白という色の世界

春風月葉

白という色の世界

 灰色か?いや、白だ。

 この世界に色をつけてやるならば、それはきっと白だろう。

 まるで子供のお絵描きではないか。

 白い紙を数多の色で染め、また元の白に戻る。

 いつだって、必要となるのは白い存在だ。

 自分の色なんか持たずに求められた色に染まり、役目を終えればまた元の白に戻る。

 おそらく世界は色を失った。

 この言い方が正しいかはわからないが、許せなくなってしまったのだと思う。

 白い自分の上に少しでも汚れがあることを。

 私はこの世界に残された小さな汚れの一つだ。

 白い世界には上で青く深い悲しみと赤く激しい怒りを持っている。

 そしてやはり世界は汚れの存在を許さない。

 どんなに小さなものであったとしても許すことができない。

 ビリ、ビリ、世界の崩壊が始まった。

 汚れた世界はリセットされる。

 世界がビリビリに破れ、クシャクシャに丸められていく。

 こうやって私たちは否定されるのだ。

 また、色のない白い世界だけがそこにはあった。

 そこに私はもういない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

白という色の世界 春風月葉 @HarukazeTsukiha

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る