ひとつひとつの表現が儚くて美しく、どこまでも澄んでいるのが、このお話にぴったりと合っていて素敵です。波の音が聴こえ、かすかに潮の香を乗せた風が吹いて彼女の美しい飴色の髪が揺れる。波打ち際の透明な海水にうかぶのは薄紅色の花弁、ではなくて──?少女たちの、恋慕に限りなく近い葛藤をすくい取って泡へと変えていくような、優しく切ない別れのお話だと感じました。
期限付きで陸に上がった人魚と、彼女たちと交流した人間の少女たちの物語。ガラスのように澄んだ美しい言葉が、どこか懐かしい痛みとともに胸に沁みます。あなたも波の音に耳をすませながら、この作品に浸ってみませんか。