【詩集】しずかなことば
満月 美妃
白紙
ふいに楽しくなったのは、「できる」と思っていた自分が馬鹿馬鹿しくなったから。根拠のない自信に振り回されていたことに気づいたから。
似ているものは、同じではなかった。ただそれだけのことだった。
わたしが自分で評価している能力が、そのままスライドしてくれるわけはない。そんな当たり前のことだった。
気持ちが良いほどの雨だったから、とても晴れやかな気分になった。しあわせだった。会う人全員に親切にできるとは、微塵も思えなかったけれど。とても幸福な気持ちになった。たぶんわたしは素直なんだと思う。灰色の空の下、緑が濡れてる。
喫茶店で会った君は、わたしが文房具店の袋を手に提げているのを見て感心したような声を上げる。
わたしは白いノートが好きで、それを文字でいっぱいにするのも好き。それを眺めるのも、とても楽しい。そして白いノートが減ると落ち着かなくて、やっぱりまた大量に買ってしまう。
そのことを指して努力家だと言われてしまえばそれまでなのだけれど、わたしにとってそれは努力ではないのだ。
君が共感してくれるかどうかなんていうのは気にならないので、わたしは反応を待たずに、呟いたあとすぐに窓の外を見た。雨が降り続いていて、心をおだやかにさせてくれた。
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