扉
絶対に無事に帰ってこられる冒険をしたい。
安心安全なドキドキとはらはら。そして感動。
本屋さんが好きです。まだ知らない世界を収めた背表紙たちに囲まれる、あの空間が好きです。まるで異世界への扉がいくつも並んでいるみたい。数百円から数千円ほどで買える旅行チケット。
暮れなずんだ空が、白々と明けるまで。
グラスに入れていた氷が溶け切るまで。
電車の中で、最寄りの駅が近づくまで。
いつでもセーブして中断できる冒険は、だけど決して物足りなくはない。
むしろ、現実世界と同時並行で進めていかなければいい結末を迎えられないのだから、どうしたって二重生活は続くのだ。
見える世界、聞こえる音。
それは文字の向こう側に描かれた場所のもの。
遮断された現実世界は、ひとときの間、わたしの意識から離れる。
ページを閉じる。
わたしのいた世界は、綿菓子が溶けていくように無くなってしまった。
甘さはまだ残っているのに、形は先に消えていった。
その甘さも消えた頃。
わたしはまたいくつもの扉の前を訪れる。いつだって、約束された冒険を探して。
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