きの末、月無先輩はすっと背筋を伸ばして……。


「さて、全ての始まりを飾る映えある第一位は……ドラクエ3!!」

「……昭和じゃね。まぁファミコンのゲームほとんどしょ」

「ああああ!」


 はい、慎めと。……コアなネタだな。


「正直死ぬほど迷いました。8馬謖くらい逝きました」

「結構切ってますね」

「仕方ないでしょ! 有名なRPGだけでもFFにイースにMOTHER……どれも最高だし、シリーズじゃなくたって隠れた名作多いわよ!」


 なんかもう泣いて切り過ぎて感情爆発してるし。


「ドラクエの、物語であることを意識させる曲作りは場面や風景だけじゃなくて主人公の感情まで渾然一体となった音楽作品として成り立っているの。ただ曲を付けたなんて甘いものじゃないからこその相乗効果。三単音+ノイズの制限下にクラシックの技法を落とし込ん~以下略~」


 長い長い、以下略。


「ともあれ、ファミコンならではの技法をふんだんに使って、それがゲーム音楽の特徴として今も引き継がれてるんだから、ドラクエ3はここで一度ゲーム音楽を完成させたと言っても過言ではないってことね!」


 もうバッハと同レベルの扱いだな。

 すぎやまこういちと言えばゲーム音楽の巨匠に間違いないし、歴史の始まりの中心、一位は当然か。


「ふー……次はRPG以外。こっちはこれしかありませんでした、ロックマン3!」

「やっぱりロックマン。しかもまた3だ」

「大抵三作目が一番おいしいのよ。で、ゼルダもカービィも悪魔城もグラディウスも謎の村雨城もコナミワイワイワールドも最高だけど決め手は……」


 名だたるタイトルを抑えて一位に輝いた決め手……。


「単純に好きな曲が一番多い」

「思考の放棄」

「むー……だって特にアクション系ってどれもテンション高くてカッコいい名曲多すぎなんだもん」

 

 まぁ全部いいってことか。

 わかりやすさは名曲の条件の一つ、アクション程それが多いのも確かだ。

 ゲーム=娯楽なのだから、音楽自体もプレイヤーを楽しませるものであるべき……それなら派手さやわかりやすさは重要だ。

 BGMらしくないBGMっていうゲーム音楽の特殊性はこういうところから生じているのかも……。総括。


「はい、次はスーファミに参りましょう。字数足りなくなる」

「……何の話ですか」


 スーファミといえばTVゲーム全盛期、ゲーム音楽群雄割拠の時代。

 膨大な量のタイトルと名曲、決められたのだろうか。


「あたしもスーファミのゲームはたくさんやりました。本当に最高の時代、後世に語り継がれる名作ラッシュなんだから名曲もそりゃ多いと」

「……俺ら世代じゃないですけどね」

「お兄ちゃんが」

「いつものやつですね」


 身内にゲーマーがいれば都合よく昔のゲームも家にあると。

 

「RPG部門……もう胃に穴が開くんじゃないかってくらい迷いました。生きてることが奇跡です」

「あれ、でもFFⅣが一番好きって前に言ってませんでしたっけ」

「……え、何で言っちゃうの。……ないわ」

「え、ごめんなさい」


 ガチのやつじゃん。


「はい、白けましたけど一位はFFⅣで~す」

「そんな雑な感じに」

「冗談冗談、植松様に失礼だよね。で、選評理由なんだけど、SFCのRPGは一曲単位で決めようとするとほんとムリなの」


 確かに多すぎる。

 各タイトルに代表的な神曲があるし、それを基準にして曲ごとで考えたら延々と決めようがない。

 FFだってⅤのビッグブリッヂやⅥの決戦は誰もが知る名曲だし、曲の知名度だけならむしろⅤとⅥの方が有名な気もする。


「だから、BGM全体の完成度を基準に考えました! 最後の最後までクロノ・トリガーとかロマサガとかアクトレイザーとか聖剣伝説とかエストポリス伝記とかテイルズとかがせめぎ合ったけど」

「多い多い。決められてないじゃないですか」

「うるさい」


 ……今回発言は認められぬ模様。


「PCM音源の魅力を最大に弾きだしてゲーム音楽の表現力を一気に拡張したFFⅣに軍配があがりました! 音楽と一緒にドラマを作る、その一つの完成形! その後のⅤとⅥ、黄金期の始まりもこれがあったこそっていう!」


 王道中の王道だけどFFのⅣ~Ⅵは間違いなく黄金期。

 面白さで言えば他もよく名前が挙がるけど、曲まで加味したら……難しい。


「何より『和音』っていう音楽を作る上では欠かせないもの! これが可能になったSFCからの植松様はまさに水を得た魚! SFC一作目からその魅力をいかんなく発揮してそれまで以上に実力を見せつけることに~以下略~」


