ⅩⅩⅡ○Fortilus――絶望●
「間違いねぇ!
紅の満月が語る
「「「「――
「そんな……どうして……」
四人が変身する最中、私だけは唖然と敵ばかり見つめてた。
だって、この妖魔には見覚えがあるから。
姿、形、何から何まで……私が初めて遭遇した妖魔と同じだった。
白の美少女戦士が護ってくれた、あのときの妖魔と。
だったらなぜ、
切断されたはずの脚は綺麗に揃ってるし、傷を負った様子も見受けられない。
確かに消滅する瞬間は見てないけど……。
――あのとき、佳奈子ちゃんが倒したんじゃなかったの……?
「人々を襲い狂う、悪しき妖魔よ!」
「ウチらの魔法で、テメェを焼き潰す!」
「みんなに酷いことしちゃう、悪い悪い妖魔よ!」
「姉妹の魔法で、みんなを護ってさしあげますわ!」
謎めく再襲に小口を開けたままの私。だけど時間は決して止まらない。四人の魔法使いがついに
「先手必勝で一気にいくぜ!」
「ゆぅの言う通りね……いくわよ!」
まずはゆぅ先輩と美雪先輩が先陣を切る。今日までに磨いてきた魔法の力で、先攻に駆ける。
「
「
一球入魂の火球と無限連弾の水球が、
「チッ……腹の足しにもならねーってか」
「ママ! 今度は果林がやる! ゆぅお姉ちゃんいこう!!」
漆黒肌が無傷だとわかった刹那、続いてゆぅ先輩と果林ちゃんが前へ。強度が増した第二魔法で再挑戦。
「
「
正面から背後へ斬り抜けた一斬の閃光に加え、妖魔の眉間に炸裂した炎拳の剛打。凄まじいインパクトを二人が奏で、誰もが良しと思った矢先だ。
「そんな……これでもダメ……」
「ムチャクチャかよこの化け物……っ! ウ゛アッ!!」
「ゆぅちゃん!!」
まるで効果がない。しかもゆぅ先輩が巨足で蹴られ、大地に叩き付けられてしまった。慌てて朋恵先輩と駆けつけたけど、額からの鮮血が
「いってぇ……トラックに
「ゴオォォォォァァァァア゛!!」
世を震撼させる咆哮で、いよいよ
「
「
目前の朋恵先輩と、即座に飛んできた果林ちゃんの二人で守護魔法。一度は敵の勢いを殺すことができたけど。
――バリィィィィン!!
轟牙に噛み砕かれ、防壁は
「――っ! コッチ向いてる……なんかヤバいかも!」
「
着地した私たちに向け、巨口を開き見せた妖魔。ペン太が告げた後に邪悪な闇のオーラを集め、禍々しき破壊光線の態勢を装う。
――ズガガガガァァァァン!!
「朋恵サポートして!
「美雪先輩わかりました!
「果林もできるよ!
波動砲の如く発射された光線は真っ直ぐ私たちへ。そんな目の前で、水禍で吸収できる美雪先輩と、鋼鉄で跳ね返せる朋恵先輩、また果林ちゃんも再び防御術を繰り出し、三重の守護が包んでくれた。
でも……。
「クッ、マズいわ……」
「威力が、半端じゃない……」
「もう……ダメ……」
抑えられない濁流は更なる勢力で襲い、三人ごと爆発音で飲み込む。煙幕から出てきたときには身体中に負傷が見え、酷にも地に放り出されてしまった。
「みんな……そんな……」
無傷の
対して、重症の四人。
聞いてはいたけど、
一度は遭遇もしたけど、
――強すぎる……。
四人それぞれの魔法全てを発動させても、まるで歯が立たなかった。あまりに悲惨な景色に、私は絶望の無心で座り込んでしまう。
「……ウゥ、冗談じゃねー。朋恵!」
「うん……まだ立てるから大丈夫!」
「ママ! 果林も平気だよ!」
「悪いわね、気を遣わせて!」
諦めない心たちが、もう一度と
「金の精霊たちよ、今ここへ」
「火の精霊たちよ、集結し給え」
「木の精霊たちよ、我らが元へ」
「水の精霊たちよ、今こそ
どんな逆境に立たされても、今までずっと立ち上がり続けてきたんだ。こんなとこで負けるような魔法使いなんかじゃない。
「
「未来永劫、闇を光で包み込め!」
「
「混沌たる世界から、闇を消し光と照らせ!」
私なりの願いを込めて、また恐怖するペン太も背中を押すつもりで叫ぶ。
「みんな……勝って!!」
「頼む!!」
「――
「――
猛威的に反動を受け止めながら放たれる、四人の合体必殺技。数々の葉石を吹き飛ばし、邪悪に待ち構える妖魔へ直進。無事に命中し、以前と同様に四色カラフルドームが演出される。
やった!!
これで倒せた!!
そう思ってた……。
――バリィィィィン!!
「「――ッ!!」」
「「――ッ!!」」
「そんな……」
度重なる絶望の末、魂が抜けかけた。ただ一点を見つめ、無気力に等しいまま膝が落ちる。
だって、
四人の最終必殺技ですら、
――傷一つ無いんだもん……。
「――ッ!! オメェら危ねぇ!!」
――ズガガガガァァァァン!!
結果は、残虐にも予想できていた……。
「――っ! みんな!!」
恐ろしいまでの土煙が辺りを覆い、一寸先を闇に染める。
紅の月明かりが照らす頃には、無惨に横たわる姿たちが映し出された。絶望の淵に投げ飛ばされたように、虫の息で起き上がらない。
「ゴオォォォォァァァァア゛!!」
「うそ……みんな!! みんなしっかりして!!」
四人の元に駆けつけ安否確認。でも返ってくる言葉はどれも同じ色だ。
「雛乃ちゃんと、ペン太さんだけでも……逃げて」
「クソ……格が違いすぎる……」
「全然、届かないよ……」
「一体、どうしたら……?」
平常を保つことで精いっぱいの状態だった。
圧倒的な強さを知らしめる、邪悪な漆黒野獣。
四人の魔法使いですら敵わない虚構。
どんな抵抗を施しても末期を意図させる絶望。
――それが、
「ゴオォォォォァァァァア゛!!」
「――ッ!! 来る……」
時間と似て、待つことを知らない悪魔。
いよいよ私たちに止めを刺さんばかりに、ゆっくりと大地を潰しながら寄ってくる。微かな希望も踏みにじるかのように、紅の月を背景にしながら。
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