 そうか、和音ね、和音。

 スーファミからはそれが作れるから、表現の幅も一層増したと。

 制限が少なくなったことで数々の名作曲家が名を上げ始めて、ゲーム音楽が音楽としての人気を確固たるものにしたのもこの時代か。


「そして実はこれだけじゃなくって!」

「忙しいですね」

「むー……でもSFC版やったことあるならわかってくれると思う!」


 ほう……ありますとも。


「FFⅣは効果音も最高なの! 剣戟の音にしても魔法の音にしても、こればっかしは当時のどのゲームも及ばないね!」

「曲関係ないじゃないですか……でも特徴的なの多かったしなんか耳に残りますよね。バイオとかホーリーとか」

「ぱらぴれぷーがわかるとは白井君さすが! あの何の音なのか全く分からないのにセンスに溢れた音が魔法感出ててすごくいいの。それに、SFCからグラフィックの進化に伴って効果音の重要度と幅広さがものすごく増したってなれば、やっぱりこれも無視できないポイントよ!」


 確かにゲームを盛り上げるのには必要不可欠。

 そう考えれば直接関係はなくても、音楽の良いゲームの要素と言ってもいいかもしれない。

 サウンドトラックだけでは味わえない音の世界っていうのも、ゲームを楽しむ上では重要だ。


「話戻すと、アクトレイザーとクロノトリガーとFF4があたしの中で三強ね。この三つで最後まで迷ったけど、TVゲーム全盛期の音楽がどれだけすごいものか、しかもどれも現代でも通用するっていうのは本当にすごいね!」

「確かに……そのあたり今聴いても全然見劣りしませんもんね」


 SFCのRPG、最初の山は越えたが、その他部門はどうだろうか。

 きっと超悩んだに違いな……歯食いしばってるし。


「その他部門、絶対数の多さからこっちも本当に大変だったわ……。その中から決めるなんて何でこんな辛いことしなきゃなんないのって思った……」


 ……じゃぁやめりゃいいのに。どうせロックマンでしょう。


「RPG以外部門……ドンキーコング2!」


 意外にもゴリラ。


「RPG部門は迷ったとは言えスクエア(現スクエア・エニックス)が一強。でもそれ以外となったら……任天堂が圧倒的だったわ。好みの問題を加味するとカプコンだって最高だし、コナミだって全然負けてないんだけどね」

「じゃぁ好み以外の問題なんです?」

「決め手になったのはそうね」


 しかし思うのだが、この人ゲーム音楽について真面目に話してる時と、普段の子供っぽい時で語彙違いすぎないか。


「ドンキーコングの曲は何と言ってもね~。時代の先取りと技術の躍進、これに尽きるわ」

「……ほう」


 またまたやたら真面目な考察が始まりそうだ。


「タルタルこうざんの曲なんかがまさにそうなんだけど、効果音を音楽に取り入れるっていう手法には驚きを禁じ得ないわ」

「あ、ツルハシの音ですね」

「そう。鉱山での採掘作業の描写を曲が表現するなんて信じられないわ。楽器と向き合うだけでは生まれない発想ね」


 しかもあのリズムがやたらカッコいいんだよな。

 でも全然曲名が思い出せない。というか知らない


「『Mining melancholy』っていう曲名もまた合ってていいよね! まさに採掘作業が進むに連れて疲れて憂鬱になっていくかんじ!」


 あ、そうだそうだ。ってかこの人何で曲名いちいち全部覚えてるんだろ。


「ステージクリアジングルとキャラの動きが連動するっていうのも、技術の躍進を感じさせるわね」

「そういえばギター弾いてましたよね。メス猿の方」


 そう考えると映像と音楽の紐付きが強くなった時代って言えるかもしれない。

 

「そして敢えて2を選んだ理由はそれだけじゃなくってね。当時の日本ではまだ全然馴染みのないEDMサウンドを取り入れたっていう部分がすごく大きいの」


 EDMといえばダンスミュージック。

 最近じゃ日本でも割とメジャーだ。


「クラシックにロックにプレグレ、フュージョン。色んな音楽がゲーム音楽には取り入れられてるけど、ここまで上手くEDMの要素を取り入れたゲームは後にも先にもゴリラだけね」


 なるほど……テクノサウンドみたいなのは結構多いけど、ゴリラの曲の聴き味はそれとは全然違うし、なんというかアメリカ的だ。


「最近じゃ日本でもメジャーな音楽ジャンルになってきたけど、日本人にとってEDMの原点はゴリラっていうのは皆知っておくべきね」

「意味わからん」

「モンキーパンチをブチ込むわよ」

「ゴリラは原点です」


 まとめると、PCM音源に変わって質のいい曲が増えてそれを追い求める時代になった中、新しいものを取り入れる姿勢が響いたようだ。

 初作にしてもビッグバンドジャズみたいなテイストだったり、ゴリラの曲が後のゲーム音楽の可能性を広げたのは間違いないとのこと。


「全体的に曲の良さも圧倒的だし、サントラの相場が10万越えが当たり前なのも頷けるわよね」

「お高い」

「この時代のゲーム音楽はまだそれだけでは商品としては確立されてなかったからね。出荷枚数自体が少なくて単純にレアなのよ」


 大体次の世代、ニンテンドー64くらいまでのゲームはそういうのが多い。

 中古価格の暴騰は供給以上に圧倒的な需要を得たって意味だし、ゲーム音楽がいかに素晴らしいものかがよくわかる。

 

「よし! じゃぁ次は~……あ」

「どうしました?」

「話しすぎちゃった……ファミコンとスーファミだけで終わりだ……」

「……早くしないから」

「だって仕方ないじゃんファミコンとスーファミは!!」


 まぁ歴史の始まり、そしてTVゲーム全盛期のハードとなれば仕方ないか。


「ということで次は64対プレステ! そしてゲームキューブVSプレ2!」

「次あるんだ……」


 次回に持ち越しとのこと。

 任天堂VSソニーの一騎打ちに乞うご期待……って待てよ。


「セガサターンは?」

「バーチャロン一択。セガサターンマイナーだからとかじゃなくてぶっちぎり。圧倒的すぎて一瞬で決まった」


 なんと。そこまですごいのかバーチャロン。


「詳しくは次回! ドリキャスもちゃんと決めてあります!」


 突拍子もなく始まった平成を振り返る企画、スーファミ以降の次世代ハードは次回に持ち越し……終わるのかこれ。





 隠しトラック

 ――作者都合 ~部室にて~


「ふ~休憩」

「思ったんですけど」

「ん~?」

「今回俺とめぐる先輩、自分の世代のゲーム一切触れてないですね」

「そこはアレだよ、アレ……都合」

「……都合ね」

「話進まなくなるじゃん、あたしらの世代のゲームだけだと」

「スーファミの時とかまだ生まれてませんもんね」

「64の時ですらね」

「俺は父が、めぐる先輩はお兄さんがいるから古いゲーム機が家にあって……都合ね」

「……大きな力が働いたんだよ」


「話題としては大抵30代の人くらいですよね」

「ドラクエとかはもっと上だね」

「もっと最近のゲームはないんです?」

「ん? あるわよ、そりゃ。ゼノブレ2とかロックマン11とかルルアのアトリエとかゼルダとか、曲のいいゲームは今だっていくらでもあるわ。カービィもポケモンもFFもゴリラもスパロボも。新規タイトルならアンダーテイルとか語れる作品はいくらでも」

「多い多い」

「スマブラだって最新作は神だったしマリオシリーズだって相変わらず全部いいわ!」

「ボルテージが」


「でもアレよ、話の流れで自然に出てくるのは思い出深いものほど多いってこと」

「はぁ」

「あたし旧作何度もやるタイプだからね!」

「なるほど。昔のが多いのはそういうわけと」

「そういうこと! ……でもさ」

「……何でしょう」

「……今何のためにこの話したの? あたし達」

「……さぁ? ……大きな力が働いたとしか」




ハード毎の曲のいいゲーム・作者的次点(★付きはガチで悩んだヤツ)

・ファミコン

 FF3、DQ2、★イース、★MOTHER、ドラゴンスレイヤー4

 悪魔城ドラキュラ、星のカービィ、ゼルダの伝説、★スーパーマリオブラザーズ3

 グラディウス、沙羅曼蛇、★コナミワイワイワールド、謎の村雨城


・スーファミ(ありすぎるのでマイナーすぎるのは割愛)

 ★FF5、FF6、★アクトレイザー、★クロノトリガー、DQ6、聖剣伝説3

 ロマンシング・サガ、エストポリス伝記、テイルズオブファンタジア

 スーパーマリオRPG、半熟英雄、ルドラの秘宝

 ストリートファイター2、ファイナルファイト2、★ロックマンX3

 ロックマン&フォルテ、桃太郎電鉄HAPPY、ラッシング・ビート乱

 ★すーぱーなぞぷよルルーのルー、★星のカービィSDX、

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る